坦懐

何でも書く。 でもネタはない。 本を読むのは苦手なのに、文を書くのは好きな中途半端なヤ…

坦懐

何でも書く。 でもネタはない。 本を読むのは苦手なのに、文を書くのは好きな中途半端なヤツです。

最近の記事

無季・静む

同じ星に生まれて、同じ時に生きて、同じ夜に死ねる、運命の確率とはどれほどか。 涙をちりばめた宝石のような季節は、どこか冴えている。 感激したときに思わず我を忘れること、ただ奇跡の景色に浸かりたいという、魂の安堵を求めているのかもしれない。 私たちが憶えた時空の儚さもまた、夢の中に置きざられて天へ召された。 慧眼の者が回り道をすれば気づきも多く、無智の者が早道をすれば厄災も伴う。 悩みといえば、体か脳か心かのどの寿命が先に尽きるのだろう。 呪いに善悪はなく、幸を沁み、苦を

    • 握月の道

      光がよろめいて あなたの影になった 夢がよろめいて あなたの過去になった 喜びはいつか 悲しみはいつか 朝を静かにする 風は荒れて 空は凍え 街を塞ぎこむ 手を伸ばした先の 枯れはぐれ 握りしめた月の 脆い音 走らない 走れない 走らなかった 帰り道 愛がくたびれて あなたの胸に落ちた 人がくたびれて あなたの横で待った 喜びはいつも 悲しみはいつも 夜を掻きまわす 髪が褪せて 目が震えて 時を押し殺す 手を伸ばした先の 甘い蛇 掬いあげた殻の 音は死ぬ 叫ばない 叫べない

      • フレッシュに棺桶

        学びを否定したとき、人は腐り始める。 僕らはいつも何かに騙されて生きている。 その騙しを解くのが、学びの役割だろう。 騙された奴は、大抵あとになってから学ぶ。 では騙す奴には、学びがあるのだろうか。 無論あるだろう。だが、その学びは残酷な運命を招く。 騙す、とは相手の学びを阻害することだ。 ああ、憐れな。同時に自分の学びも阻害することになる。 騙すことに落ち着いている奴の学びは、つまり成長しない。 時が経つにつれ、腐ってゆく。 残念だがこの腐りは、他者から止めるのは不可能だ

        • なぜ生き、なぜ学ぷ

          何のために学ぶのか。 何のために生きるのか。 この世の構造に目的はなく、形容の意識の構造にただ目的が在るならば、この答えは判明している。 無知であれば、人はどうなるか。 死んでいれば、人はどうなるか。 考えて、おのずと道は現れる。 騙されないために、学ぶ。 気づいてもらうために、生きる。 人の認知に映る。生命の芽吹きを感じる。 目的は私たちの中にあり、また、他人の目的を認める。意識を知り、命を知り、このちっぽけな私を抱き締める。 何のために生きるのか。 何のために寄り添うのか

        無季・静む

          ハナクソはきれいなのか

          はなくそはきたない。 みみくそもきたない。 ふけもあかもあせもきたない。 ぜんぶきたない。 こころもきたない。 あたまもきたない。 からだもきたない。 どこがきれいなのか。 わたしがきれいなら、わたしのはなくそはきれいなのか。 くにがきれいなら、こくみんはきれいなのか。 ちきゅうがきれいなら、ぜんせかいはきれいなのか。 うちゅうがきれいなら、ちきゅうはきれいなのか。 なら、うちゅうがきれいなら、わたしのはなくそはきれいなのか。 わからない。きたないかもしれない。 ただ、わたし

          ハナクソはきれいなのか

          論理のない論理、と目的

          部屋の中にいても、秋が近くなったって感じるほど、独特の寒気がする。 どうでもいいけど最近、論理は論理性の通じない部分も含めて、筋が通ってなければならないと思った。 簡単に言うと、構造的なものと感覚的なものを二つ、はっきりと分けて考えないと、どうしても矛盾が発生するし、分けたら矛盾も起こらない。 でもこのはっきりと分けるって言うのは、感覚的なものを無しにするってことじゃなくて、感覚的なものを大きな枠に入れて、論理の勘定に含めるってこと。 例えば、楚の商人の矛と盾の話だって、あれ

          論理のない論理、と目的

          おけぼり輝

          ふらり花びき 交差かえされ 爪弾き ガラス玉の赤い赤い 夕べの空から 濃い桜 ウィスキー ぼつぼつ青い線の顔 ほどろつ雨は 孤舟にごり 太陽を廻る 障子の先 打つ雪 かげろう飛び火の灰埃 散っれ散ってしまれば 銀杏血の道 縫うまを告ぐ鳥ああシ

          おけぼり輝

          輪廻逆流

          冴えた鼓動と夜雲の光 降りそそぐ熱の息 風鈴ひとつ 落ち葉枯れ葉を拾うこと 一人一疋 蝉の殻 過ぎゆく時に別れも言えず 振りかえり振りかえり 人生裁判 笑う目と歯の歪みのみ 燃える大海に 向けていた 天の川には無常の唄と 泉の泡のこげた銀色 行きつ戻りつ行方も知れず ながす涙の 味がない あなたは独り吹雪の 激しい今に消えたら 必ず帰ると言った 散る花の散る 吹雪の中 喜びも悲しみも虚を衝けば 思い出さえ 言葉に溶けて 赤肌を 照らすのは 夏夜 稲妻

