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【サブスクにない音楽 part 1】69/96と96/69 - Cornelius


『69/96』(1995年)はCorneliusの2ndアルバム。翌年発売された『96/69』(1996年)は、『69/96』のリミックスアルバムである。

まず『69/96』から。

フリッパーの名残がある、ザ・渋谷系の1stアルバムから、ヘッド博士の混沌のようなものが入り混じったような2作目は、実験的な要素が多く含まれている。歪んだエフェクトのかかったボーカルの曲からヘヴィなギターサウンドの曲、クラシックアレンジ、波の音とウクレレが印象的な曲、なんかムッシュかまやつが喋ってる曲、スクラッチがいっぱい鳴ってる曲と、とにかく要素が多い。遊び心満載。
小西康陽作詞の楽曲、ASA-CHANGのパーカッション、カヒミ・カリィのボーカル曲など、ゲストも結構豪華。

サイケデリックでコラージュっぽい歌詞カードもヘッド博士を感じる。それまでのオシャレで可愛らしい、渋谷系のポップな雰囲気を払拭しようとしていたのか、かなり大胆なイメージチェンジをしようとしていたようにも見える。

そんでもって、本編終了後のギミックが面白い。アルバムのラストを飾る15曲目の「World's End Humming Reprise (in Hawaii)」からの展開がとても良い。楽曲の中で流れる波の音は、ボーカルや楽器の音がフェイドアウトしても残り続け、そのまま68トラック目まで波の音が流れ続ける。
そんでもって69トラック目では隠しトラックである「World's End Humming」の別バージョンが流れ始め、曲のラストで全ての音が消える。歌詞と同じタイミングで消えるのすき。
ここで終わりかと思いきや、95トラックまで無音トラックが収録されており96トラックで2曲目の隠しトラックである「Welcome to the Jungle」が流れる。この隠しトラックが一番コラージュ楽曲感があり、ピチカート・ファイヴの「東京は夜の七時」や元相方の小沢健二と次回作でリミックスを手がけるスチャダラパーの「今夜はブギーバック」の一部がサンプリングされている。多分無断な気がする。
因みに、このアルバムが発表された同年にリリースされたスチャダラパーのリミックスアルバム『Cycle Hits 〜remix Best Collection〜』では、小山田圭吾名義で「今夜はブギーバック(smooth rap)」をリミックスしており、このリミックスで69/96で使用されたSEが使われている。サブスクでも聴ける唯一の69/96要素である。小沢健二のボーカルをそのまま小山田圭吾に置き換えた感じのリミックスで、これもまた良い感じ。

そんな中々な面白ギミックが入っているので、サブスクでこれを再現しようにも不可能な気がする。そもそもサンプリングで色々アウトな感じがするけども。

このアルバムの楽曲はシングルカットの仕方も中々に不思議な感じで、2曲目の「MOON WALK」はカセット、4曲目の「VOLUNTEERED APEMAN」は猿の顔をした形のレコードで販売された。その為、このアルバムからはCDでシングルカットされた曲は無い。奇抜。


そんなカオスなアルバムを豪華メンバーがさらに混沌とさせたのが、翌年発売された『96/69』である。
電気グルーヴの石野卓球砂原良徳(発売当時は在籍)、岡村靖幸、元Boredomsの山本精一率いる想い出波止場スチャダラパー、小説家でもありイラストレーターでもある中原昌也こと暴力温泉芸者、前作に引き続き今回はアレンジに参加している小西康陽と小山田圭吾の実父である三原さと志が参加する和田弘とマヒナスターズ、そしてX JAPANのhideが参加している。

元よりサンプリングマシマシだった楽曲に更にサンプリングを増えたり、本格的なテクノサウンドになったり、消費税反対とデモしたり、遊び心満載のラップが乗ったり、めちゃくちゃカッコいいhideがいたり、ハワイアン歌謡になったりと、それぞれの色がかなり濃く出た、自由なリミックスアルバムとなっている。

このアルバムでも前作同様ギミックがあり、11トラックから68トラックまでは波の音が収録されており、69トラックでは前述の「Welcome to the Jungle」のライブverが流れる。そこからまた95トラックまでは無音トラックが収録されており、96トラック目には、泥酔したおじさんが前作収録の「MOON WALK」を熱唱するという謎のトラックが収録されている。この間なんと69分。ここでも遊び心満載。


という2枚のアルバム。サブスクに入れられない要素が多すぎて、ここまで来るとしょうがないねという気持ちが先行する。

69/96』を買った時はブックオフの290円コーナーで発見したものを購入した。このアルバムは中古ショップでも比較的目にすることが多く、大体安いCDコーナーに置いてある。2種類くらいパッケージのデザインがあるが、音源の内容は変わらない。
サブスクには無いが、サブスクに加入するよりも安い値段で売られていることが多い。

一方、『96/69』は中々見かけることが少ない。リミックスアルバムということもあり、オリジナルアルバムよりも流通した枚数が少ないのでは無いだろうか。ただ、これもブックオフの290円コーナーで発見したものを購入した。これもサブスクに加入するよりも安い値段で売られている。

現在のCornelius、そして過去のフリッパーズギターからは想像出来ない作風だが、『69/96』の翌年にリリースされる名盤『FANASMA』に繋がる要素が多くある。

近くのブックオフとかに寄って、550円コーナーとか330円コーナーを彷徨いていれば多分見つけられると思います。結構面白いアルバムです。

では。





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