大彦命と武渟川別命②武埴安彦王との争い（奈良盆地北部）

　孝元天皇(8代）の皇子である「大彦命（大比古命・大毘古命）」が登場する記紀の伝承に『「奈良盆地北部」での武埴安彦王（たけはにやす）との争い』があります。

　　崇神天皇（１０代）の御代に、越の国を制圧するように大彦命（大比古命・大毘古命）に命令が下った。

　そして、那羅山（奈良盆地北部：ならやま、平城山とも。佐保山はその一部）の幣羅坂に差し掛かった時、一人の少女が現れて不吉な歌を口ずさんでいるのを聞き、そこから山城国に居る「武埴安彦王」（建波邇安王）が謀反を企てていることが露見した。

　そこで、大彦（大比古・大毘古）命と 彦国葺（彦国夫玖命・ひこくにぶく）は兵を率いて、幣羅坂に戦いの印を立て祀り、和歌羅河（木津川）を挟んで　謀反の軍と向かい合った。

　そして彦国葺が引いた弓が「武埴安彦王」の胸を貫き死んだため、謀反の軍は破れた。

　この伝承にゆかりがある　いくつかの神社を紹介したいと思います。

奈良盆地北部　木津川　に近い　３つの神社

＜幣羅坂神社＞（へらさか）

所在地：京都府　木津川市　市坂幣羅坂

　那羅山（奈良盆地北部）の幣羅坂にある神社。

坂の上にある岡に建っています。

きれいにされている境内。　銅鐘もありました。

大比古命（大毘古命・大彦）がこの付近に差し掛かったところに「天津少女命」が不吉な歌を歌っていた。

【御祭神】
・天津少女命
・大比古命（大毘古命・大彦）

彦国葺（彦国夫玖命・ひこくにぶく）は「記紀」では　孝昭天皇（５代）の皇子「天足彦国押人命」の子孫で、和珥臣（和珥氏）の遠祖とされている。また垂仁天皇（１１代）の御代では五大夫の1人に数えられる。

　しかし、この神社の伝承では彦国葺（彦国夫玖命・ひこくにぶく）は大彦（大比古・大毘古）命の子とされています。

＜祝園神社＞（ほうその）

所在地：京都府　相楽郡　精華町祝園

木津川沿いにある神社。農家が並ぶ　狭い道路沿いにあります。

　この神社には、討たれた「武埴安彦王」（建波邇安王）のための鎮魂の祭が今でも催されているようです。

令和五年（２０２３）の「いごもり祭」の日程

薄暗い拝殿

拝殿をくぐると本殿に。
本殿の周りにはいくつもの摂社がありました。

＜涌出宮（和伎坐天乃夫支売神社）＞

所在地：京都府　木津川市　山城町

先ほどの祝園神社から木津川の対岸にある神社

駅前にある鳥居。

　こちらの神社でも「いごもり祭」が行われています。

　「武埴安彦王」（建波邇安王）が斬首されたときに、首が川を超えて祝園まで飛び、胴体は棚倉に残ったとされています。つまり、この神社周辺で斬首され、首が飛んでいった地が対岸にある「祝園神社」ということになります。

　「いごもり祭」は「武埴安彦王」（建波邇安王）の鎮魂の祭であり、この神社も　ある意味「御霊信仰」の神社と言えます。

長い参道は　左に曲がるタイプです。

左に曲がって更に進むと

広い境内に繋がります。

　長くなりましたので、次の記事で考察していきたいと思います。