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白昼夢

薄暗い館の奥に、
タロットカードをリズミカルに繰る女がいた。
その占い師の顔はよくみたら私だった。

私はその前に座った。

私にそっくりな占い師は

「本当のあなたの気持ちを言い当てましょう」

ニコリと笑った。

くしゃっと丸めた札束を女に渡した。

「今あなたは女としても、
人間としても、
強く認められたいと感じてるのでしょう。

承認欲求が高まっている。
なのにそれを満たせられなくて
水中にいるようにもがいている。

また、ヒリヒリとした生きているという実感を感じたいのではないですか?」

ピンと来ましたか?と女に聞かれ、


私はそうですね、と静かに頷いた。

ティンダーを辞めた事で、"自分のnoteを他人に読ませて評価を受けるムーブ"からも卒業していた。

私はその一連の流れで無意識に自己肯定感を高めていたのだと気づいた。

つまり他人の評価ありきで自分の人生を生きていたのだ、最近の私は。

私の顔だった占い師はいつの間にか
占い師の弟子に代わっていた。

もっとしゅふさんは自分の人生をワガママに生きた方がいいと思います。

にこりと弟子は微笑んだ。 



ティンダーをインストールした。

デタラメな写真、デタラメな名前。

年齢も大嘘。


面白いくらいにマッチした。

でも私本人の写真じゃないんです、と
正直にいうと雲の子を散らすように男たちは去っていった。

本当の私は美人じゃないから。

落ち込んだ。

そんな時なぜかピンとくる男とマッチした。
初めて私から話しかけた。

「あなたとは何だか気が合う気がして。」

私の本当の名前を明かした。

そしてnoteにティンダー日記を書いてることを告げると、読んでみたいです、となる。

いつもの流れだ。

面白いですね、つい読んでしまいます、と男は感想を言った。

男は自分の正体を明かした。

「もし僕が、ふつうの会社員だけど
一万人のフォロワーを抱えるツイッターの主だったら?」

リンクが貼られてクリックした。

たしかに一万人のフォロワーがいる。
私が知り合った中で
今までで一番のインフルエンサーだ。

たしかに面白いです、これ…と言おうとした瞬間、マッチが解除された。


私はようやく分かり合える人と出会えた気がしたので呆気に取られた。


私はまた何かを失った。


そんな、白昼夢を見た。






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