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外国語の学び方

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外国語に興味のある方、外国語の勉強法について悩んでいる方に対して、耳よりな情報を紹介しています。
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2021年3月の記事一覧

語学で広がる読書の世界

母語以外の言語を学ぶことの長所は色々ありますが、読書に関して言えば、作者の声が生で聞こえることが、僕は一番大きな長所だと思います。 よく、読書は、作者との対話だと言われます。社会的に直接な繋がりのない作者と二人で対話する。時には場所も、時代も超越した対話が実現することもあります。 これが、原語が読めるようになると、翻訳を通してではなく、作者が綴った言葉そのままに作品を味わうことができるのです。 大学生の時に古典ギリシャ語を勉強したのですが、一通り文法を勉強し終え、一年の

冠詞攻略の道は長い

語学学習の最初に習うのに、最後まで攻略できない壁。 日本語学習者にとってそれが高低アクセントだとしたら、日本人が英語やドイツ語を学ぶときの壁は「冠詞」ではないでしょうか。 冠詞は、単に不定冠詞と定冠詞という冠詞だけの話にとどまるものではなく、「無冠詞(冠詞をつけない表現)」や「数(単数・複数)」の問題にも広がるので、なかなか厄介です。 しかも、色々な説明はあるけれど、結局のところ「感覚」が占めている部分が多いので難しいのです。 英語の冠詞について書かれている本をこれま

話すより聴く方がずっと難しい

読解、聴解、会話、作文。 読者の皆さまは、語学学習で一番どれが難しいとお考えでしょうか? 個人的には、聴解が一番難しいと思います。 そう、会話(正確には自分が話すこと)は思うほど難しくないのです。 上記の4つの技能の中で、聴解だけが、自分に主導権がありません。 読解は辞書を使って自分のペースで読むことができます。 作文も自分が使える言葉を書けばいいし、書き直しもできる。 会話も自分の知っている言葉を並べれば意思疎通はできます。 ただし、聴解に至っては、話すスピ

多言語を学ぶことの効能

以前、「多言語を学ぶことの現実的な問題」について記事を書きましたが、今回は逆の視点から記事を書いてみようと思います。 題して、「多言語を学ぶと役に立つことたくさんありますよ!」というものです。 前の記事と矛盾しているように思えますが、僕はどちらも真なり、だと思っています。 まず、多言語を学ぶと、視野が広がる。 これは間違いなく言えることです。 もちろん、その言語を学んでいる国のこと、話す人たちのことが身近に感じられるようになり、自分の世界が広がるというのもありますが

通訳とメモ取り

通訳をするにあたって、メモ取り(ノートテイキング)はとても大切です。話されたこと(以下、「発話」と呼びます)の全てを記憶することは難しいので、記憶の支えとしてメモが欠かせないからです。 一方で、メモ取りに集中してしまうと、発話の「書き取り」になってしまい、肝心の発話の「理解」がおろそかになってしまいます。 そのため、通訳の研修の際は、メモ取り技術を教えるときには、いきなりメモ取りを始めるのではなく、まずはメモなしで注意深く発話に耳を澄ませ、内容を理解することに努めることを

【語学】「しなきゃ」から「したい」に

 こんにちは。 「語学学習のモチベーションをどうやって維持すれば良いか?」という相談を知人から受けることが多いのですが、正直なところ、よく言われるようなアドバイスしかできず、あまり自分なりのことが言えません。 というのも、「語学を勉強しなきゃ」と思っている限りは長続きしないと考えているからです。 仕事で資格が必要だから勉強するとか、何かの必要に迫られて勉強すると言っている段階では、モチベーションも上がらないし、長続きもしません。 こう書くと厳しく聞こえるのですが、これ

【語学】手っ取り早く話せるようになる方法は

手っ取り早く外国語が話せるようになる方法はないのでしょうか? 語学はスポーツや筋トレと同じで、長く地道に続けていくことが必要なのですが(だからこそ好きになるか習慣にしてしまうのが一番の得策)、 そこまでの熱量はなく、でもある程度話せるようになりたい、という人の場合、 僕は、「自分のこと、または自分の興味があることについて言いたいことを挙げてみて、それを簡単な外国語の表現で話せるように練習する」というふうにアドバイスをします。 自己紹介は語学学習の中で頻繁に使われる表現

完璧にはなれないけど完璧に向かい続ける

中学生の時に受けていた通信教育の英語の課題で、1つだけ今でも覚えている長文問題があります。 ある日本人のビジネスマンが出張でアメリカに行き、ホテルのフロントで受付係と英語で会話をしているシーンでした。 受付係が「あなたの英語はとても上手ですね、ネイティブみたいです」と言ったのに気を良くしたビジネスマンが、「実は私、ネイティブなんですよ」と冗談を言ったところ、 受付係が神妙な顔つきになり、「ネイティブとしては、あなたの英語はとても下手です」と返事した、というオチの長文問題

【どれを学ぶ?】イタリア語、スペイン語、フランス語

今回は、フランス語、イタリア語、スペイン語のうち、どれが学びやすいかについて、独断に基づいて書いていこうと思います。 いずれもラテン語から派生したロマンス諸語(romantic languages)に属していますが、同じくロマンス諸語に属するルーマニア語やポルトガル語等との比較は省きます。時間をかけて学んだことがないためです・・・。 「学びやすさ」というのはとても恣意的で、人によっても異なると思います。ここでは僕個人が学んでみた感想を書かせていただきます。 この上で、3

「訳語」は一つの解釈に過ぎない

 単語の勉強の話の続きです。  洋の東西を問わず、単語カードに覚えるべき単語と、その訳語を書いて覚える、という学習スタイルは一般的なようです。  この学習方法は、学ぶ言語と母語がとても近い関係にあれば良いのですが、あまりに離れあった言語の場合は、弊害もあります。  単語カードの表に書いてある単語と、裏に書いてある母語の「意味」が、必ずしも100%対応しているわけではないからです。  まず、よく学習書などで使われる「単語の意味」とは、「訳語」のことであって、その単語自身