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宮川の部屋

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YALLAH!の企画制作担当宮川のブログ。本気にしないで。X(Twitter)▶︎@miyakawa_yallah
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帰路

阿佐ヶ谷の駅前のカフェにいた。 身なりの汚い、見るからに厄介そうな老婆が青年2人に声をかける。 頑張りなさいよ、この前もいたでしょう? この辺は昔ね… 2人は我慢して笑顔で相槌を打つ。 相手するのはやめときなよ。 そんなに楽しませたら、ばあちゃんの相手いつまでもせないかんやん。 店内の誰しもがそう思った。 彼らはそうしなかった。 自分たちの職業に対する微かなプライドとその道を歩んできた先人たちへの尊敬が見えた気がした。 おばあちゃんの二の腕と喫茶店でもらえるウェットティッ

獣のように歌いながら、慌てずにスッと暮らしてます。

父のような人とは結婚すまいと思って生きてきた。 理由は簡単、辞書に載っている通りの九州男児だったからだ。 仕事では驚くほど律儀で細やかな気配りをしていた父は、その能力を家庭では1ミリも発揮しなかった。 全く近代的な価値観の夫婦であった両親のもとに生まれた娘は、それとは正反対の「問題を癇癪を起こさずに対話を持って、情ではなく合理的に折り合いをつけることで解決する」相手をパートナーに選んだはずだった。 ところが、である。 パートナーと食事に行った時、一口食べて「これはダメ」と

40歳の子豚、サバンナを行く

杉並区の公園で、まさか自分がネイマールになる日が来るとは思わなかった。 都会生まれの娘に鼻の穴を広げ切って披露した木登りで私に天罰が降った。 膝の軟骨と半月板をやられた。 軟骨に至っては1.5cmほどが折れて消えた。 私には半月板を縫い、骨を割って重心を変える手術とリハビリ生活が待っていた。 当初はリハビリなどそこそこに、さっさとおやつ仲間のばあちゃんたちに若さを見せつけて退院する予定だった。 しかし、全く退院出来る様子がない。リハビリが全く進まないのである。車椅子から

宮川的黒歴史懺悔帳

大道に学生時代のことを尋ねたら「ボーイッシュキャラでいわゆる女子の輪廻から遠い場所にいた為、誰とでも仲良く出来てた」とのこと。友達作りに困ったことがないらしく、まあ側から見たら充実したエピソードや思い出が多く「友達」「学校生活」の面においては、リア充な学生生活を送ったようで全く面白くな…いや、羨ましい。 私の学生時代は体育祭や文化祭、放課後の寄り道などとは全く無縁のものだった。 受験戦争とは恐ろしい。 私の頃は、今と違ってあまり誘惑が多くない時代ではあったけれど、終盤に

1人で子供を育てている人と付き合う時に知っておいて欲しいこと

唐突だが、私は「ステップファミリー」を形成している。ステップファミリーとは再婚や事実婚により、血縁のない親子関係や兄弟姉妹関係を含んだ家族の形態のこと。 うちの場合は、私がシングルマザーでパートナーと暮らしていると言うことになる。 ステップファミリーは難しい。 それを証明するように、一部では再婚者の離婚率は50%以上とも言われているそうで、初婚よりも圧倒的にその割合は高い。特に継親の負担は大きい。既に完成されている親子関係に入り込むことで、様々なコストが多大なり、継親が

「上等ってのはね、ハイヒールを履いても痛くならない足を持つことを言うのよ。それとね、足を痛めないハイヒールを買えるってことよ」

今から数十年前、私が義務教育を受けていた時代に「いじめ」と言うのは、あまり身近な言葉ではなかった気がする。 「いじめ」と称されるのは、カツアゲや暴力行為のような犯罪に適応される場合に使用されるくらいで「クラス全員から無視される」「悪意の篭った手紙をもらう」などと言うのはいじめの範疇に入っていなかった。むしろ「女の子では誰でも一回は経験するもの」くらいの通過儀礼としての認識しかなかったように思う。 私が標的になったのは中学2年生の秋だった。 皆グループの子は、可愛らしく、

夕方からところにより俄か雨

私は、この歳になっても、割と夢見がちな性格で思い込みの激しいところがある。幼い頃、NHKのアナウンサーが渋く張りのある声と弛まぬ息継ぎで 「夕方からところにより俄か雨です」 と言うと、きっとこの人は何か素敵なことを言っているのだろうと思っていた。 20年ほど経って、この話をタバコが命でバナナ柄の開襟シャツばっかり着ている友人M田に話したら、バナナを口に入れてモゴモゴさせながら「…生命保険のCMみたいな感覚だな」と言われて笑ってしまった。 M田は初めて会った時から私に冷

I love you.の使い方

よっぽど呆けて人生を生きてきたのだと思う。 私は大道に出会うまでFTMという認識や概念を37年間全く持たずに生きてきた。思い返してもFTMの人物に思い当たることがない。今から考えていると無意識にお会いしている可能性もあり、そら恐ろしい。 大道からカミングアウトを受けてから、多少ネットでFTMについて漁ったものの、あまりにも個人的過ぎたり、トランスの程度や年代で多くのバリエーションが出てしまい、結局、本人に尋ねることが一番と言う結論になり、参考にならなかったのですぐに止めて

私が生涯で出会った最もモテる人はとてもシャイな男の人だった。

ぶんちゃんは私の学生時代の知り合いの一人で、最も「人間にモテる人」である。どんな集団に入っても、高好感度を獲得するバランス感覚を持っていて、それに対してあまりコストを払わずに生きている奇跡的な存在。ぶんちゃんを見ていると正しくあろうと人格者になるよりも、見栄を張らず、正直で素直に生きていく方がよっぽど人に好かれると思い知らされる。 大学時代のぶんちゃんは建築学科なのに、芸大にでもいそうな雰囲気で、ちょっとだらしない格好をしており、誰かと目が合うとうはっ!と笑った後にちょっと

【宮川の部屋】はじめまして。

はじめに軽く自己紹介させて下さい。 宮川 アマゾネス(Amazoness Miyakawa)です。YALLAH!と言うドチャクソ緩いALLGENDER MIX SITE の企画制作を担当しています。 アラフォー子持ちのシス女性です。 共通点、一個ねぇなと言う方がほとんどかもしれません。 でも、出来れば最後まで読んで欲しいです。 私はYALLAH!に勤務する前は、LGBTQの知り合いは一人もいませんでした。 大道に道端でカミングアウトされた時はトランスジェンダーに関す

【宮川の部屋】乳首はおっぱいの目!

そう娘が発言した時、周囲にいた大人の全員が目を丸くしたのちに爆笑したため、娘はいい気になって、この文言を2回繰り返した。 私は・・・お前がちぎれるくらい吸ったからだろ・・・と言う気持ちを抑えながら「やめなさい」と言った。 突然、格言めいたことを子供が言い出すことは結構ある。 幼子が世の中を悟ったような表現をすることは生意気で、微笑ましくインパクトがありすぎる。他人の子の場合は盛大に笑えるのだが、自身の子がそうした場合、毎回周囲へのフォローに必死になり過ぎて、大抵その内容を忘