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私を構成する42枚 pt.3

続きました#私を構成する42枚の音楽について書いていきます。
今回はシングルも選んでるので6枚くらいやります。


11.YMO GO HOME! - Yellow Magic Orchestra(1999)

ジャケットデザインはテイ・トウワが担当。

坂本龍一、高橋幸宏、細野晴臣による音楽ユニット、イエロー・マジック・オーケストラの結成20周年を記念して発売された初の公式ベスト・アルバムである。このアルバムでの選曲・監修は細野晴臣で、ライナーノーツにも細野晴臣によるコメントが乗っている。
後に、坂本龍一、高橋幸宏が選曲をしたベストアルバムが発売された。

ベスト・アルバムという立ち位置なだけあって、1stからラストアルバムまでのYMOの名曲が収録されており、ほぼ全てのシングル曲とアルバムに収録された有名曲が多数収録されている。また、特別なミックスが施された楽曲やライブ音源などのレアトラックスも収録されており、コアなファンにとっても嬉しい。

一度は聴いたことのあるようなテクノポップな名曲から、YMO後期の薄暗く静かなエレクトロニカまで、幅広い曲調が楽しめるアルバムとなっている。

特に好きな曲

M12【Disc1】- 東風/TONG POO(SPECIAL DJ COPY)
原曲は1stアルバム『イエロー・マジック・オーケストラ』に収録されているが、このアルバムに収録された音源はアルバムとは異なったミックスがされたプロモ盤の音源である。作曲は坂本龍一。シンセの音や終盤の荒れ狂うピアノが好き。

M9【Disc2】KIMI NI MUNE KYUN / 君に、胸キュン。-浮気なヴァカンス-
7thシングルより。散開(解散)直前に「かわいいおじさんたち」のコンセプトで、メンバー曰く遊びとして作られた楽曲とされているが、歌謡曲としてかなりクオリティが高い音楽に感じる。高橋幸宏のボーカルが素晴らしい。メンバーが踊るMVは必見。作曲はYMO(主に坂本龍一・高橋幸宏)、作詞は松本隆。

M11【Disc2】BE A SUPERMAN
11thシングルより。1度目の散開からの再生(再結成)した後、YMO(ノットワイエムオー)という名義でリリースされた楽曲。イントロのボイスは『裸のランチ』などを著書であるウィリアム・バロウズ。後期のYMOらしく落ち着いた楽曲で、所々に入るボイスがとても良い。
なお、この楽曲が収録されたアルバム『テクノドン』のみ、サブスク配信で聴くことが出来ない。

12.VOXXX - 電気グルーヴ(2000)

瀧の落書きから生まれたキャラクターのVOXXXくん。

ピエール瀧と石野卓球による日本のテクノバンド、電気グルーヴの8thアルバム。2nd〜7thまでのアルバムを制作してきた砂原良徳が脱退し、2人体制になってからの初のアルバムである。全曲がシームレスに繋がっている。

このアルバムは電気グルーヴのフリーダムさ、テクノバンドとしてのガチサウンド、前衛的な狂ったサンプリングとコラージュなどの要素が一枚にまとまった混沌としたアルバムである。純粋にカッコいいサウンドの楽曲もあれば、狂いすぎていて理解不能な楽曲、その二つのハイブリッドという悪魔合体のような楽曲もある。これまでのアルバム以上に真剣に、ふざけた音楽が展開されている。

一つ一つの楽曲の中毒性が高い上、連続で流すことで気持ちよく聴けるような曲が多いため、個人的にはアルバム単位で聴くことが多い。全てが綺麗な繋ぎではないため、唐突な展開に困惑することもあるが、最後には純粋にサウンドを楽しんで聴けるような面白いアルバムである。サブスクのシャッフル再生が当たり前になった現代にこそ、アルバムの収録曲順で聴いてみてほしい曲である。なお、このアルバムのフィナーレを飾る楽曲はサンプリングの都合上、配信及びデジタル・ダウンロードが出来ないため、興味があればCDなどで聴いてみてほしい。

特に好きな曲

M4 - FLASHBACK DISCO
10thシングルより。砂原良徳脱退後、初の楽曲リリースがこのシングルであった。石野卓球の音楽制作の原点となるテクノやディスコ・ミュージック的な要素を含む硬派な一曲。ボーカルも最小限に、石野の本気のテクノサウンドを楽しめる一曲である。

M7 - 密林の猛虎打線
ミニマルなビートの上に阪神ファンのヤジがサンプリングされており、このアルバムの狂気を感じることができる一曲。ほぼクリック・ハウスのような密度でサンプリングが切り貼りされている。DJ TASAKAのスクラッチも気持ちが良い。

M16 - ハロー! ミスターモンキーマジックオーケストラ
西ドイツの女性ボーカルトリオであるアラベスクの『ハロー・ミスター・モンキー』と、日本のバンドであるゴダイゴの『モンキー・マジック』がサンプリングされた、アルバムの最後に相応しい混沌。このアルバムの中でずば抜けて狂気を放つ楽曲である。サウンド自体はカッコいい事が狂気に拍車をかけている。改めて、音楽の自由さを感じさせてくれる一曲。勿論、サブスク配信はされていない。