          輪廻逆流

          絶望者

          今、5周目だ。 同じ悩みが、また帰ってきた。 解決しないまま放置するのもツラいし、半端な答えを出したところで、どうせもっとツラくなる。 寝て忘れろ、他のことに集中すれば悩みなんか消える、なんてセリフ、もう戯言にしか聞こえない。 このちっぽけな命をかかえた憂鬱の底。 地獄でも楽園でもない現実というものが、鮮明に見えちゃって、これ以上の絶望はない。 そしたらもう何でもいいや。 水を油に変えてやろう。楽観的に、現実的に、しょーもなく死んでやろう。 ただ、幸せを信じることが、人間

          絶望者

          上昇落下

          人間なんて結局、皮を剥げば人間。 腹が空いているんです。眠れてないんです。 文明ももう随分と捗りました。 しかし未だ、探しものが見つからないようで。 欲に底なし。夢に天井なし。 こんな世に放り出されて、一体いくら経ったでしょう。 もし晴れて虹がかかれば、見ますか。 わたしはいいえ、道に金が落ちてないか探します。 街に自由の看板を求め、人に手頃な夢を訊く。 そして時々、密かに笑みを噛みしめる。 普通な奴。迷惑な奴。できる奴。 人間臭く生きている。もげ。

          上昇落下

          見上げれば、鳥がとぶ

          光させば、影を知る 夢みれば、泥を掻く 吉あれば、凶に惑う 水は高きに流れず、仙人のみ雲におり 蟲を食べ、くそを吐く 強ければ、弱きを拒み 踊る毒針、夕波へ、寄せるなかれ 忘れてくれるだろうか 火を囲んだ、血を紡いだ ひとしきり降る雨もすぎ、ふかい緑が 空をおおって育つ、自然の空に 何もなく、愛していた

          見上げれば、鳥がとぶ

          酷暑の朝

          一晩練り殺した眼球は、潰したいほど腫れた。 不自然な姿勢で寝ていたからか、右の鼻がつまっている。肩も痛い。 夏の朝は、なんだか粘っこくて気持ち悪い。 クーラーの響く部屋で、すやすや昼寝でも取れたら心地いいだろうな。 だるい起き抜けに、酔っぱらったみたくふらふらと洗面所へ向かう。 顔を洗ってようやく、死臭を拭って、よみがえる気分だ。 爽やかな風でも一つ、吹き殴ってこないか。

          酷暑の朝

          渇熱

          瞼に張った薄い涙がもうすぐ乾く。 蒸せた車内にアナウンスが流れた。 唇は噛んでぼろぼろに崩れている。 シャツの中から立ち昇る汗の臭い。 ドアに肩を寄せ、俯いた。眠い。 電車を降り、まみれた光を吸う。 改札を過ぎ、ぬくい夜の風を知る。 すこんと黒に抜けた空が悪魔の顔。 青く濁る裏通りでふと月を見上げた。 我慢していた下痢が一層ひどくなった。 眉根を曲げて、一歩次を踏みしめる。 家は、あの角この角を越えた先。 幸せよ、乾いた後の涙が溢れたら、虚しい祈りが届

          人は皆、厄介な戯れ

          夏の少ない蔭にもたれかかって、優しい波に拐われたい気分だ。 多分、どこか遠く、楽園のような墓地で静かに眠りたいと思った。 心の罪も浄化される、そんな場所をずっと探して夢を見て。 床につきながら、夜を食い殺す。 朝になれば、獅子は目覚めるだろう。 憑物は落ち、やつれた頬も窪んだ目も、夏の強烈な陽で、ゴキブリみたいに身を潜める。 日が沈むにつれて、じわじわと黒い虫が湧き出てくる感触が、なんとも狂いそうになる。 部屋に充満するのは、すれた自分の死体の臭い。 澄んだ青磁の空のどこに

          人は皆、厄介な戯れ

          傷を飲む

          忘れかけてた私の故郷の波の音が、最近やけに騒がしくて、 歯を噛んだり、手首をつねったりして、誤魔化している。 久々に窓を開けて、季節の風を浴びようとしても、 カラフルなガスの充満した東京の夜に、星は見えない。 ひと雫ばかり垂れて、私の深い魂を靡かせてから、 重力に耐えきれず、闇に吸い込まれてしまう。 海も空も、黒、青、赤をめぐり、 そのまわりを明るい綿雲が飛び交っている。 自ら建てた檻で、生臭い吐息をついて、希望も絶望もなく、 一種の諦観をたずさえて、静かに寿命を削り

          傷を飲む

          なにかの擬音

          ごろごろごろ 大きな石が坂を転がってくる どたどたどた 誰かが廊下を忙しなく走る ばらばらばら 空中に投げ上げた数枚の紙が床に散らばる がりがりがり ネズミが天井裏を這いまわって、壁を齧る じんじんじん 視界がぼやけ、額の熱を左手で感じる 擬音は楽しい。 それが人による所も、面白い。

          なにかの擬音