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パフェを食べに

数日前の夕方頃、知らない電話番号からSMSが届いた。友人のお母様という方から。やめてくれと思った。あらゆる想像をして、でも想像できることはいつも起こらないから、今回も大丈夫だと思って折り返した。訃報だった。

小学校からの友人。どこへ行っても、誰といても、何を食べても、どんな言葉を話してても、一秒後にはこの世を諦めたような顔をする人だった。友人は昔から心が満ちることがなかったんだと思う、主に親御さんが原因で。体への直接的なもの以外の暴力はすべて受けてしまった。

頑張って稼いだお金と、大学院へ行ける知性があっても、欲しいものが、ずっと手に入れられないようだった。明確に何かを成さなければ自分に価値を感じられないようで、他人にも自分にもものすごく厳しかった。真面目で、正しくて、間違いが許せなくて、未来のために努力ができて、話すときはいつでも点数を付けられてるみたいだった。
言葉選びの雑さとか、言葉遣いで包んだ本音まですぐ見透かされちゃうから、それが本当に疲れる。
でもだから私の中にはいつも友人の目があって、乱暴なことを言いそうになったり、他人の内面を決めつけそうになったとき、必ずブレーキをかけてくれた。

大切な友人だけど、優しい言葉をどれだけかけても心の表面をなぞってすべり落ちるだけだった。ここ数年はその潔癖な性格と、底のなさに疲れてしまって、しばらく距離を置いていた。大学院に進んだと聞いて安心した。人を外見で判断するような人がいない、言葉と知識の豊かな世界に身を置けば、いつかはなにかに救いを見出すかもしれないと思った。そういう場所を友人自身が選んで、行ったことがとても格好良かった。

結局、いろいろなものを知ることは、どうにもできない絶望が横たわっていると確信させるだけのことだったみたいだ。少なくとも友人の中では。この世のきれいで、やさしくて、あたたかいものの、なにも、真には友人に届かなかった。


初めて会ったときは小学生で、高校受験の時期は毎日顔を合わせていた。模試のために朝七時に塾に通って、休み時間は近くの川を散歩して、きついね〜と言い合った。

モデルをやりたいと言うので初めてポートレートを撮らせてもらった。今見てもよく撮れてると思う。

エイプリルフールの良くない嘘に加担させられた。

よくカラオケに行った。ボカロ縛りで曲を入れたらあんまり聴いてるのが被ってなくて、思ったより盛り上がらなくてウケた。

中学の帰り道、夕立が降ってきたけど二人とも傘を持ってなくて、仕方がないからバス通りを爆笑しながら走った。

肉体と、美しさと、内面と、社会と、生き死にと、アイドルについてたくさんたくさん話した。友人と何度も話した夜があるから、私は今自分の体を受け入れつつある。

あの息苦しい実家に何度か遊びに行った。
二段ベッドの上でニコニコ動画を見て、ちょっと昼寝をするつもりで夜まで寝っちゃったりした。
お泊りもした。すんごく居心地が悪かった。冷凍のものを電子レンジでどう温めるかでお母さんと揉めてた。あなたのお父さんもお母さんも殺せなくてごめんね。

葬式に真っ黒のフォーマルを着ていくような大人になっちゃってごめん。私がおしゃれをしたときは必ず褒めてくれて、あなたは白が似合う、天使だって言ってくれてありがとう。

本当は私も、白い服で会いに行きたかったけど、大人だから黒い服で行くね。もう大人になっちゃったんだようちら。


友人は、欲しいものが手に入らないとわかるまで、20数年もかかってしまった。あんな絶望のなかで本当によく生きた。お疲れ様。

魂や心があるならどこに宿ってるんだろうか。髪の毛か、救いを探して読んだ大量の本か、ネイルか、わからないけど、形があるならどうか撫でさせてほしい。

白いものや、甘くて可愛いものが好きだったので葬式のあとパフェを食べに来た。




はる、はる 天国のパフェは美味しいかい



パートナーのポケモンはマホイップだった。
友人が育てたポケモンはこれからどうするんだろう。野に放ったりできますか?ポケモンて

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