見出し画像

いくつもの生を飛び越えて 「出会って4光年で合体」 感想

やばすぎる
マジで

成人する大体半年前に公開され、前々からどんな作品なんだろうとワクワクしていた。やっと読みました。どこから書けばいいか。全てはぶちまけられた感情を整理するためのメモ。

100億点満点、俺が今まで読んだ漫画の数が少ないからかもしれないけど、個人的に少女終末旅行と肩を並べるレベルで好きな作品になった。青島もうじきさんや、惑星ソラリスのラストの、びしょびしょの実家でびしょびしょの父親と抱き合うびしょびしょの主人公さんの小説が好きで、少しだけ追ってる自分にとってはこの作品で取り扱ったテーマ、そしてその結末があまりにも最高だった。まじ、大学入るまでにこのレベルの厚みを持った物語書けんのか?むりだろ くっそ
「人類」と「地球」を、「セックスしないと出られかった星」という鍵文章で繋げてしまう結末にはヤられた、、、としか思えない。まさに俺が漫画として書きたかったものはこのレヴェルでのコペルニクス的転回を一つの二者関係を主軸に立ち上げることだった。たしかにこれはエロ漫画じゃないとダメだ。

大久絵島の島民のそれぞれの物語をこの作品を特徴づける飛躍した場面展開とそれを可能にする上位存在によって世界そのものの記述を指向する。それは分子生物学、生命のスープの話から始まり、その果てにアメーバのような知的生命体による人類への干渉へと至り、それに合流する一つの人格としての語り手の別れの惜しみによって終幕する。これは語り手が物語世界へいつの間にか介入しているからこそできる終わり方であり、その点においてやはり語り手の立ち位置の重要性を感じざるを得なかった。ここら辺は自分が今描いてる作品にも参考にさせてもらいます。
そしてその人類への干渉の結果としてのくおんという人と出会ってしまえば別れてしまうという運命を最初から背負っている怪異(作中最後では異形(いなり)と呼ばれていた)と、どうしようもない現実性を背負った、便宜的な主人公としての橘はやと。別れてしまう運命によって、くおんとの出会いを忘れてしまった橘はやとに変わって真男による、作中の宇宙飛行士によるところの

私たちは心を持つ炭素生物という、矛盾を生み出し続ける装置だ。そして自然の中にあらゆる矛盾を編んで、それを解く。そして他者の中にそれを見つけ明らかにすることにも、何よりの喜びを感じる。

出会って4光年で合体 316p

という文章に代表される世界への探求によって、彼らは出会って四光年で合体を果たし、上位存在への融合という結末を作り変えることで彼らにとってのハッピーエンドを迎えることとなる。


ハードコアSF官能小説を読みやすくするために漫画になった、といった方が納得しやすいくらいの文章量とページ数による圧倒的な鑑賞難易度を度外視すれば、太ったおばさんさんの思考のドライブが直接流れ込んできて、支離滅裂ながら最高の物語だった。
あと普通に絵がうますぎない?背景は(キャラもちょくちょく3Dらしさが見られるが)そのパースの正確さと影付けの特徴からして3Dをベースにしてると思われるが、そのおかげで容易にフレキシブルにレイアウトを選択できるとしても、それぞれのキャラクターの丁寧な描写とモチーフの選択(銀河鉄道やたぬき)といった根本的な部分で自力があり、圧巻でした。

自分もここまでとはいかなくても、ある程度の鑑賞難易度を引き受ける覚悟をしなくちゃ前に進めない気がする。とはいえ語り手としての上位存在をそのまま真似するのではなく、自分がタルコフスキーに惹かれる理由の一つ、ひいては物語の形式として映画が好きな理由として、フッテージに触れたときの語り手の不在性、カメラの不在性があるので、どうにか絵を主軸にそこから語りを立ち上げられないかなと。
カクヨムで普通に小説あるらしいので、dlsiteにある他の漫画も含め太ったおばさんさんの作品を随時遡っていこう。とにかく、面白くて、漫画を作る勇気をもらえた作品だった。

頑張るぞ!


勝てないですかこういうポルノには。俺は悔しいよ。そこにあるのが仏教の経典だろうがシコりたい奴はシコっちゃうのが人間のいいところかもしんないけどさ、人間ってそんなふうに人間なのかもしれないけれど、はみ出したものを何かが受け止めるなら、その領分をやっぱり、頑張る姿が見たいぜ。だから頼む。土の中で光を浴びるのを待っているポルノを、そのまま掘り出してそこに置く、それもまたポルノの中のなければならない形なんだ。

出会って4光年で合体 306p

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?