木蓮

三食にアイスを食べても大丈夫な、二十一歳の大学生。三月生まれにちなんで木蓮。

木蓮

三食にアイスを食べても大丈夫な、二十一歳の大学生。三月生まれにちなんで木蓮。

最近の記事

この残り [詩]

葩を一枚いちまい取り払うように 私の服も脱がせてちょうだい 葉や蕊も残らず千切ってしまうように 私から指環や耳飾りを奪ってちょうだい 残ったのは茎と香りだけ 一輪の花だったものを あなたは愛せるかしら

    • ゆく蝶[小品]

       私が気味悪く感じるもののひとつに蝶が挙げられる。あの綺麗な羽を持つ、虫である。そんな蝶が時々は恐れの対象でもあった。  蝶は確かに美しいし、ひらり軽やかに舞う姿は見ていて和まされもするから、もともと虫が苦手な私でも例外的に好んでいた。  そんな蝶に不気味さを覚え始めたのは、三年前のことだった。自転車で公園前の道を走っていると、どこからか紋白蝶がやって来て、回る車輪の横を飛び続けた。蝶と並走してるようで楽しさを感じていたが、ふとした瞬間、蝶が車輪の中へ自ら飛び込んだ。あっ

      • 赤い胸像 [怪奇小品]

         平生、町中の一軒に住んでいる私たち一家には、夏のひと月ふた月を、母方の祖父母がかつて暮らしていた田舎の洋館で過ごすという習わしがある。その田舎は谷底の川に沿って家々が点在するような村で、住民のほとんどは川漁と畑作とで暮らしを紡ぐ老人ばかり、旧来の慎ましい生活からか大方が信心深く、悪人は長生きせぬという句が戒めとして語られるほどであったが、実際その句を皆が体しているからだろう、沙汰という沙汰が起こらない長閑な土地柄が留められていた。祖父母はすでに他界していたが、残された洋館は

        • バルコニーから [詩]

          わたしのお家の二かいには ちいさなバルコニーが ひとつあって お庭にむかって つきでています 二かいから目ぐすり っていう言葉を さいきん がっこうで 学びましたので バルコニーから 目ぐすりをおとしてみたら やめなさい って お母さんにおこられました だから べつのものを おとすことにしました ある日は しゃぼん玉 ぷわぷわ とんでいくから お庭におちませんでした ある日は パンくず ちゅんちゅん とんできてね お庭がにぎやかになりました ある日は はなびら ひら

        この残り [詩]

          花開く [詩]

          美しいねって言わないで 私はまだ開きたくないの 開くかどうかもわからない 蕾のままで 枯れてゆくのかもしれない もし私を美しく開かせたいなら 甘い水なんかではなく 綺麗な水だけを注いでね でも芯だけには触れさせないわ

          花開く [詩]

          ひと花 [詩]

          死にたいとは 思っていない 死のうとも 思わない ただ 死んでしまっても構わないとは 思っている わたくしは 向日葵が好き けれども 向日葵のように 真直には立てない 真直に目標を見続けることもない 朝顔の方が わたくしに似ているだろう あちらこちらへ つるを伸ばす どこへ向かうのやら おのれも知らない わたくしは 生きている あやふやでも ちゃらんぽらんでも わたくしは 生きている 自然と枯れるまでは 生きてゆくだろう

          ひと花 [詩]

          湯加減 [詩]

          ぬるま湯 それはわたくしの人生 熱湯につかる人もいれば 冷水につかる人もいる わたくしは ぬるま湯につかっている けっして いい塩梅の湯ではない

          湯加減 [詩]

          20という壁

           わたしはもうじき二十歳になります。十代最後である今の内に、心に思うことなどをここに記します。  毎年、誕生日を迎えるけれども、回数を重ねるごとに特別感が薄れてくるように感じます。  小学生のときは、家族みんなでホールケーキを分け合って食べていました。自分が生まれた日とだけあって、自然と嬉しさが湧き立ってくるので、その日中はずっとるんるんとしていました。次の誕生日が待ち遠しいとさえ思っていました。  しかしここ数年は、誕生日をあまり気にするようなことがなく、気づけばひとつ歳

          20という壁

          わたしは、たまご

           十二月に入りまして、赤や黄などに染まっていた木々のすっかり落葉し終えた寒々しい景色が見られ、空気もひんやりと冷たくなりますと、もう「冬」になったのだと感じられるものです。  まだまだ冬の初め、厳しいとまではいえない寒さではありますものの、我が身にとても徹えます。年を重ねるごとに、 寒さに対して弱くなっているような気もいたします。まだ十九でありますけれども……。  朝方はとくに気温が下がります。ほんのすこし空いた窓からの風すらも嫌で、起きるということが心底辛く思われるよう

          わたしは、たまご

          小さな虫たちへ

           家の中で虫が現れると、すぐに逃げ出して、家族に助けを求めてしまいます。  そんな虫嫌いのわたし。 「虫なんて滅んじゃえ」 なんて思ったことが何度もあります。 でも、わたしの大好きなハチミツはハチたちがいなければ作れませんし、 虫媒花、虫たちのおかげで実る作物だってあります。なので、わたしのなかで虫たちは、嫌いが八分、許容が二分といったところでしょうか。  それでも、どうしても許せないのが、コバエや蚊などの小さな虫。  大きな虫だってもちろん嫌なのですが、小さな虫には忌々

          小さな虫たちへ

          待つのもまた一興

          一人部屋になってから、 居心地のよさを求めて インテリアにも気を遣いはじめました。 どこまですてきにできるかな? と、ワクワクで心を弾ませながら、 壁には絵を飾ったり、 ガーラントを吊り下げたり。 そして、お花も生けるように なりました。 花瓶を置くために、 一階にあった花台を 三階まで持ってきたのですが、 あまり使っていなかったから、 埃にまみれてちょっと白い😰 アルコールティッシュで 念入りに拭いて、拭いて、拭いて……。 もとの焦茶色の肌が現れました。 使ったティ

          待つのもまた一興

          切り離されたベッド

          初めてご覧になった方も そうでない方も、 こんにちは。 今回は、わたしの家での ちょっとした変化について 語ってゆきます。 前回で記した通り、 去年、わたしは大学生となりました。 高校を卒業するとともに、 一人暮らしを始める方も中には いらっしゃることでしょう。 わたしの友達にもいます。 でも、わたしにはそんな勇気もなく。 むしろ、このときにしてようやく 一人部屋をいただきました。 それまでは小さな部屋を母とふたりで。 寝るときには、二段ベッドの上段を母が、 下段を

          切り離されたベッド

          「形にしたい」

          はじめまして。木蓮(もくれん)といいます。 数あるものの中から、こちらにお目通しいただきましてありがとうございます。 四月。 大学に入り、一年が過ぎました。 二回生とはなったものの、まだ気持ちの上でも、暮らしの上でも、前と変わらず……。 でも、せっかくの節目だから新しいことをしたい。 「あっ、ブログなんてどうかな?」 そんな思いつきからnoteを始めました。 昔から本はよく読みますが、小説よりかはエッセーのほうを好んでいました。 自分と異なった、作者の暮らしや思想が、 文

          「形にしたい」