”トランプ大統領”って?その2

 さて、前回はトランプ氏の考え方に注目していくためには、政策にとらわれないことが大事だということを主張しました。これは”どこから議論を始めるか”を考えるにあたって、重要な点だと考えたわけです。

 議論を始める点はまた後に触れるとしまして、議論の中心的議題としては、政策内容の詳細(どの政策を施行すれば、どのくらいの経済的利益、社会的な安全保障の整備ができるかなど)よりも、なぜ、その政策を考えるに至ったのか、に注目していこう、ということです。

 補足としては、政策の詳細を議論していこうとすると、では経済的利益を計上するにあたって、どのような試算をするかなど、議論が細かくなりすぎて訳が分からなくなってしまうことがあります。というか、ほとんどの議論がそんな感じでまとまりがないんです。分かりにくいし、結論の終着点も曖昧になりますし。

政策の裏側を見ていこう!

 では、実際に政策の裏側を拝見していきましょう。

 政策の元になっている考え方は、どのようにすれば見ていくことができるのでしょうか。一見矛盾するようですが、政策の内容を見ていくことによって、それがわかってきます。正確には、政策の内容というよりも、政策の方向性です。これがキーワードなんです。

政策の方向性とは何か?

 これは、実際に見ていくことでわかってきます。トランプ氏の政策と、今まで支配的だった考え方に基づく政策を比較すると、よくわかってくるはずです。

 世間が、アメリカが、日本が、ヨーロッパが、トランプ氏の当選に大騒ぎする大きな理由は、まずお世辞にも品があるとは言えない彼の言葉遣いに加えて、政策の方向性が今までと大きく違うということです。

トランプ氏が掲げる政策概要

 ここでは、トランプ氏が掲げている政策の概要を見ていきたいと思います。前回も引用した、トランプ氏のHPから筆者訳で書いていきます。

https://www.donaldjtrump.com/policies/

まず、主要な政策は15個です。

・社会資本(インフラストラクチャー)

・サイバーセキュリティ

・退役軍人援護改革(veterans affairs reform)

・貿易(トレード)

・税制度(タックスプラン)

・規制(レギュレーション)

・国防(ナショナルディフェンス)

・移民(イミグレーション)

・健康保険(ヘルスケア)

・対外政策とISISへの対応(フォーリンポリシー、ディフェンディングISIS)

・エネルギー

・教育(エデュケーション)

・憲法と補正第2条について(銃所持について)(constitution and second amendment)

・児童福祉(チャイルドケア)

・経済(エコノミー)

 主要とは言っても、15種類もあるとずら〜っと並ぶ感じになってしまいました。適訳があれば、コメントなどで教えてください。

 一つ、強調しておきたいのは、トランプ氏のHPというのは今後の方向性を示すものでありますが、これが実際に行われていくのかどうかは、別問題です。ただ、本人が直接管理する政策内容の公表なので、これを発表していくことで支持を得られるという確信のもと、公表しているはずです。

 つまり、”これが正しい”と確信ている、本人の意向がわかるという点で、情報として役に立つと言えると思います。

 加えて注意しておきたいのですが、僕はここでトランプ氏を批判するためにこれらを書いているわけではありません。誤解を招いてしまっているようなので書いておきます。(次の段落は僕の考えを書いたもので、少し長いので読み飛ばしていただいても大丈夫です!)

 トランプ氏の登場と彼を当選させたアメリカ自体について、これを口先で批判することは簡単ですが、安易であり、正直ナンセンスだと感じます。遡れば2008年の世界金融危機に象徴されるように、現代の主流派経済思想が、各国自身の生活水準を上げる、または保つための政策を打ち出さず、その意味で誤った方向へ突き進んできたことは自明でした。あろうことか日本においてはそれを2周遅れくらいで追いかけては自国を圧迫するような不届きな政治をしてきていて、最悪な事態は多少回避できたとしても、停滞する世界経済の状況下で、リスクを想定しそれに対応しうる周到な整備を行うことができないままでいます。これは非常に危険な状況です。トランプ氏の出現は、インパクトがあります。しかし、なんの理由もなしに出てきたわけではありません。イギリスのEU離脱が時期として重なったのも、フランスで極右政党が支持を得ているのも、偶発的な出来事ではないはずです。 現状の資本主義が内包するリスクを提起し続けてきた知識人は、しっかりと声を上げていました。彼らの理路整然とした冷静な主張と分析に感情を動かされて、僕は今大学院で勉強させてもらっています。その方達の足下にも及びはしませんが、僕なりに、現状をまとめていきたいと思って書いています。批判をするために書くのではなくて、もっともっと遠くから冷静に全体像を把握しようとすることによって、今何が起きているのか、認識を深めていくことができるのではないかと信じて、書いていきたいと思っています。


 だいたいですが、今テレビなどでよく話題になっているのは、貿易、移民、国防などでしょうか。

 ・貿易は、自由貿易推進の立場から一転して、TPPなどの国際条約(関税を撤廃したり、各国間の法的な規則を合わせていくことによって貿易活動を推進する多国間の協同政策)から離脱することで話題を呼んでいます。

 ・移民についてはよくテレビなどで言われていて、メキシコとの国境に壁を作るなど、移民受け入れについてはかなり否定的な意思を示しています。

 ・国防については、日本にある米軍基地縮小など、予算を自国に集中させていく方向だと言われています。

では、主要な政策の中からいくつか特に重要度の高いものを個別に見ながら、政策の元となっている考え方を見ていきましょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?