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小説 となりのひきこもり2

早朝、救急車のサイレンで目が覚める。ガラガラを何かを引きずる音とガヤガヤと声が聞こえる。4人くらいの声だろうか。一人ヒステリックに叫んでいる。「コウちゃんが!コウちゃんが!」女性の声だ。隣の奥さんだろう。戸を開けて見ることはできなかった。ちょっとだけ時間が開いて、ガラガラと何かを引きずる音がして消えていった。救急車のタンカの音だろう。

コウちゃんは隣の30代の息子の名前だと気が付いた。確か紘一。彼が小学生の頃は可愛かった。両親ともに働いているので学童クラブに入っていて昔で言う鍵っ子。ランドセルを廊下に置いて鍵を探し、鍵を見つけると戸を開けて入っていく。そんな光景を何度か見たことがある。

何かの病気で運ばれたのか。それとも自殺未遂でもしたのだろうか。他人の家のプライベートなことだ。聞いてはいけない。とはいうものの気にはなる。

考えても仕方ない。台所に行き朝食の用意をしよう。冷凍したご飯を電子レンジで温め電気ケトルで湯を沸かしインスタント味噌汁をつくる。フライパンで目玉焼きを作りカットサラダと作り置きの煮物を出す。そんな簡単な朝食。一人暮らしなんてそんなもんだろう。

食事をしながら、ぼーっとテレビを見ていると

つづく


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