見出し画像

ep66 行方不明者の所有物が発見される

 2024年に入って筆者は山天地区から榎谷へ数回訪れました。以前から書き残しているのですが、この谷の奥は昭和5年4月に旧制郡山中学の生徒教員が遭難し、7名中教員1名、生徒2名が犠牲となっています。

 この場所には慰霊碑が建てられていると聞き、どの様なものか確認すべく出かけるも、これまで辿り着く事ができませんでした。

犬を連れて越えることが出来なかった堰堤
右斜面を登ると奥にもう一つ堰堤が見えました


2023年4月10日

 五百瀬集落の政所(まんどころ)を出発した台湾系アメリカ人女性のパトリシアさんが突然姿を消してしまいました。熊野古道小辺路、高野山をスタートし、本宮大社を目指して三浦峠を越える予定でした。

 目的の宿に到着せず、捜索の依頼が出たのでしょう。翌日の朝、十津川村入りしていた筆者の実家前の国道は数台の消防車両がサイレンを鳴らして走ったのを記憶しています。南に位置する筆者の実家ですが、当時国道168号線、十津川村北部長殿村界付近で大規模な崖崩れがあり、北部からの侵入が困難になっていたと思います。

 彼女は目立つ服装だったので、早い段階で救助されると思っていました。ところが、数日経っても見つからず、近所の宿には地元アメリカより親族を含め大勢の救援者や日本人ボランティア、警察による大捜索が展開されました。しかし、手掛かりが掴めない様子で大変気の毒でした。

 世界遺産熊野古道小辺路は、比較的山道が分かり易く、案内板も多数設置されているので迷う場所は無いだろう。筆者はそう考えていたので、熊に出会ってしまったのか?足を踏み外して滑落してしまったのか等、色々考えを巡らせていました。

手掛かり無く1年半弱

『ザックと靴が見つかったらしい』
『山天から渓谷に入った釣り人が発見、堰堤を二つ越ーえた奥。。。』

その様に村民から連絡が入り、堰堤二つ。。。鳥肌が立ちました。

 冒頭に記述した通り、筆者は今年5月に犬を連れ、その谷『榎谷』へ訪れていたのです。残念ながら犬連れで、その堰堤を越えることが出来ず退散したのですが、もし越えていたら自身が見つけた可能性もあります。

 更に、所有物が発見された同日の9月15日。村境探索の為、谷奥にある山天の高を歩いていたのです。その時、2つの遭難事案を思い出しメンバーと話をしていたのです。偶然であったのでしょうが、タイムリーな出来事でありました。

『やはり遭難していたのか。。でも持ち物が見つかって良かった。』

あの吸い寄せられる様に気になって立ち寄っていた谷。とても寂しい雰囲気の漂う谷。
何とも複雑な気持ちでした。

Instagram に更新された情報

 パトリシアさんの情報を発信していたInstagramに新しい情報が書き込まれていました。
バックパック、片方の靴、住所とメールアドレスの書かれたメモ。ジップロックなど数点。
バックパックの中身は砂利を除いて殆ど空の状態だったそうです。

 見つかった詳しい場所は分かりませんが、地図で示された場所を見るに、榎谷奥にある堰堤を2つ越え、更に奥だと思われます。

 榎谷はアマゴ釣りに入る人以外、最上流にあるツツジ滝を見に行く人くらいでしょうか?滅多に人が立ち寄る場所ではありません。

 どの様なルートで榎谷まで降りて来たのか、不明な点が多く残ります。水を求めたのか、戻る道を間違えたのでしょうか。現在捜索が続いていると聞いています。

教訓

 地元民や山に慣れている人は今回の事案を「なぜあの道に入った?」と不思議に思う人が殆どでしょう。『あり得ない』という声を村内各所で聞きました。

 まだ事件性など、はっきりとした原因の断定には至っておらず、本人も出て来ていないので何とも言えないですが、遭難の殆どは道迷いで40%と言われています。特に世界遺産となった小辺路は海外からの訪問者も多く、玄人から素人まで多種多様です。

 捜索には多くの人が巻き込まれます。山に入る時は届けと紙の地図、スマートフォン地図アプリの利用、充分な水分と行動食を持ち、万一怪我や道迷いになった時は尾根に止まる事が推奨されます。

 出来れば今回間違えたと思われる道へも道標や注意喚起のバリケード等を設置し、間違えない様に促す対策が必要でしょう。

早急にご本人が見つかります様に。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?