2024コロナ感染記②

 発症当日の症状は、発熱と頭痛だった。熱は38度5分周辺だが、いつもの風邪と違い、熱の割りに怠さを感じない。普段の怠さで耐性がついたのか、と思うくらいだった。その代わり、頭が痛い。孫悟空の輪を嵌められた、お釈迦様が呪文を唱えているかのようだ。この頭痛は、熱が引くまで続いた。喉の痛みや咳はないため、ひたすら横になっているしかない。頭が働かないので、本も読むことができない。テレビをつけても理解ができず、鬱陶しいだけだった。

 夜、寝ているときに仕事を夢を見た。エクセルのワークシートで、現在頭を悩ませていた経費の処理がすっきり解決するというものだった。寝ざめはむしろ爽快で、体を起こして思ったことが、熱が引いたのではないか、ということだった。体温を測ると38度9分。これから何日もこの熱が続くことになる。適当なものを齧り、水分を取り、もらった薬を飲む。しかし、いくら薬を飲んでも、効き目を感じることはなかった。「コロナ 薬効かない」で検索した記憶がある。時折、悪寒がする。外はずっと雨が降り続いていて、蒸し暑いくらいの天候なのに寒気が止まらない。そうかと思うと今度は暑くて、汗が止まらない。コロナは体温が急激に上下すると聞いていたが、これがそうだったのかもしれない。

 3日目、相変わらずの熱に加え、喉の痛みを感じた。このころになると、これ治るんか?と思いながら、ひたすら横になることしかできない。このままいくとどうなるかを考えはじめた。このぐっちゃぐちゃの部屋を残して入院するんか。少しだけではあるが、この病気で死んだあとのことも考えた。そして、治ったらましな生活をしようと決めた。寝て、起きて、何か食って、薬飲んで、また寝る。動物は、怪我や病気をすると、とにかく動かず体を休め、自分の自然治癒力による回復を図ると聞いていたが、こうなると改めて自分も動物だな、と感じる。

 4日目、熱は下がらず、痰が出始める。辛かったのは、痛いくしゃみだ。喉に激痛を残すくしゃみが出る。くしゃみの後は咳が続く。幸い、味覚と嗅覚に異常はなかったため、食事を摂ることはできた。このころは、買い置きの超熟食パンをポカリスエットで流し込んでいた。楽しみはシャワーだ。罹患後、シャワーだけは欠かさなかったが、熱が高いときの熱いシャワーはとても気持ちよかった。いっそのこと、風呂に入りたいと思ったが、一旦湯に浸かると出られる気がしなかったため、止めた。

 5日目、高熱、痰、咳のコンボで苦しめられる。以前、人のコロナ療養記を読んだことがあるが、この病気は人によって症状の出方が大きく異なる。ホテルで隔離されたが、ほぼ無症状だった方もいる。だから感染症としては質が悪い。一定、流行が続くのも納得だ。そろそろ、ほったらかしの仕事が気になりはじめる。いくら休もうが、結局誰かが私の仕事をするはずもなく、放置されていることは確定済だ。今自分がかかっている病気がコロナウイルス感染症だと同じくらいの確実さだ。せっかく途中まで考えていた仕事のことをすっかり忘れているから、また一から練り上げることを思うだけで心底うんざりするが、半ば無理やり治ってから考えることにする。

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