13.Sugarless GiRL - capsule(2007)

セミヌードのアートワーク。

中田ヤスタカとこしじまとしこによる日本のエレクトロ・ユニット、capsule(現・CAPSULE)の8thアルバム。2003年〜2007年までに発表された2ndアルバムから9thアルバムは、7ヶ月〜9ヶ月のスパンでリリースされており、中田ヤスタカの作曲能力の高さがわかる。

このアルバムでは、前作までのネオ渋谷系のキュートなテクノ・ポップサウンドから、よりエレクトロサウンド色が強くなった、クールな楽曲が多く収録されている。キュートな世界観が残る楽曲もあるが、大衆向けのEDM的な楽曲がこのアルバムから増えている。ボーカルのこしじまとしこ氏の歌声もエフェクトがかかり、より電子的なサウンドの良さを押し出した作品となっている。ピアノ・アンビエントのような楽曲もあり、電子的な音以外も聴くことが出来るのも良い。

中田ヤスタカのサウンドは今も昔も私に良い刺激を与え続けてくれている。このアルバムでもそうだが、彼の手がけた楽曲はイントロのつかみが完璧な楽曲が多い。速いスパンでリリースされたアルバムであるが、どの楽曲も安定感がある。こしじまとしこ氏のボーカルはアルバム毎に役割が変わっているように思えるが、どのアルバムでも必要不可欠な存在である。やはりcapsuleの魅力は歌ものだということを感じさせられる。

近年は中田ヤスタカのプロデュース業への注目がほとんどだが、彼が作り出したヒットソングの基盤となる音楽がcapsuleなのだ。その中でも、このアルバムは近年の音楽性にグッと近づいたアルバムだと思う。プロデュース作品などで彼の音楽に興味を持ったことがある方は、是非聴いてみてほしいアルバムだ。

特に好きな曲

M2 - Starry Sky
短いボイス・トラックを挟んで始まるこの楽曲は、実質的にこのアルバム最初の楽曲と言っても良い。ボイスサンプリングと共に流れる分厚い電子音と、サビのクールなボーカルに圧倒される一曲。

M4 - Sugarless GiRL 
アルバム表題曲。この曲では結構ボーカルがメインに出ているが、声のエフェクトで無機質な感じを演出している感じがある。中田ヤスタカの書く歌詞はかなりガーリーで可愛らしいものが多い気がする。

M10 - Secret Paradise
アルバムのラスト。このアルバムに収録されている曲はほとんどサビ入りになっている。この楽曲はサビの1フレーズを歌ってからAメロに入るが、こういう所はクラブミュージックっぽいなぁと感じる。

14.THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS
STARLIGHT MASTER GOLD RUSH! 05
オレンジタイム (2020)

表題曲を歌う三人が写るアートワーク。

アイドル育成ゲーム『アイドルマスターシンデレラガールズ』に登場するユニット「142's【輿水幸子(CV.竹達彩奈)、白坂小梅(CV.桜咲千依)、星輝子(CV.松田颯水)】」が歌唱する楽曲『オレンジタイム』が表題曲となったシングル。本楽曲のオリジナル・ミックス、カラオケ(Instrumental)、ソロ・ミックスに加え、カバー曲が2曲収録されている。

このタグを使う多くの人が、オリジナルアルバムを集めて構成要素を作っていたが、私はシングルだろうがサントラだろうがベスト・アルバムだろうが入れている。自分の好きには勝てなかったので…。

この楽曲、とにかく可愛いらしい。キュートという属性に分類される楽曲なだけあって、歌声も音も歌詞もキャラクターも全て可愛らしいものとなっている。甘い歌声と甘いギターが上手いことマッチしているのがとても良い。電子的な音も上手く使いながら、ポップなサウンドに仕上がっている。

 この楽曲を歌っているキャラの中でも、星輝子(右側にいる子)の歌声には特に魅かれてしまった。彼女は普段、メタルやヘヴィロック風味な楽曲の楽曲を歌うことが多いため、シャウトを含む激しい歌い方をしている。しかし、この楽曲ではその凶暴さを潜め、柔らかくて優しい、綺麗な歌声を聴く事が出来る。このギャップが素敵ですね。

また、フルバージョンで聴くことが出来る2番には、アンソニー・バージェスのディストピア小説『時計仕掛けのオレンジ』の要素がほんの僅かだが入っている。『時計仕掛けのオレンジ』といえば、若者の超暴力を描き、黒いジョークで世を風刺する、この楽曲とは全く方向性の違う作品だ。言葉遊び的な歌詞かもしれないが、前述した通り、凶暴的な面も持ち合わせる星輝子や、ホラー・スプラッター映画が大好きなキャラクター白坂小梅が歌唱メンバーにいるのだから、意図的に入れたということも考えられる。オタクの妄想が広がって嬉しいですね。

アイドルソングかつゲームのコンテンツという、その界隈に住む人でなければ触れる事は少ない音楽ではあるが、純粋に良い楽曲だと私は思う。アニソンやキャラソンといったものに抵抗がないのであれば、是非一度聴いてみてほしい楽曲だ。

