愚か者

日々の思ったこと、考えたことを綴りながら自己を理解し、他人とどう向き合い、どう生きていくかをテーマにしています。

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最近の記事

読書感想文【こころ】夏目漱石

忙しさにかまけ、1か月以上読書から遠のいていた。 寝る前にちまちまと読み進めてはいたものの、なかなか進まず…ようやく読み終わった。 中学校のころだったか高校のころだったかに教科書で読んだことは覚えているが、細かい内容は覚えていない。 今30代も半ばを超えてから読むと、当時はどんな読み方をしていたか覚えてはいないものの、「浅く」読んでいたと思われる。 (そもそも当時は全文載っていたわけではないので仕方ないが…) とはいえ、「K」はともかく「先生」が死ぬ理由が、この年になっ

    • 読書感想文【銃】中村文則

      正直な感想を書くと、読んでいた当初は作者の物語に込めた「明治時代初期頃や、戦前くらいの純文学的な文体や物語の構成への憧れ」的な雰囲気をむず痒く感じながら読んでいた。 というのも、あらすじだけを見て作者は「現代版金閣寺」を書きたいのかな?と先入観を持って読み始めてしまったのだ。 何かに倒錯していく様や、その最中の心理描写が細かく書かれ、物語がすすむにつれ主人公の持つ背景や銃を向ける対象がエスカレートしていくのは読んでいて「ごもっとも」な感じはあった。 「銃」にも一緒に収録

      • 読書感想文【ボッコちゃん】星 新一

        道尾秀介の「水の柩」を読むと書いてからすでに約5か月。 忙しさにかまけ、競馬ゲームにかまけ、ようやく第6次くらいの読書ブームがひたひたと私に押し寄せている。 くそが付く程忙しい中での現実逃避的な読書だと自覚しながらも、どうせ読んだなら感想の一つでももう一度書いてみようと思い書くことにした。 感想文の構成すら忘れてしまったので、気に入った短編を羅列・感想を書いていきます。 ・印象的だった話1.「ボッコちゃん」 現代で言うなら、精巧なマネキンに異性に思わせぶり風な返答をす

        • 読書感想文【TUGUMI】吉本ばなな

          さらっと読めるけど、特に感想らしい感想は思い浮かばない。 一つ上げるとするならば、故郷を失っていく若者の過程がよくわかる。 私は田舎に生まれて、ちょっと都会に出て、また田舎に戻ってきた。 田舎といっても「クソ」が付く程の田舎ではないが、今日では東京以外は全部田舎という風潮がある。 その境遇から生き急いで色んな経験や知識を吸収し、捻くれているつぐみの方が、ある種都会的で、語り手となる主人公の方が、芋っぽい感じはするものの、つぐみとの唯一の理解者であるという図式だった。 あ

          読書感想文【太陽の季節」石原慎太郎

          前回の読書感想文からだいぶ時間が空いてしまった。 忙しかったのもあるが、読みにくかったのもある。 表題の太陽の季節と灰色の教室まで読んで、一旦途中下車することにした。 まず2つは同じような話であり、戦後の朝鮮戦争での特需を迎えた後の金持ちのボンボンの自己喪失を描きながら、同時にその時代特有の異性関係を持ち、共に「子供」の喪失を迎えるという最後になっている。 なぜ途中で投げ出してしまったのか。 少し考えてみたが、例えば限りなく透明に近いブルーの様に「薬に狂っている」という免

          読書感想文【太陽の季節」石原慎太郎

          読書感想文【号泣する準備はできていた】江國香織

          女性は、現実的で実践的な世界に生きてるのかなぁと思った作品だった。 今日はもう酔っているので、細かく書けないが、自分なりに感想を纏めたいと思う。 男女の性差に依る超えられない感覚の違いをまざまざと見せつけられたという感じがする。 女性は感覚的な部分に優れて、恐らく直感的に中心へ近づきやすい能力を持っていて、男性は理屈を通して中心に近づいていくのだろう。 見た目では判断しにくいかもしれないが、男の媚態(あえて媚びていると書くが)には、どこか女性に対して自分なりに論理的に近寄

          読書感想文【号泣する準備はできていた】江國香織

          読書感想文【星の子】今村夏子

          ここで終わるか!という第一印象だった。 ちーちゃんの人生は、良いも悪いもここからが山場を迎えるはずだろうに… 巻末の今村夏子さんと小川洋子さんとの対談の中で、編集者によってラストが書き換わったということが語られている。含みを持たせるラストに「わざと」したのだという。 とは言え最初に今村夏子さんが書こうとしたラストは、海路と昇子が出てきて…というものだったとのことで、不穏な未来へ向かって行くはずだったのは間違いない。 巻末で小川洋子さんは「星の子」には「虐待」という暴力が

          読書感想文【星の子】今村夏子

          読書感想文【クラインの壺】岡島二人

          1989年にこんな発想があったなんて、ミステリーはやっぱり面白い。 ここ数年リアル志向!没入型!といった触れ込みのVRゲームが出てきたが、結局その内容の陳腐さによってブームは過ぎ去っている。 小説を読んでいて思い浮かんだのは、「インセプション」という映画だった。(2010年) インセプションも元を辿れば胡蝶の夢とか、メビウスの輪という元ネタがあるわけだが、「クラインの壺」ではそれらを上手く当時の時代背景に合わせてセンセーショナルな作品に仕上がっている。 どうやらクライン

