【断髪小説】入社の覚悟〜配属〜

優子は23歳、国立大学を卒業し大手アパレル企業の総合職への就職を決めた。

ブランド物と洋服が好きな優子にとってまさに憧れの企業であり、入社まで日々胸を躍らせていた。

41日、いよいよ入社式の日を迎えた。入社式では自由な髪型で出席する事が認めてられおり、優子は自慢のロングヘアを栗色に染めたスタイルで出席をする事にした。東京本社での入社式を終えた優子は約1ヶ月間の研修期間を迎える事になった。研修期間中、机上研修だけでなく自社ブランドの工場見学や店舗見学などを終えた新入社員達は、51日ようやく配属の辞令が出される事になった。

本社の大会議室に集められた新入社員達に人事部社員が配属先を発表していく

人事社員「東京営業部 ○△店 ○○さん

同じく○□さん続いて横浜営業部 ◇店 ○×さん ××さん

人事部の社員が次々と新入社員達の配属先を読み上げ辞令を出す中、優子の名前はまだ呼ばれない

人事社員「営業部以上。続いて工務部、優子さん、瞳さん、以上2名!工務部では工場の生産業務に就いてもらいます」

優子「えっ

優子の頭は真っ白になった。入社前、華やかな店舗での営業をイメージしていた優子にとって工場勤務は想定外であった

しばらくして、大会議室に各配属先の先輩社員達がぞろぞろと入室してきた。

人事社員「この方々が君達の上司となります。それでは早速ですが、今から各配属先へと向かってもらいます。では、頑張って下さい!」

優子は依然、呆然と只々立ち尽くしていた。そこに1人、中年の女性社員がやってきた

直美「あなたが優子さんね?私は工務部 東京工場担当の直美と申します。」

現れたのは東京工場に勤務する直美であった。直美はスッキリと耳周りと後ろが刈り上げられ、前髪は眉上切り揃えられた乙女刈りのような髪型をしていた

優子「よっよろしくお願い致します」

優子は言葉に詰まりながらも挨拶を交わした

直美「それにしても長い髪ねまぁいいわ

直美は小声で呟いたが優子には聞こえていなかった。

しばらくして同じ配属先である同期の瞳と合流をした

瞳は都内の有名私大を卒業し優子と同じく総合職として入社してきた内の1人であった。美人な顔立ちに腰まである黒髪のロングヘアをなびかせた佇まいからしてお嬢様家庭出身の様にも思われた

直美に引率された2人は本社からタクシーに乗り込み東京工場へと向かった
1時間程して工場に到着した2人は、工場長に挨拶を済ませた後、工場見学を兼ね仕事の説明を受ける事になった

直美「ここでは弊社プライベートブランドのおよそ7割の製品を生産しています。2人には現場の生産ラインを担当してもらいます」

と慣れた様に説明する直美だか、優子はある違和感を覚えた。それは、工場内にいる女性が皆同じ様な髪型をしている事であった。帽子ではっきりとは見えないものの、皆耳周りと後ろがスッキリと刈り上げられロングヘアらしき髪型の女性は誰1人としていなかった

一通り工場内での説明を終えた優子と瞳は、小さな事務室へと通され再度、直美からの事務説明を受ける事になった

直美「2人には来週から現場勤務にあたって頂きます。でもその前に一つだけ注意事項がありますここの工場では安全面を考えてロングヘアの髪型は原則禁止しています!

直美「女性の場合、周りの音が聞こえる様、耳周りは刈り上げ、長髪が機械に巻き込まれると危険なので襟足も刈り上げ、後視界かきちんと見えるように前髪は眉上とした乙女刈りを原則としています。この規則を守れない場合、いかなる理由があっても働く事は認めません」

優子の嫌な予感は的中した。生まれたから23年間、一度たりともショートをした事がない優子にとって、それは死刑宣告とも言えるべき事であった。しかもただのショートではない、ダサい乙女刈りだ

直美「2人ともちょうど見事なロングヘアねでもここでは綺麗な髪型は必要ないの残念だけど綺麗サッパリ覚悟を決めて貰います」

優子と瞳は返す言葉さえも出なかった。

シーンと静まり返る部屋に1人の男性が入室してきた


男性社員「失礼します。直美さん、お車の準備できました。例の予約もおさえてあります」

直美「ありがとう」

直美「2人には早速、今から髪を切ってもらいます。」

突然すぎる状況に2人は為す術も無く、直美に連れられ社用車へと乗り込んだ

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