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受験英語と「avoid」

こんにちは!
今回は、ドイツで私がよく聞く「間違っているけれどノンネイティブがよく使う英語表現」について書こうと思います。

例えば、
「私たちはボートが沈むのを避けなければならない」

と言った文があるとします。
これを英語に訳すと、

We must avoid the boat from sinking. 

と訳せそうですが、これは間違いです。

avoidはその後に動名詞(動詞の-ing形の1つ)を取ることはできますが、
「ボートが」のように、動名詞の主語に当たる単語と一緒に使うことはできない
からです(この記事の後半で少し矛盾したことを言います)。

従って、この場合は「avoid」が使えないので、似ている別の表現を使う必要があります。

We must prevent the boat from sinking. 
We must stop the boat from sinking.
 

受験英語では「from」が必須だと思いますが、実はこの「from」は省略することも可能です。

We must prevent the boat sinking.
We must stop the boat sinking.
 

5文型でいうとこれは第5文型「SVOC」に当たるのかもしれません。
まあでも、ここで文型に拘る必要もあまりないですね…。

要は「avoid A from doing」は、作れそうなのに作れない表現だということです。

ではなぜ欧州でよく耳にするのか?

恐らく、欧州の別の言語では「avoid A from doing」と似た言い方ができるからではないかと思います。

と言っても私の知っている言語はドイツ語とフランス語ぐらいなので、英語以外の欧州言語で全てそう言えるかは分かりません。

が、少なくともドイツ語とフランス語では、「avoid A from doing」に似た表現は可能です。

例えば、ドイツ語では「to 不定詞」に当たるものと「that節」に当たるもの、両方取ることができます

英語の動詞って、大抵「不定詞かthat節か」みたいな選択を迫られる気がします。一方、ドイツ語の動詞はそこがかなり緩くて、「どっちも行けますよ~」という動詞が非常に多くて、学習者としては非常に助かります。

英語の動名詞に当たるドイツ語はないと言っても問題ないと思うので、
ドイツ語では次の2つの表現ができます。

avoid to do   ➡ これは英語の avoid doing somethingのこと。
avoid that A does  ➡ これは英語ではできませんね。

ドイツ語には「avoid A from doing」に相当する表現はありませんが、「avoid that A does」という形があるので、そこから類推して、この間違った表現を使うのではないかと私は思います。

フランス語はもっと「avoid A from doing」に近い表現ができます。
ドイツ語と同じくthat節も取ることができます。

avoid A from do ➡ これで「Aが~するのを避ける」の意味になります。
「from」のあとは動名詞ではなく不定詞なのがフランス語っぽい。
avoid that A do ➡ この形も作れますが、that節内は「仮定法」になります。

このように、独仏の「avoid」に相当する単語(独:vermeiden、仏:éviter)は、英語の「avoid」よりもかなり柔軟性が高いことが分かります。

「AがBするのを避ける」なんてたくさんの場面で使えそうなのに、英語は「AがBするのを妨げる/止める」という言い方でしか言えないんですね。

「避ける」はただ逃げている感じなのに対し、「妨げる」は実現を阻むために自分から積極的に何か動いている感じがするので、完全に同じニュアンスとは言えません。

だからなのか、非英語ネイティブのヨーロッパ人の中には、「We must avoid the boat from sinking」と言ってしまう人が多いのだと思います。

さて、ここまで話してきましたが、英語ネイティブ的に「まだOK」と言える折衷案が以下のとおりです。

We must avoid the boat sinking.

「from」を省略しただけのように思えますよね。
ただ、ネイティブ(と言っても尋ねたのは1人だけです)的には、この「boat sinking」は「ボート沈没」のような複合名詞のように理解されるようです。

つまり「ボートが沈む」という、「目的語+動名詞」の感覚とは異なるようです。

従って、「avoid」の後には名詞か動名詞しか来られない、という原則は守っていることになります。何ともキツネにつままれたような気分になります。

以上が、欧州人がよくやりがちな英語の間違いでした。

とは言え、ヨーロッパでは英語話者の数はノンネイティブの方がネイティブよりも断然多いので、「間違いだよ!」と言ったところで多勢に無勢な気もします。

あまりによく使われるので、もはや「国際英語文法」ではレギュラーメンバーにしても良いのではないかと個人的に思うくらいです。

英語という言語が、ネイティブよりも多くのノンネイティブに話されている、非常に稀な言語であることの証左かもしれません。

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