          読書感想文【クラインの壺】岡島二人

          読書感想文【海と毒薬】遠藤周作

          勝呂はどう判断し、どう生きるべきだったのか… 舞台は第二次世界大戦中の九州で、大学内での権力争いを続ける医者や、各々に事情を持った看護婦たちは、戦争を背中のすぐ後ろに感じながらも、どこか無関心で自分には関係ないもののように過ごしている。 この物語において、人間らしさを持った人物は、阿部ミツとヒルダくらいである。この人物たちが持つ共通の特徴は、「信仰」があることである。 信心の差は在れど、精神的拠り所のある人たちであるが、海と毒薬の世界においては、その信仰は何の価値もない。

          読書感想文【海と毒薬】遠藤周作

          読書感想文【猟銃・闘牛】井上靖

          どう感想を書いていいものか… なんとなく詩的な雰囲気もありつつ、主人公を取り巻く人間たちとの関係を中心に孤独な男を描いている。。 猟銃では、13年に及ぶ不倫をしていた男が主人公。(3通の女性の手紙によって語られるが) 闘牛では、戦後の混乱期に新聞社に勤めながら興行をするサラリーマンであり、またもや不倫をしながら、ニヒルな男が主人公になっており、比良のシャクナゲでは、老いた老学徒が主人公となっている。 どの主人公も、家族を中心とした家庭生活とは距離がある人間ばかりで、では

          読書感想文【猟銃・闘牛】井上靖

          読書感想文【天使の囀り】貴志祐介

          好みのど真ん中を、時速160キロの豪球がぶち抜いていった物語だった。 というか、自分の好みを認識させてくれた作品だった。 謎解きはディナーのあとで読んだという理由もあっただろうか。 あっさり風味な作品を読んだ後だけに、「天使の囀り」の濃厚で、サブカル的で、懐かしく、読まされる作品は一層眩しく見えた。 発表された時代としては、私が子供時代を過ごした1998年で、当時の流行をふんだんに取り入れた、作品と言えばそうなのだが、現在でも色褪せない納得感がある。 ホラー映画。ホラー

          読書感想文【天使の囀り】貴志祐介

          読書感想文【謎解きはディナーのあとで】東川篤哉

          感想らしき感想は無い。 ネチネチ書いても心がすさむので、自分がミステリー作品に求めていることを書いてみようと思う。 ・私にとってのミステリーの入口 自分のミステリーの入口は、思い起こす限りドラマ版金田一少年の事件簿(堂本剛版)だった。 夜九時に親の許しを得て、見ていた小学生時代の自分に強烈な印象を残した。「怪人・伝承・グロさ・粘っこい動機」が強く印象に残り、もはや推理になど目は向いていなかった。解こうとすら考えず、推理はドラマの二次的な産物であった。 そこから、金田一

          読書感想文【謎解きはディナーのあとで】東川篤哉

          読書感想文【砂の女】安部公房

          …おーん。 何と表現してすればいいのか…俯瞰的に見れば作中の「砂の世界」と今「私が生きている世界」は同じ世界だというのは感じる。 現在の生活に不満があり、自分だけの世界に生きようと飛び出した結果、そこもまた不満のある世界だった。そこから抜け出そうと藻掻き、最後には抜け出す手立てを手するものの、その社会に執着する理由を見つけて留まる。 これを自由への無限地獄と捉えるか、はたまた人間の本性と見做すのか。 物語の奥行が深くて、正に砂に飲まれていくような気がする。 物語当初は、

          読書感想文【砂の女】安部公房

          読書感想文【くたばれPTA】筒井康隆

          現代において、筒井康隆先生の作品群を新鮮な気持ちで読むことは結構難しい。様々な種類の短編があり、どれも発表された時代を考えると、当時としてはすごいアイデアであり、未来予想の天才だったのだろう。 筒井康隆先生の短編から着想を得て作られていった他の作者の作品を目にしてきた世代からすると、どの短編もどこかで聞いたことのある設定に溢れている。(寧ろ元祖なのに…) といった感じで、もはや古典教養の域にまで達している。(誉め言葉) その中でも面白かった作品を幾つかピックアップしてい

          読書感想文【くたばれPTA】筒井康隆

          読書感想文【苦役列車】西村賢太

          貫太、いや西村賢太先生の大ファンになってしまった。 カミュの異邦人を読んだ後だけに、そのはねっかえりか、笑い通しで読み終えた。 自身の小物感をしっかりと自覚しながらも、抗えない自分の女性への衝動・名誉欲・食い物や酒への衝動を抑えられず、暴言・僻み妬みを振りまき、最後には濡れた犬の様に反省する。延々と負のループを繰り返していく自身の生涯をありのままに描き切った、「THE私小説」の金字塔という印象を持った。 展開はワンパターンで、山も谷もあったものではないのだが、どこか水戸黄

          読書感想文【苦役列車】西村賢太

          読書感想文【異邦人】カミュ

          主人公ムルソーに非常に憧れに近い感覚を感じてしまった。 「しまった」というべきなのだろう。 ムルソーは世の中への積極的無関心の特徴を持っているというか、あくまで欲求に対して素直な生き方をしており、常に自然な姿勢で生きている。 殺人事件を起こしたことにより、ムルソーは斬首による死刑の判決を受けることとなる。その裁判の過程で、「大衆が作り出した道徳観」と「自然な感性で生きた私」との間の壁が浮き彫りになっていく。 ムルソーの言うべきことが無い。という一貫した態度からは 「言った

          読書感想文【異邦人】カミュ