「鬼太郎誕生ゲゲゲの謎」人物の解像度を上げたい

 山田が撮る写真全ての既視感が味わい深い、入村2度目の所感です。龍賀家の敷居を跨ぐシーン(入り口の祠から何者かが見ているシーンも?)が記者山田と水木のシンクロ構図であるのも良い。お母さんを沢城さんが演じることで、鬼太郎が母似の声という点も素敵すぎる。
 
●水木
「妖怪はそこかしこにいる、見ようとしなかっただけ」という事実を受け入れる早さ(のんのんばあの功績でもある)、受け入れてなお任務遂行のため「手を組もうぜ」とゲゲ郎に持ち掛けるメンタル、沙代を助けられなかった悲痛から「ゲゲ郎の妻を助けよう」に切り替える早さが、水木の強さの一つかもしれない。時麿の日記を「持って帰れば任務完了」と言いながらも、世に出すまいと破るところ、記憶をなくした状態で鬼太郎誕生を目撃し「化け物は殺めたほうが世のため」という考えが過るところに通底する正義感のような部分を感じた。
 時弥に日本の未来は明るいと語ったことを、おためごかし(自分の利益のため)と言われて怒るのは、半分図星でもあるからか。自分を助けたゲゲ郎の「憐れみをかけた」に怒るのは、「しょうもない弱い生き物」と見られたと感じたからか。一言で表せない…。
 
●謎の少年
 時麿のことを「坊っちゃん」と呼んでいたので、時麿が小さい時からこの屋敷の下男としてウロチョロしていた? 「その辺にいる小間使い」として一族の意識の端っこにいて、成長しないことに気付かれていなかったのかも。ゲゲ郎の「ねずみの、今度は何を企んどる」だけで、以前から金儲け目当てで小狡い真似をしては失敗しているのを、ゲゲ郎が関わって助けたり、あるいはこらしめたりしたのでは、という関係性が見える。
 
●克典
 恐らく村と東京の工場とを頻繁に行き来し、水木たち営業と会うときは工場か酒の席。沙代や時弥に東京の話を聞かせていたのだろうなぁ。沙代が実子でないことを克典は知っていたか?「変な儀式をしていた」レベルの認識だったので知らないかもしれない。
 川上選手の二千本安打達成は1956年5月31日なのでやや最新情報のよう。白黒テレビが1953年発売だけど、オールドパーのシーンで克典の背景にテレビあったかな…?
 
●沙代嬢
 最初の「助けてください」は、本当の懇願というよりは「この村醜いでしょう」みたいな顔に見えた。夕暮れバルコニーでは、水木がビジネスで来ていることも、大人として一線引いていることも分かっているけれども、鼻緒を結んでくれた水木の優しさ、余所者(ゲゲ郎)の斬首を止めた人の良さを見抜いて、約束で縛った印象。
 水木の中では「犯されて妖怪に取り憑かれ凶行に及んだ、本当は夢見がちで清楚な少女」なのかもしれないけど、水木が思うよりずっと大人に近い感情の持ち主だ(パンフの「水木の記憶に残ろうとする復讐」が忘れられない…)。「少しはしたなかったですね」は、乙米や丙江的な発想からすれば「男に気に入られる素振りを知っている龍賀の女」だし、好きな男には美しいところを見てもらいたい恋心ともとれるし、すごく複雑だと思う。
 
●時弥
 優しく聡く純真で好奇心旺盛。近親XXゆえの病弱か。ゲゲ郎と水木の仲裁を見るに大人の喧嘩に慣れている。病床の「助けてお祖父様」は、今まさに祖父が体を乗っ取らんと邂逅しているところなのか、「助けて(やめて)お祖父様」なのか、どっちだ…。
 
●孝三
 鬼太郎母を開放したいと思うに至った物語を知りたい! 「記憶にない想い人」とは…裏鬼道衆の狂骨に心を奪われたことを指す?
 
●時貞
 全ての元凶にして醜悪の権化。そもそもの死因は、外法の代償? 時弥に乗り換える途中? 乙米も「私たちの悲しみが分かるのか!」と憤っていたので、何も知らせていなさそう。
 ラスボスとして登場したときの、軽い口調に意外性があった。厳格で重厚な悪役にすることも可能だったと思うけど、悪辣な所業の割に異様なコミカルさというか。自称薬学の天才らしいので、自らの興味の探求の為ならどれだけ他の命を粗末にしても気に留めない、子どものような残酷さを持ち続けてきた人物なのかなと。
 龍賀家がもともと神社の神職とのことだけど、裏鬼道衆を拾って手を組み始めたのは時貞なんだろうか。もっと先代なんだろうか。
 
●思い違いしてたこと
・水木は列車で咳する少女を気にせず喫煙 →気にしている
・村の入口の祠が大樹の根本にある →林の大岩の上
・金歯を入れて酒を飲んでいたのは水木の父の親戚 →戦争を指揮した政府上層部(水木の中の金持ち、強者のイメージ、モチーフ)
 
●次回もっと意識して見たいこと
・龍哭のタイミング
・「憐れみをかけた」に水木が怒る意味
・隠れ妖怪(離れの宿泊部屋、長田初登場時の屋根、ラスト鳥居)
・(時麿に時貞が?&)沙代に狂骨が憑いたタイミング
・穴ぐらの底に時貞の死骸、巨大な写真が祀られていた意味
 

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