最高のプレゼント
『ママ!調子はどう?』
『ゆう!ありがとう。今日は調子いいのよ』
『よかった!ママ、もうすぐクリスマスだよ。こんどのクリスマスにはおうちに帰れるの?』
『そうねぇ、先生にいいよって言ってもらえたらおうちに帰れるわ』
ママは病気なんだ。
ぼくが3さいの時から、病院ですごしたり、おうちに帰ってきたり、その繰り返し。
『パパ、こんどのクリスマスまでにはママぜったい帰ってこれるよね?』
『そうだね、ゆうがいい子にしてみんなと仲良くしてたらきっと帰れるよ』
『うん』
『ただいま!しっぽ!』
『にゃ〜』
しっぽはぼくが生まれたときに、ぼくのおうちの近くで迷子になってたねこなんだ。
それからずーっとぼくといっしょにいるんだ。
『ねぇ、しっぽ。きょうのママはね、元気そうだったよ。だから、きっと今度のクリスマスはみんなで一緒にすごせるよ!ぼくもいい子にしてるからね!』
『にゃ〜』
『おはよう、ゆう』
『おはよう、パパ』
『ゆう、あのな、ママ、やっぱりおうちに帰れそうにないんだ。あんまり調子がよくないから、病院の先生にもうすこしお泊まりしなさいっていわれたんだって。だから、ゆう…』
『いやだ!!なんで?なんでなの?ママと過ごせないクリスマスもう3回目だよ!』
『ゆう。仕方ないんだよ。ママだっておうちに帰ってゆうと一緒にお祝いしたいんだ。ゆうも6さいなんだから少しは分かってくれないかな?あ、そうだ!ゆう、ママへクリスマスプレゼント送ろうか?』
『いい!ぼくは、パパとママとしっぽとみんなで一緒にクリスマス過ごしたいもん!!』
『ゆう!』
『にゃ〜』
『しっぽ、来ないで!勝手にぼくの部屋に入らないで!ママ帰ってこれないんだよ!嫌だよ!しっぽ、なんとかしてよ!ママが帰って来れるようにしてよ!!』
『にゃー!!』
『ゆう!しっぽが慌てて外に、かけ出しちゃったぞ!』
『知らない!』
夜になってもしっぽは帰ってこない。
『ゆう、もう遅いから寝なさい』
『しっぽは?まだ帰ってこないの?』
『帰ってくるよ。しっぽ、お腹すかして帰ってくるからパパが起きて待ってるから大丈夫』
『うん、、おやすみなさい』
しっぽは帰って来なかった。
ぼくがしっぽにきつい言い方しちゃったからだ。
それからもう何日過ぎたかな。しっぽ、どこなの?
『ゆう、おはよう!』
またママのいない、クリスマス。
今日は特別に幼稚園でクリスマスパーティー。
幼稚園にいても友達と遊んでもなんだか楽しくない。
『ゆう、迎えにきたよ、パパと帰ろう』
『ゆう、少し急ぐか?待ってるから』
『え?なに?』
『ただいま!』
『パパ?誰もいないよ』
『行ってみな、ゆう』
ガチャ。
『お帰りなさい、ゆう』
『ママ?…ママ!!』
ぼくは思い切りママに抱きついた。
『ママ大丈夫なの?先生いいよって言ってくれたの?』
『うん、先生がね、びっくりしてた。こんなに元気になるなんてって。これからは、おうちから病院に通うだけでいいんだって』
『ほんとに??やったー!』
『ゆう、こっちに来てごらん』
『え?なに?』
『あ!!しっぽ!!帰ってきてくれたの?パパなんだかしっぽ元気ない。痩せてる』
『ママを病院に迎えに行って帰って来たら、しっぽが玄関の前で倒れてたんだ。パパ急いでしっぽを病院に連れてったんだ。しっぽ何も食べてなかったみたいなんだ』
『ぼくのせいだね、ごめんね、しっぽ』
『大丈夫だよ。先生が少しずつご飯食べさせて温かくして休ませてあげれば大丈夫って言ってたから』
『ゆう、鍵しっぽのねこさんは幸せを運ぶんだって。ママね思ったの。しっぽはきっと、ママがおうちに帰れるようにって、パパとゆうとママとしっぽ、みんなで一緒に過ごせるよう神様にお願いしてくれてたんだと思うの』
『しっぽが幸せ運んでくれたの?』
『そうよ』
『ゆう、ママ、ケーキみんなで食べよう!ゆう、サンタさんからまだプレゼント届いてないから明日届くようお願いしよう』
『プレゼントはもらったよ!!』
『ん?』
『だって!ママが帰って来たんだもん!しっぽも!ぼくの願いはママがおうちに帰れること!しっぽが帰って来てくれること!どっちも帰って来てくれた!!』
『パパ、ママ、ぼくにはこれがプレゼントなんだよ!1番の最高のプレゼント!!ありがとう!』
『しっぽもありがとう!』
みんな大好き!!最高のクリスマスプレゼントをありがとう!!
おしまい
【作: とんたん 絵: 丸井もち】
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