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2人の吉備津彦①吉備津神社(備後) 広島県福山市

 これまでの記事では「孝霊天皇(7代)」『皇子たち』を引き連れ、【伯耆国】(鳥取県西部)で鬼退治した伝承に触れてきました。

 その『皇子たち』とは、兄皇子の『大吉備津彦命』と弟皇子の『若建吉備津彦命』です。この二人の皇子は岡山県(吉備地域)でも、多くの伝承を残していますので調べてきたいと思います。


【かつての吉備国の一宮】

 背景情報として『吉備国』は持統天皇3年(689年)の飛鳥浄御原令の発布をもって備前国、備中国、備後国に分割されます。それから遅れること二十数年後の和銅6年(713年)に備前国から美作国が分立されています。つまり『吉備国』は「備前」・「備中」・「備後」・「美作」の四国に別れています。そして、各国の中で最も格式の高い神社のことを、「一宮」と呼びますが、その成立時期が明確ではありません。通説では11世紀から12世紀にかけて成立したとされています。
そして、この国々の一宮は次の通りです。

 備前国一宮 岡山市北区一宮   吉備津彦神社
 備中国一宮 岡山市北区吉備津  吉備津神社
 備後国一宮 広島県福山市新市町 吉備津神社
 美作国一宮 岡山県津山市一宮  中山神社

 なお、美作国にある中山神社の祭神は「鏡作神・天糠戸神・石凝姥神」であり『大吉備津彦命』『若建吉備津彦命』ではありません。津山市の近くには「鏡野町」など「鏡」を冠する地名があり、色々と気になりますが、中国地方の山間部に位置することもあり、本筋からズレていきますので、ここでは触れずに進みたいと思います。

<『大吉備津彦命』や『若建吉備津彦命』の記紀での記載 >

 『日本書紀』によると崇神天皇の代に、北陸・東海・西道・丹波の四道に派遣された皇族将軍の一人(西道将軍)に大吉備津彦命が任命されています。

 また『古事記』では孝霊天皇の代に、大吉備津彦命弟の若日子建吉備津彦命と協力して吉備国を平定したことになっています。 

 また『吉備津宮の縁起』によると垂仁天皇もしくは崇神天皇の代に、百済の王子でもある鬼神の温羅が吉備国へ来て悪行をするので、朝廷の命によって大吉備津彦がこれを討伐したとされる。この縁起に関わる遺跡は、鬼ノ城・楯築神社・鯉喰神社などがあり足守川流域一帯にあります。


<ちょっと考察です>

 以前のNOTE記事で、孝霊天皇の鳥取県西部への遠征を書いてきました。
 私自身はこれらの伝承より、孝霊天皇が鳥取県で活動していたことは真実だと考えます。
 そうすると 大和盆地から、鳥取県西部に遠征するには「吉備地方」を拠点に抑える必要があり、「孝霊天皇の鳥取遠征」より前に、「吉備の平定」があったことは自然の流れのように思います。 
 つまり、「古事記」に記載のある『孝霊天皇の代に、大吉備津彦命弟の若日子建吉備津彦命と協力して吉備国を平定した』の方が辻褄が合います。


 そのため、「日本書紀」に記載がある『崇神天皇の代に、大吉備津彦命が四道将軍の一人(西道将軍)に任命され、吉備国に遠征した』という内容は、『孝霊天皇が鳥取遠征をするには、それより前に吉備を平定しているはずであり、後の崇神天皇の代に「既に平定しているはずの吉備」へ、また遠征してきた』ということになり、辻褄が合わなくなります。
 崇神天皇の代に吉備に遠征したということも世代的に無理があります。

そのため 個人的には、以下の流れが妥当とまとめたいと思います。

『STEP1』
 大吉備津彦命
若日子建吉備津彦命の兄弟皇子は協力して吉備国を平定

『STEP2』 
吉備国を足がかりに父の「孝霊天皇」(7代)は鳥取県西部に遠征した

 ※崇神天皇の御代に 吉備に進出は、崇神天皇の功績を大きくするための創作。


【吉備津神社(備後):広島県福山市】

  まずは、一番西の一宮から見ていきます。

<ご祭神>

『主祭神』大吉備津彦命(おおきびつひこ)

『相殿神』
大日本根子彦太瓊命  孝霊天皇(第7代)。大吉備津彦命の父
細比売命  孝霊天皇(第7代)の后。大吉備津彦命の義母
稚武吉備津彦命  大吉備津彦命の弟

<ご由緒>

 社伝では平安時代の初めの大同元年(806年)、備中の吉備津神社より御分霊を賜り、備後国品治郡 宮内(福山市新市町宮内)の地に創建された。


<この神社のまとめ>
 この吉備津神社(広島県福山市)は、岡山市北区にある「吉備津神社」より分霊を賜ったということで、この広島県福山市の地で、『大吉備津彦命』『若建吉備津彦命』の兄弟が活動したということではなさそうでした。

 「吉備国」から「備後国」に分割され、「備後国」でも「吉備津彦」を祀るために、分霊して神社を創建したものと考えます。

 そのため、この神社は軽く触れるに留め、次の神社に行きたいと思います。

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