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小さなカケラ vol.1 /カヒミ カリィ_ミュージシャン、文筆家

最近、大好きだった祖母のことをよく思い出します。晴れた日の午後、ふたりで縁側に座って蕗やサヤインゲンの筋を取ったことや、お昼によく作ってくれた美味しいカレーチャ-ハンときれいなブル-のお皿。夕方になるとガラスの器を片手に近所のお豆腐屋さんへ手を繋いで行ったこと、幼い私が椅子代わりにしていたクッキ-大きな空き缶、お風呂に入るときに渡してくれた新しい石鹸の良い香りと真っ白な湯気・・・。   

そして、娘が生まれた頃に時間はひょいと飛びます。娘が元気にハイハイするたびにギーと軋んだ音を立てた、古い板張りの廊下。春になると石塀の隙間から顔を出した庭の可憐なスミレ、娘用の黄色い爪切りと木製の小さなヘアブラシ・・。     

考えてみると、家族旅行や誕生日のお祝いなどもっと素敵な思い出は沢山あるのに、心にふと浮き上がってきて私をゆったりと幸せな気持ちにさせてくれるのは、いつもなぜかそんな何気ない小さなことばかりのようで、不思議に思います。  

どうやら幸せというのは、特別な良い出来事が起こった時だけに生まれるものではないようです。  

実は、意外に私達が過ごす毎日の中で何気なくコロンと転がっているもので、それを自分で見つけられるかが鍵なのかもしれません。

そう思うと、たくさんの小さな幸せのカケラを私に与えてくれた祖母に、感謝の気持ちで一杯です。  

時に辛く冷たい大波に飲まれてしまいそうになる事があっても、それでも人生は美しいものだと思う事ができ、そしてその大波を乗り越える勇気を与えてくれるのは、実はそんなカケラ達のお陰なのかもしれないと思うこの頃です。  

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joscilleの猫石鹸は、娘と私にとってそんな幸せのカケラそのものです。

初めて手に取った時の盛り上がりと言ったらありませんでした。「あまりに可愛くて使うのがもったいないね〜。お母さん、猫ちゃんの顔を溶かさないようにして使ってみてね!」。ある日、片耳がちょっと欠けたら「保護された野良猫みたいだね!」と笑う娘。そしてその後しばらくすると、なんと石鹸は猫から熊さんに変身をとげ、私達はまた盛り上がったのでした。  もちろん楽しいだけでなく、使うたびにゼラニウムやレモン、マージョラムの香りでゆったりと肌や心も満たされます。
気づくと、猫石鹸と竹の布のマスクの相乗効果で娘のニキビがすっかり落ち着いていました。

そして私は乾燥肌で娘と正反対なのにもかかわらず、やはり調子が良いのです。その心地良さから、大切に心を込めて作られたものだということを実感しています。 

私の祖母も、何をしても心を込める丁寧な人だったなと思います。そして優しく大らかで、一緒にいると安心出来るような逞しさも感じました。 私がそんな風にして祖母から大切な思い出をたくさん貰ったように、私も娘にそうしてあげられたら、と思っています。

何気ない日々の中に楽しみや幸せを見つけるチカラを、娘が持ってくれたら嬉しいです!

どうか2022年が穏やかで笑顔溢れる素敵な年になりますように。。

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カヒミ 1_s

カヒミ カリィ
ミュージシャン、文筆家、フォトグラファー 。91年デビュー以降、国内外問わず数々の作品を発表。音楽活動の他、映画作品へのコメント執筆、字幕監修、翻訳など幅広く活躍。これまでカルチャー誌や文芸誌などで写真や執筆の連載多数。2012年よりアメリカ在住。
http://www.kahimi-karie.com
Instagram : @kahimikarie_official

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