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私にもどる旅 / 下道 千晶_モデル・俳優


下道 千晶 モデル・俳優。
2015年に、房総半島へ移住。自然に寄り添う暮らし方を実践中。
また、天然藍を使った染め直しの活動「meets BLUE project」を始め、活動を通して持続可能なライフスタイルを提案している。


あれは確か3年ほど前。
自由に海外旅行ができた頃。
義父・義母・私の3人で、冬のロンドンとパリを旅した。

当時の私は、初めての育児、かつ、ほぼワンオペ育児に煮詰まりきっていた。しかも、今思うと何故そんなに自分を追い込んでいたのかわからないのだけれど、仕事・家事・育児の他には予定は入れてはいけないと思っていたし、休むこと、自分のために時間を使うことには罪悪感さえ感じていた。


たまに夫が気をきかせて私が一人になる時間を作ってくれても、何故だか家を放り出したような気分になり、純粋にその時間を楽しめないといったありさまだった。

そんな私をみかねたのだろう、義理の両親がある日私を外の世界に引っ張り出してくれた。
「千晶ちゃんは表現者でしょう。本物を観にいきましょう」って。


行き先は、二人が仕事やプライベートで何度も訪れているロンドンとパリ。
特に義父はフランスに恋している。ロシア人である義父は、普段の生活に必要な英語・日本語の他に、独学でフランス語も習得してしまったほど。
二人はフランスのアヴィニヨンにアパルトマンをもち、年に1回街全体が劇場になるその街で休暇を楽しむことが多かった。

そんな二人からの突然のお誘いにびっくりしている間に、話はあれよあれよと進み、私は気がついたら飛行機の中にいた。
こんなにポカンとした搭乗者は他にいなかったんじゃないかなと思う。

未だ半信半疑な私を乗せた飛行機は無事着陸。
列車に乗って着いた冬のヨーロッパは、限りなく白に近いグレーだった。
何を持っていけば良いかわからず、とにかく思いついた荷物をぎゅうぎゅうに詰め込んできたカートの車輪が石畳の溝にはまるたび、ここはもう日本ではないと私に実感させるのだった。

旅の内容はというと、ほとんど義理の両親にお任せで、日中は美術館やお城を巡り、夜はオペラを鑑賞した。
滞在中はロンドンでもパリでもほぼ毎日こんなふうなスケジュール。
こうしてその時を思い出しながら書いていている今、実はあれは夢だったんじゃないかというくらい、私にとっては贅沢な日々だった。

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特にオペラ鑑賞は初めての経験。日本にいると、とっても敷居が高いように感じるオペラ。
「千晶さん、日本ではオペラは特別な人だけが楽しむもののように感じるかもしれないけれど、特にフランスでは普通のサラリーマンたちが仕事終わりに観にくるんだ。芸術は彼らにとって暮らしの一部なんだよ。」と義父が教えてくれた。
なるほど、確かに私が想像していたオペラ鑑賞は、特別リッチで教養のある方々が豪華なドレスを着て鑑賞するものだ。私なんかは場違いじゃないかと気がひけていた。
けれど会場を見渡すと、私が想像していたものよりも、ずいぶんリラックスした雰囲気だった。
「この日のために!」と気合が入ったものというよりは、それぞれの日常の延長線上として楽しんでいるようにみえた。

そして会場にいらっしゃる皆さんのオシャレもさまざまだった。
特に素敵だと思ったのは、ミドル世代の方々が、ハッとするような鮮やかなカラーを着たり、大振りのネックレスやピアス、ちょっと大胆なカッティングのドレス、ミニスカートなどを、自分らしく、遊び心をもって素敵に着こなしているのを目にしたとき。
そういえば街を歩いている時にも、冬のヨーロッパのグレーの街中を明るくするフューシャピンクのカラーコートを着ていらしたおばあちゃまを見かけて、とっても素敵だと思ったっけ。

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それにひきかえ、最近の私は「年相応」という言葉を意識しすぎではなかったかしら。
「年齢的にミニスカートを履くのは…」とか「お母さんなんだから落ち着いた格好をしなければ」とか。
それって実は、自分で自分にレッテルを貼る行為だったのかもしれないと気がつく。
どこかで見かけた「妻」や「母」に、「私」という個人を閉じ込めてしまっていたのかも。妻であっても、母であっても、私は私をもっと楽しんでよかったんじゃないかしら。

この旅行以来、ここまで特別なことは出来なくとも、私は普段の暮らしの中で自分を楽しませたり、ゆるめたり、喜ばせることを許せるようになった。

例えばバスタイム。

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普段は息子と一緒なので、全行程を一気にわーっと。
自分に時間をかけることもできず、とりあえず洗えていればいい、くらいのもの。
お風呂を出てからも戦いは続き、ドライヤーも保湿も「とりあえず」。なんとか寝かしつけまで持ち込んだものの、そのまま一緒に寝落ちしてしまうこともしばしば(本当はほとんど)。

けれど今はたまに、お風呂から寝かしけまでを全て夫にお願いして、バスタイムで一人時間を楽しむこともある。
観ようと思っていた動画や、読みかけの本を持ち込んで、時間を気にせず湯船でゆっくり過ごせるのは、今の私にとっては特別な時間だ。

そんなときには、いつもよりちょっと良いものを使いたくなる。

joscille skin&mind の石鹸は、私にとってバスタイムの一人時間に欠かせないアイテムのひとつ。
猫の形をしたこの石鹸は、なんといっても香りが最高なのだ。

特別なのは香りだけでなく、使用している素材にも。
オーガニック植物成分をはじめとして、なんと99%以上がナチュラルな成分でできているそうだ。
石鹸というと、ふだんは洗浄力の強いものを想像してしまいがちだけれど、joscille skin&mind の石鹸は大人のゆらぎ肌でもつっぱらず、とことん優しいのだ。
泡立ちもよく、弾力のあるモチモチとした泡で肌を摩擦レスに洗えるのも嬉しい。深く深呼吸したくなるような植物の生命力みなぎる香りと、優しくリッチな泡に包まれて、毎日頑張って気づかないうちに固くなっていた心と身体がほぐれていき、自然といつもより丁寧に自分をケアしたいと思える。

こんなふうに、自分自身に戻れるささやかな時間を積み重ねて、私は私を取り戻す練習をしている。
そして、ついつい自分の気持ちを置いてけぼりにして「〇〇するべき」でいっぱいになりそうになったときには、あの旅のミニスカートやピンクのコートを思い出す。
まっさらな私だったら今日は何を着るかしら、と。

あわただしく暮らす日々のなかで、私たちは手放し上手になり過ぎていたかもしれない。みんな、自分を諦めなくてもいい。「家族の幸せ」には「私の幸せ」も含めてよいのだ。

左手には息子、右手には買い物袋、そんな日々はまだまだ続きそうだけれど、誰でもない「私」の手も離さずに歩いてゆけたらいいな、と思う。

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