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生産財マーケティング⑦ 顧客ニーズの再定義

生産財マーケティングにおける顧客ニーズ

以前、生産財マーケティングにおける顧客ニーズとは「経済性の追求」と記載しました。
具体的には「QCD+S」であり、Q(Quality)C(Cost)D(Delivery)は、ご存知の通り不良低減やコスト削減、生産性向上や短納期対応であり、+SのSとは、新製品開発、Safety(安全)の語呂合わせです。
この基本的な考え方は変わりませんが、少し視点を変えて考えてみたいと思います。

買い手の効用マップ

つい私たちはコストというと、購買に出す見積書の価格のことしか思い浮かべません。
本当にそうなのでしょうか。
生産設備メーカーにくい込んでいるある運送会社は、顧客が受注した生産設備を単に運ぶだけでなく、ユーザーでの設置まで受けています。
これにより生産設備メーカーは、納品の度に人手を出す必要もなく、この運送会社への発注は増加しています。
このように。もっと顧客のニーズを幅広く捉える必要があるのではないかと考えたときにヒントになったのは、ブルーオーシャン戦略の「買い手の効用マップ」です。
これは、「購入から廃棄までの顧客ステージ」と「顧客ステージについて効用を生み出すテコ」の組み合わせで、新しい製品やサービスを考える事を支援するツールです。
目的は、顧客活動全体を見渡し顧客ニーズを広く把握し、これに対して有効な新しい製品やサービスを考えることです。
これを、生産財マーケティング用にモディファイしたのが次の図になります。

横軸は「顧客ステージ」

横軸は「顧客ステージ」で、一つの製品やサービスを購入してから廃棄するまでの一連の流れを表しています。
私達が顧客のニーズという場合、購入までのニーズと考えることが多いと思いますが、よく考えればその後も様々な顧客のステージがあり、様々なニーズが発生することが考えられます。
生産財の場合、受注品は顧客の「検討」から始まり、「購入」「納品」の後、物によってはすぐ使用するものもありますが、組み立てや設置をするものもあると思います。この辺りはその製品サービスの特徴によって「顧客ステージ」を変更することが良いと思います。
また、「併用」とは他の製品やサービスと組み合わせて使うことで、その後保守管理、廃棄という流れになります。
例えば、廃棄するのに時間も労力がかかって困るというのであれば、製品を分解しやすく設計し、リサイクル可能な素材を使用することで廃棄コストを削減するという提案ができます。
例えば、他社製品と併用して使用されるのであれば、複合部品として開発提案するという手もあります。近いところでは、建築業界では、プリフラブリケートド(事前製作)モジュールの使用が増えています。
特殊品の納期がかかるのであれば、あえて特殊品を在庫し全国に販売するという手もあります。

縦軸は「顧客のメリット」

ブルーオーシャン戦略では、「効用を生み出すテコ」と表現していますが、わかりにくいので「顧客のメリット」にしています。
生産財の場合、あくまで基本ニーズは経済性の追求ですので、その視点で顧客が感じるメリットを五つあげています。
価格 ・・・ 純粋に外部に流出する費用です。
時間 ・・・ 着手から終了に至るまでの時間です。
労力 ・・・ そのステージで投入する労力(時間✖人員数)です。
リスク低減 ・・・ 安全性や法令違反、その他社会的な非難などを抑制防止することです。
利便性 ・・・ 手軽にノウハウなどがなくても行われることを指します
横軸である「顧客の体験ステージ」と縦軸の「顧客のメリット」を組み合わせて、顧客ニーズと製品サービスの提案を検討することになります。

これを行おうと思えば、顧客の仕事の流れと各ステージでの状況を掴むことが必要となります。
収集すべき顧客情報の中にこの項目を入れることが提案営業を行う上で必要となります。



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