15.CAMERA TALK - フリッパーズ・ギター(1990)

信道三雄氏によるアートワーク。ジャケットは二種類ある。

小山田圭吾と小沢健二によるバンド、フリッパーズ・ギターの2ndアルバム。1stは全曲英歌詞で歌われていたが、このアルバムでは全曲日本語の歌詞で歌われている。

フリッパーズ・ギターは3枚のアルバムを出しているが、この2ndアルバムが最もポップなアルバムになっている。1stは全曲英歌詞かつ5人体制でのアルバムで、2ndから解散までは小山田圭吾と小沢健二による2人体制でのアルバムとなっている。

とにかくキャッチーでポップ、そしてオシャレなサウンドの楽曲が数多く含まれている。爽やかなギターとボーカル、コーラスの歌声も綺麗。電子的な音を取り入れた楽曲や、トランペットが魅力的なインストなど、様々な音楽的な表現された楽曲で構成されている。

また、今作から歌詞が日本語になったことで、歌詞の世界観がより分かりやすく、そして魅力がより伝わりやすくなった。曖昧な言葉や色々な受け取り方ができる詞も含まれており、その一つ一つの表現がとても良い。分かりやすい音楽だが考察の余地もある、素敵な世界観である。

前作と同じく過去に発表された楽曲(主に洋楽)の引用が行われており、元ネタの楽曲を探したり、比べながら聴くのも楽しい。3rdアルバムではサンプリングが多用され、実験音楽的な引用の手法が取られているが、このアルバムではポップなテイストではさりげなく引用する形なので、難解な音楽ではない。

渋谷系の音楽はシティ・ポップと同じくらい掘り返されては、しばしば再評価されている音楽だと思う。もし、digの最中で渋谷系の音楽に興味を持った方は、是非このアルバムを聴いてみてほしい。

特に好きな曲

M1 - 恋とマシンガン
フリッパーズ・ギターの中で最もメジャーな楽曲。イントロのシンバルからのスキャットの流れを聴くだけでテンションがあがる。ダバダバと歌うスキャットを聴いていると、一緒に口ずさみたくなってしまう。

M5 - バスルームで髪を切る100の方法
バスルームで暴れたり髪を切ったりするが、100の方法は出てこない。オシャレで爽やかなサウンドをバックに「クソタレな気分蹴っ飛ばしたくて」と歌うのが痛快。

M11 - 午前3時のオプ
この歌詞の世界観が素晴らしく良い。歌詞と歌詞の間に因果性や意味を見つけられそうで見つからない。色々と想像を掻き立てられる。トランペットの音もかっこいい。

16.…I Care Because You Do - Aphex Twin(1995)

Aphex Twinの自画像。

イギリスのミュージシャン、Aphex Twinことリチャード・D・ジェームスによる3枚目のスタジオ・アルバムである。それまでのスタジオ・アルバムではビートレスなアンビエントを選出・制作していたAphex Twinが、このアルバムから再び激しい曲調の楽曲を制作している。

このアルバムでは、1st・2ndアルバムでセレクトされたアンビエント・テクノや、アルバム発売以前のハードコア・テクノのような凶暴な音が詰まったドリルン・ベースと呼ばれる楽曲などが収録されている。

歪んだり、実験的な展開をしたり、破壊的でインダストリアルな音を出しながら、聴く者の感情を破壊する作品のすぐ後ろに、柔らかくゆったりとした暖かな楽曲が流れてくるのは面白い。

Aphex Twinの初期のアンビエントやハードコアテクノを一枚で楽しめるアルバムになっているが、個人的にはAphex Twin入門にしては結構ハードルが高い作品にも思える。しかし、全曲聴いてみるとそれぞれ違った魅力を持っており、好きな曲は1曲は見つかるのではないだろうか。電子音楽が好きな方はぜひ触れてみて欲しいアルバムだ。

特に好きな曲

M7 - Start As You Mean To Go On
インダストリアルで硬派な音が沢山鳴っていて良い。このビキビキ鳴ってる音がカッコいいんですよね。バックで流れてる音は純粋な音が鳴ってる感じがする。

M10 - Alberto Balsalm
全人類必聴レベルのアンビエント・テクノ。ファンの中でも人気の高い楽曲で、本当に完璧な音の重なり方をしている。柔らかな音と心地の良いパーカッション、タイプライターを叩いた時のような音が心地よくて堪らない。ここまで聴いていて気持ちの良い曲は中々無い。何時間でも聴いていられる。

M11 - Cow Cud Is A Twin
前の曲から結構シームレスに繋がる。部屋の中でレコードを流しているような感覚が味わえる序盤が好き。全体的におぼろげな音が多くてふわふわしている。そこが好き。

https://open.spotify.com/track/1rfsweNl8UOYQnugjH5b5g?si=ORn4gtVISMmBdtIrbCKErQ


今回は6枚でした。長いですね。
見てくださった方、お疲れさまでした。ありがとうございます。言語化するのが難しい音楽は魅力が伝わりづらいので、ぜひ聴いてみてください。

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