遺るのは真実の神の言葉

小さな娘を持つお母さんに 
ある日使い者が来ました。

王国から使いで あなたは 王女なのです。
今  お住まいの地域は危険で 王様から
帰還命令が出ましたので
 お迎えにあがりました。

王女だとか お姫様だとか そんな話は
冗談のように思えましたが
使いの者の言葉には 真実なものが感じられました。

今の生活を離れるのは心が残りましたが
でも 最近 この小さな娘と共に
この国で暮らしていくことにも
不安を感じるようになっていたのです。

日増しに黒い影がこの国を覆っていくのが
彼女には見えていたからです。

 身一つでいえ、小さな娘だけを抱えて
彼女は 、用意された馬車に乗り込みました。

数人の騎士が 護衛について
夜に日をついで 馬車は走りました

日が暮れたとき、大きな洋館で今晩は泊めてもらおうということになりましたが、

彼女は そこに泊まるのは 
なぜか危険な気がして
近くにあった藁をたくさん 保管してある
廃屋に泊まることを提案し 馬を近くの森に
隠して置くようにと指示しました。

案の定、夜追っ手がやって来て
館を家捜ししましたが 何も見つからず
諦めて彼らは引き上げて行きました。

それからも馬車の旅は続き
ある時は 沿道に見慣れぬ大きな
細長い箱が連なって走っていく姿を見ました
馬が曳いているのでもなく
生き物のように走るそれは
どこか 
記憶にあるもののにも思われましたが
馬と馬車での移動しか 今はありませんので
この時代に無いものが
紛れ込んで いるのだと思われました。

山道を抜けて も行き着かず
坑道のような場所に差し掛かりますが
灯りがなく 行く手は暗くなるばかりです。

彼女は 神に祈りました。
すると 小さな光のかけらが
ヒラヒラと降ってきて急に視界が
開けました。

王女を守り供してきた騎士が言いました
さあ 着きました

王はあちらにお住まいです と。

王女が騎士が指差す方を見ても
王宮などどこにも見当たりません。
お城の姿はありません。

あちらです。

と再び示されたのは
木で作られた小さな小屋でした。

王女は笑い出しました。
あそこがお城なのですか?

でも 王女にはわかっていました。
騎士もにっこり笑いました。

そう この国では権力や 権威のために
大きな城や金銀財宝持つ必要はないのです。

この国の王足る資格は
心の美しさと神への信仰の篤さ
それのみなのでした。

最も心が清く
 神の心に近い者が王になるのです。

促されて王女は 小屋に入りました。
王が抱き締めて

よく帰った

 よく帰った

と心の底から温かくなる声で迎えてくれたのです。

王様は、王冠も身に纏う豪華な衣裳もなく

 農夫のおじいさんのような姿です。

神様とお会いする特別な場面やお祭りのときにだけ、物語にあるような王冠や衣裳を身に纏うものだと 王様は 言葉には出さず
゛思い“  で伝えてきました。

小屋には
聖書と 太陽の法という2冊の本が 棚に大切にしまわれています。

聖書は 

王女が住んでいた村にもありましたから
手にとって ページをめくってみました。

不思議なことに 文字が灰色にくすんで見えるところと 黄金色に輝いて浮かび上がっている文字とがあるではありませんか。

👸お父様、この文字の違いは何なのでしょう?

それはね、真実の神の言葉は金色に浮かび上がり、人間が書き加えた部分は くすんでくるんだよ。

でも、お父様 それでは 神の言葉が 真実伝わらないのではないですか。神のお言葉だけを残して あとは消してしまえば良いのではないでしょうか?

そう思うかね。 人間が為してきた愚かさも
この聖書には 記されているのだと私は思うよ。その愚かさを 忘れないでいることも大切なんだよ。
そのなかから 何を選びとって成長していけるか。人は皆 成長過程のなかにあって、完璧なものはないのだからね。

どれが 真実の神の言葉かを 選びとっていけるか それもまた試され 学びの途上に必要なものなのだよ。
生きている人間にとって、完全や完璧ということはあり得ないものだからね。
 長い時間のなかで 過ちを犯したり 失敗しながらも そこから学んでいくからこそ また人を許せる境地にも至れるんだよ。

決して失敗をしない 間違いを犯さない機械のように 神は人間をお造りになられたわけではないんだ。だから、悪を為している者の悪を正すことは、しなければならないが 神の創られた存在そのものを憎んではいけないんだよ。


👸お父様 この 太陽の法という 本は 初めて見ますが これは何ですか。

それは これから 世に出る本だよ。
この書物に出会うために 多くの人たちが
また生まれてくる。


そこまで 聴いているうちに
長旅で疲れた王女と小さな娘は
小屋の端に、しつらえらられた
心地良さそうなベッドで眠りに落ちました。




ー朝の夢の話です。ー




遺るものは真実の神の言葉のみ


目覚めたあとも 

その言葉は響いています

















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