見出し画像

死ぬ鳥 SNSの「責任」の話


閉店セールののぼり

 今にも死にそうな鳥がいる。
 以前から死ぬ死ぬと言われて続けてきたために私の中ではちょっとした商店街の衣類屋が年中掲げている閉店セールののぼりくらいの気持ちだったが、今回は様々な方面に影響が出ているので、そう軽くも受け取っていられない。

船底のフジツボ

 私は他のSNSを使っていないタイプのユーザであるから、今回の騒動では非常に不便をしている。
 あそこで出会って、仲良くなった貴重な友人たち。
 みんなが避難先を探して、てんでばらばらに避難していく。
 不便だし、切ないし、せっかくできた縁が切れるんだろうという気もしているがこれは、まあ。仕方のないことなんだと思って見つめている。
 せめてあの鳥が死ぬ最後、その瞬間を見てみたいなと。API制限が掛からないように、いわゆる軽いツイ禁をするくらいである。
 
 そもそも私たちはこのサービスに無料で乗っかっているだけなのだから、ここでできた友人、というのは元より海苔をよりあわせて作った綱を渡っているようなものである。高波が来たらちぎれるのだ。本件は、「ウェブサービスとはそういうものだ」と理解するための得難い経験のひとつだ。
 沈みゆくタイタニック号で演奏をとかなんとか見かける気持ちも分かるが、ユーザは別にタイタニック号に雇われているわけでもなく、タイタニック号に金を払って乗船しているわけでもない。
 タイタニック号の話をするなら、私たちユーザはせいぜい船底のフジツボであることを理解しよう。

かわいそうな企業

 かわいそうなフジツボ。これが私たちであるとすると、タイタニック号に乗り込んだ潜在顧客をいざ確保せんと来た企業もかわいそうである。
 この怒涛の流れで低下したインプレッションは、「障害等があったとしてもまあこのくらいは……」と見込んだ件数を大きく下回るだろう。広告費をドブに捨てたものでは、という言葉もちらと見かけた。
 これは非常にかわいそうだと思う。閉店セールののぼりの店から仕入れをしようとお金を払ったら、店側が急に建物を取り壊し始めたようなものである。広告出稿にあたる規約がどうなっているのか、私は確認していないが……
 機会損失、流れた利益のことを考えると訴えられてもおかしくない。死にかけの鳥がか、はたまた某ロン氏(声に出してみよう)がか。いずれにせよどちらのお財布も、そんなに分厚くないんじゃないかとはうっすら、思う。

 とはいえ、死なないウェブサービスなんて(一部の例外を除いて)存在しない。某WS(声に出して読んでみよう)でさえ各所のデータセンターが一斉に爆発したら死ぬ。
 契約のうちに「死んだら死にます」は書いてあることを願うばかりだ。

冗談じゃない公的機関

 私たちの暮らす日本は、自然災害がヤバい。
 そのためリアルタイム更新、かつショートなメッセージで視認性の高いここが、災害情報の共有手段として重宝されている。
 で、だんだんと災害情報のみならず、公的機関も様々なアナウンスや告知、活動内容の報告等に利用をし始めているわけで……
 (私の記憶では当初、あそこには特務機関のみがあった)
 私たちは、あの場所がそうした用途に用いられることがだんだん、当たり前のように感じ始めているわけで…… もしかしたら、エライ人々もあの場所があって当然のように感じているかもしれないわけで……

 そう考えると、冗談じゃない。

絶対死なないSNS

 いち企業が運営している、いちSNS。
 今その負うべき責任はどこまで大きくなっているのか。
 そう考えると、冗談じゃないでしょう。

 企業の広告はまだしも(最初から広告収入で運営されているものですからね)、公的機関の情報発信を前提としたサービスですか?というと、恐らくそうではないんです。
 開発時に「そんなつもりじゃなかった」ことは、後でアップデートして対応したにしてもボロが出るんです。なぜならローンチ時にくらべて、運用中のメンテナンスには十分な精神的、時間的余裕がご用意されにくいから。
 あの場所は最初から、絶対死なないSNSとして作られたわけじゃない。

 だのに私たちは、絶対死なないSNSを求めている。

 絶対死なないSNSが存在するために必要なのは、「絶対に死なせない」ための手厚い援助です。援助とは資金であったり、体制であったり、立場であったりしますけども。我々は、あの場所を「絶対に死なせない」だけのことをしてきたでしょうか。
 してないんですよね。
 タイミング的にちょうど某ロン(声に出してみよう)さんに変わってからの改悪、トラブル続出、だから某ロンさんに向いちゃいます。意識がね。
 でもたぶん、今後の社会や、そこで過ごす私たちにとって大事なことって「いつ死ぬか分からないソーシャルネットワーク」との付き合い方なんです。

 コスト的に、絶対死なないSNSって……
 それこそ世界的に公営事業として興すしかないと思う。どうにかならんかな。なんやかんや言いましたが、私だってあそこでできた友達をなくすのは惜しいし、情緒もクチャクチャになっています。生身では絶対に会えなかっただろう人と、SNSで友達になれた。それがなかったら私、孤独死まっしぐらの人生ですから。
 どうにかなってほしいなって、思う。昼。

 このあと某om会議なんですよね。
 仕事で使うものも結局、いつ死ぬか分からないんだよなあ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?