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コロナウィルスは不可抗力なのか

最近、よく仕事でコロナウィルス関係の相談をうけています。イベントを中止すべきか、中止したときに業者にキャンセル料を支払わなければいけないのか、顧客からの契約条件変更要請に応じるべきかなどさまざまです。検討にあたっては、それは不可抗力なのか?をポイントにしていします。一方で、緊急事態という現状を踏まえて、どういった対応が求められているのか、個人的な意見をまとめます。

不可抗力とは

通常契約や規約のなかでは不可抗力事由に該当する場合、相互に債務不履行責任を負わないことを明記することが一般的です。例えば、不可抗力に該当する場合に顧客にサービス提供ができなくなった場合、相手方から債務不履行責任を追及されることはありません。(なお、金銭債務は将来的には支払えるはずなので、通常除かれます。 参照:民法415条)

では、不可抗力とは何なのか、不可抗力は法律上で明文の定義がないようなので、国語辞典をあたってみましょう。すると以下のように定義されています。

① 天災地変のように人力ではどうすることもできないこと。
② [法]外部から生じた障害で通常必要と認められる注意や予防方法を尽くしてもなお防止し得ないもの。(広辞苑第六版)
① 人間の力ではどうにもさからうことのできない力や事態。
② 法律で、外部から発生した事実で、普通に要求される注意や予防方法を講じても、損害を防止できないもの。債務不履行や不法行為の責任を免れるとされる。
(大辞林)

こうしてみると、不可抗力とは(1)外部から生じていること、かつ、(2)通常要求されている程度の注意をはたしていても防止できないこと、の2つの要件を満たす場合不可抗力に該当すると考えられますね。

コロナウィルスによるイベント中止・延期

コロナウィルスの感染状況をふまえて、不要不急のイベントなどは自粛するというムードがほぼ一般的になっています。例えば、採用イベントやセミナーなどが中止・延期の対応をとっている印象です。たしかにわざわざこのタイミングで実施せずともいいものはありますよね。

こういったあくまで自主的な中止・延期は不可抗力に該当するとは言い切れません。先ほどの要件でいうと、コロナウィルス自体は(1)外部から生じていること、に合致しますが、コロナウィルスによる中止・延期が(2)通常要求されている程度の注意をはたしていても防止できない、とまでは言えないためです。

一方で、政府や法令等から明確な要請・指示がある場合は事情が異なります。中国の場合は、国レベルに限られず、各省・各市レベルでも明確な指示発令されていて、それを順守することが求められています。そうなると、罰則のことを考えると中止・延期を免れることはできません。不可抗力といっていいレベルの事由だと考えられます。

阿部首相による中止・延期要望

悩ましいのが、2月26日に阿部首相が発表した国民に対してスポーツ、文化のイベントについては中止・延期を要望です。各イベントが中止となったことが報道で取り上げられました。同日に開催予定だったPerfumeのLIVEや、EXILEのLIVEが有名ですね。

…安倍総理大臣は「今がまさに感染の流行を早期に終息させるために極めて重要な時期だ。この1、2週間が感染拡大防止に極めて重要であることを踏まえ、多数の方が集まるような全国的なスポーツ、文化イベントなどについては大規模な感染リスクがあることを勘案し、今後2週間は中止・延期または規模縮小などの対応を要請することとする」と述べました。
NHKニュース 2月26日
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200226/k10012301961000.html

中途半端なことをされて困るわ、、、というボヤきはさておき、阿部首相の発表はあくまで要請、ですので罰則があるわけでもなく、もちろん実施しようと思えば実施できます。とはいえ、ここで要請されているスポーツ、文化イベントは実施できなくなった(あるいは実施形態を変えざるをえなくなった)というのが実態だと考えられます。

緊急事態、相互に責任を問うか?

不可抗力に明確に該当しない阿部首相の要望のようなケースで、むしろイベントを実施することが世論的に反感や、実際に感染拡大を助長させてしまうことが想定されると、債務不履行の責任が残っても中止・延期する事業者を責めることはできません。とても賢明な決断だと思います。ここまで債務不履行責任を免れるために、不可抗力かどうかという観点で検討してきましたが、現状は緊急事態ということが世間の共通認識なので、「できただろう」という理由で責任を追及するよりも、ある程度お互いに痛み分け、という対応が各社には求められていることじゃないでしょうか。


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