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【廃棄物処理法解説】特定有害産業廃棄物2 ~アスベスト編~

皆様こんにちは!越後谷と申します!
静脈産業に長年従事し、法令関連の記事制作を担当させていただきます。
今回は特定有害産業廃棄物の1つであるアスベストについて解説していきます。

アスベストとは?

石綿(いしわた、せきめん)とも呼ばれる繊維状の天然鉱物です。
耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性等といった特性に加えて安価であったため「奇跡の鉱物」として建築材料、自動車のブレーキパッド、断熱材などの工業製品や家庭用品等様々な用途に広く使用され、その数は3,000種とも言われていました。
一説には竹取物語のかぐや姫が要求した火鼠の皮衣はアスベスト製の布とも言われています。

アスベストが問題になった歴史と対策

アスベストの健康被害については第二次世界大戦(1939年~1945年)より以前から指摘されてはきましたが、本格的な対策が実施されるのは1970年代からとなります。
1973年、当時世界最大のアスベストメーカーであったアメリカのジョンズ・マンビル社に製造者責任が認定されると多数の訴訟を起こされ、賠償金も高額になる見込みであることからジョンズ・マンビル社は1983年に事実上倒産します。このような事件をきっかけに世界的にアスベストの使用
が削減・禁止される方向に動いていきます。

日本では、1975年(昭和50年)9月に吹き付けアスベストの使用が禁止され、1985年(昭和60年)には石綿セメント管の製造が終了しました。
その後、労働安全衛生法で作業環境での濃度基準を、大気汚染防止法で特定粉じんとして排出発基準が定められました。
また、1991年(平成3年)に廃棄物処理法が改正され、飛散性の石綿の廃棄物を特別管理産業廃棄物に指定されるなどアスベストによる飛散防止や健康被害の予防対策が取られてきました。
2004年(平成16年)までに石綿を1%以上含む製品の出荷が原則禁止され、2005年(平成17年)には、健康障害防止対策の充実を図るため、石綿障害予防規則が施行されました。
これ以降もアスベストに関係する法律の改正は今日まで続いています。

国内でアスベストによる健康被害について多く知られるようになったきっかけは「クボタ・ショック」だと思われますので簡単に触れていきます。
2005年6月29日に大手機械メーカー・クボタの旧神崎工場の周辺住民にアスベスト疾患が発生しており、クボタが被害者に見舞金の支払いを検討しているという内容を新聞社が報じたため国内で反響を呼びました。
その後も造船業や建設業、船会社、鉄道会社などでのアスベスト健康被害が報じられていきます。

2006年に被害者や支援団体関係者らとクボタとの補償に向けての交渉が行われ、クボタは救済金支払い規定を制定し、2022年12月31日までに377名へ救済金が支払われています。
石綿による健康被害の迅速な救済を図ることを目的とした石綿健康被害救済法も2006年に制定されました。

アスベスト疾患はアスベストを吸引してもしばらくは症状が出ず、数十年経ってから石綿肺や肺がん等の疾病を発症させるため、アスベストは「静かな時限爆弾」とも呼ばれており今後もアスベストによる健康被害が見込まれています。

廃棄物処理法での取扱いと処理

廃棄物としてのアスベストは"特別管理産業廃棄物"の廃石綿等と"石綿含有産業廃棄物" の2種類に大別されます。

廃石綿等、石綿含有産業廃棄物ともにアスベストの特性上、飛散流出対策が特に求められる廃棄物です。
特に廃石綿等は二重梱包しなければなりません。

廃石綿等や石綿含有産業廃棄物の処理に際しての取り扱いは環境省より石綿含有廃棄物等処理マニュアルが公表されていますので参考にしてくだ
さい。
参考『石綿含有廃棄物等処理マニュアル(第3版)』

処分方法についても原則破砕処理は禁止されており、一般的には埋立処分が主流となっています。

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