どんな髪型になりたいですか

私の美容師さんは特別だ
とにかく話を聞いてくれる
私の言葉が要領を得ないと
別の角度でもう一度質問してくれる
どうしたいですか
どうなりたいですか
何に困っていますか、と

それで私は気付くのだ
探しても私の中に答えなんかない
自分がどうしたいか、
何に困っているか、なんて
自分でも真剣に考えたことがないということに
どっちでもいいのだろうか
いいや、そんなはずはない
きっと何か希望があったはずなのだ

他人に合わせる機能は
いつから人間(というか私)に備わったのだろう
いつでも合わせる準備をしている
希望など持たないように
面倒くさいからどうか良いように切ってください
ごちゃごちゃ言って伝わらないなら、
もう大丈夫です
わかる範囲でお願いできたら
知らぬ間に諦めている

私はしつこいくらいに繰り返される質問に答えて、思いも寄らない自分になる
それは隠されていたものだから、
いつも居心地が悪い
自我っていうのは
なんて疲れて、恥ずかしくて、気持ち悪いんだ
誰かが勝手に良いように
切ってくれた方が良かったような気がしてくる
もうやめてしまいたくなる
向き合うのは疲れる
自分の愚かさや虚栄心、自分を疎かにする自分に

でも、新しい私はとても素敵だ
少なくとも前の私よりずっといい
だって私が選んだものだから
顔を上げて歩くんだ

どうしたいか、それがわかっていれば、
願いは半分叶ったも同然なのだと思う
望んだ私になることを諦めない
今日も私は美容院に行く
人任せにせずに、新しい自分になることを
楽しみにしている










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