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小さなカケラ vol.2 / ツクシ誰の子スギナの子 カヒミ カリィ_ミュージシャン、文筆家


まだしばらく寒い日は続きそうですが、暦の上ではもう春ですね! この時期になると、いよいよ春が待ちきれず、子供の頃に近所のお婆ちゃんから教えてもらったこんな詩を思い出します。 

『ぽかぽかと暖かい日に
 つくしの坊やが芽を出した
 つくし誰の子スギナの子
  土手の土そっと上げて
 つくしの坊やが覗いたら
 外はそよそよ 春の風』 

幼い頃、空き地など雑草が生い茂るところで寄り道すると、 春にはツクシがたくさん顔を出していたなぁと懐かしくなります。

あの頃はツクシなんて当たり前に生えているものでしたが、今ではすっかり見かける機会がなくなったなと思うと、あの可愛らしい姿がなんだか恋しくなります。 10数年前、京都にしばらく滞在していた事があったのですが、その時にお世話になった方が ある日、土手で詰んだ立派なツクシをお裾分けしてくださいました。ザルにいっぱいのツクシ! 今年もあそこで、ツクシがたくさん顔を出してくれたらいいなと思います。

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ツクシハスギナノコ…そう言えばすっかり忘れていましたが、昔一度、スギナにとても 助けられた事がありました。 ある週末、友人と遠出をして林中を散歩した時に、知らぬ間にウルシ科の植物に触れたらしく、ふたりとも皮膚が酷くかぶれてしまったのです。腕や顔、首など、夕方に東京に戻ってからもそれは悪化したので、翌朝それぞれ最寄りの皮膚科で診察を受け、二人ともステロイドを処方されました。 友人はさっそく軟膏を塗ったのですが、私は前の晩に薬草図鑑で調べてみたところ、スギナがウルシかぶれに効くと書いてあったので、薬を使う前にちょっとスギナを試してみようかなと、ふと思ったのでした。

さっそく病院の帰りにスギナ茶を大量に購入し、大鍋でグツグツと煮込んでからそれを入浴剤にして長浴し、お風呂上がりの肌にも湿布して数日を過ごしました。友人とは電話で具合を確認しあっていたのですが、すると何と私の方が早く良くなっていったのです。もしスギナで治るとしてもステロイドのほうが効き目が強いと思っていたので、植物のチカラを侮ってはいけないね、と二人でとても驚きました。

それ以来、薬を使う前にハ-ブや漢方などを試したり併用することが増えました。西洋医学や東洋医学など、どれもそれぞれに長所短所があるのではないかと思うので、両方を上手に取り入れることが出来たら良いなと思っています。

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最近こうしてスギナの事を思い出し、海外ではどうなのだろうと気になって調べてみたところ、英語ではHorsetail という呼び名で、やはり薬草として古代ギリシャ文明の頃からハ-ブ療法として使用されている植物のようでした。ツクシやスギナというと懐かしい日本の風景が思い浮かぶので、アメリカやヨ-ロッパでは手に入らないと思い込んでいましたが、アメリカで人気のサプリメントやハ-ブのブランドでも使われているとは!

植物のチカラというと、もう一つ忘れられない思い出があります。 昔モロッコの砂漠を旅していた時、小さな村を通りかかる度に畑の周りで自然栽培されているバラを何度も見かけました。バラ栽培というと、夏期の水やりや害虫など手間がかかる印象があったので、こんなに乾燥した土地で美しいバラが成長しているなんてとても意外です。 そこで地元の人に尋ねてみると、この辺りは化粧品用のバラで有名な場所なのだと知りました。さっそくロ-ズウォーターとアルガンオイルを購入し、その晩、乾燥と日焼けで疲れた肌につけてみたら、翌朝染み入るように潤っていて何とも心地良かったのを思い出します。乾燥地帯でも負けずに育った植物は、やはり保湿効果が高いんだなと感心しました。ただの水分補給ではなくて、植物から生命力を直接頂いたように感じた貴重な経験でした。

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Joscilleのソ-プやオイル、養生茶などからも、そんな優しくも逞しいチカラを感じます。 私達は食事の前に「頂きます!」と言いますが、それは植物や動物などの食材やそれに関わった全てに対しての感謝や敬意の気持ちからだと思います。 肌に触れるものにも、そんな思いを持てるものを使えたら良いですね。

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カヒミ カリィ
ミュージシャン、文筆家、フォトグラファー 。91年デビュー以降、国内外問わず数々の作品を発表。音楽活動の他、映画作品へのコメント執筆、字幕監修、翻訳など幅広く活躍。これまでカルチャー誌や文芸誌などで写真や執筆の連載多数。2012年よりアメリカ在住。
http://www.kahimi-karie.com
Instagram : @kahimikarie_official


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