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生産財マーケティングの変革は何故起きないのか

これまで記載してきたこと

これまで生産財(対組織)マーケティングについて記載してきましたが、その変革はなかなか行われません。
未だに、生産財マーケティングとはイコール営業であり、営業は個人の力量に依存すると思われています。
しかし、生産財マーケティングの特徴を考えると、必ずしもそうとは言えないと考えています。
少し振り返ってみましょう。

生産財マーケティングの特徴と意味すること

(1)顧客ニーズは経済性の追求

生産財で言う顧客ニーズは、経済性の追求です。
顧客にとっての経済性の追求の基本は「QCD+S」であり、消費者と異なり明確なメリットが示されない限り、仕入先の変更はありません。

(2)複数の関与者と消極的な継続的取引重視


会社が仕入先を決定するには、開発、購買、品質管理等複数の部署や人が関わります。
ここも消費財とは異なる点です。
小規模の会社は別として、多くの会社では購買に関して多くの方が関わるわけですから、何故その仕入先から購入するのかを、他の人に説明できる明確な理由(経済的メリット)が必要です。
従って、明確なメリットがないにも関わらず仕入先を変更し問題が発生した場合責任問題にもなり得るので、特に問題がなければ既存の仕入先から継続して購入するということになります。
従って、問題がなければ既存の仕入先から購入しようとなるのです。

上記2点でわかることは、営業というと人間関係の構築がメインの仕事と思われがちですが、そうではなく顧客へのメリット提案であることがわかります。
製品その他付帯サービスが競合間で同じなら、人間関係が良いほうが選定されるかもしれません。
または、製品・商品の優位性が明確に測れないものなら、人間関係が決め手になるかもしれません。
しかし、大半は何か経済的なメリットがないと購入されないのです。

結局、経済的なメリットを提案できない企業、つまり製品や付帯サービスで優位性がない企業が残された手段として「売れないものを売るのが営業」「気合と根性で頑張れ」としているだと思います。

(3)潜在ニーズと顕在ニーズ


ニーズは表に出ていない潜在ニーズと既に表面化しており解決すべき課題として認識されている顕在ニーズがあります。
しかし、状況によって潜在ニーズは顕在化しますし、顕在化ニーズも状況が変われば優先順位は変わります。

(4)仕様は顧客が決定する


消費財では、売る側が製品を企画します。
一方、生産財(対組織販売)では、製品の仕様等は買う側が決定します。

以上の2点が意味するのは、顧客ニーズが外部環境の変化によって変わりえるし、個別企業の内部環境の変化によっても変わり得るということです。
生産財の場合、業種業態によって具体的な顧客ニーズは異なりますし膨大なものとなりますので、ある顧客のニーズ発生とその内容は他の業種業態の顧客ではそのまま転用できないことになります。
そうなると、その業種業態に関する知識やノウハウは担当する営業マン個人に蓄積され、汎用化されないことになります。

また、製品の仕様などは顧客が決定しますので、決定するまでは売る側が待つことになります。
従って、販売という言葉よりも引合いという言葉が生産財では多く使われます。
「引合から営業が始まる」 つまり至って受身の姿勢となります。
従って、顧客ニーズへの提案を行うという視点が弱く、顧客から引合をもらうためにアフターサービスと人間関係に焦点が当てられがちとなります。

ただし、顧客ニーズがわかっただけではビジネスにはなりません。
もう一つ必要なのは、提案のためのネタである「自社の強み」と「解決策」です。
競合よりも優れた優位性が会社の強みですが、実はこれが明確になっている中小企業は多くありません。
また、顧客の個別問題に対して提案するのが解決策ですが、これを持っているのは顧客との取引が長く様々な知識とノウハウを持っているベテラン営業マン個人となります

これを変えていこうというのが、生産財マーケティングですがそこには様々な障害があります

変革を阻害する要因

(1)トップの思考


生産財マーケティングを行おうとすると、そんな事をして成果が挙げられるのかと経営者に聞かれることがあります。
とにかく成果を上げることが重要だという経営者もいますが、成果はプロセスをしっかり行うことによって生み出されます。
しかし、とにかく顧客に通って注文を取ってこいというトップもおり、トップの思考が変革を阻害します。

(2)営業は個人の力量、頑張りに依存しているという思い込み


どのような顧客情報を収集するべきか、どのような解決策があるのかは経験豊富なベテランに蓄積されます。
そのノウハウは、個人情報として共有化されることは有りません。
営業マン一人一人個性が違うのだからやり方は異なるという話もありますが、話し方や話す内容全てを統一化するというのではなく、勝つための武器(ノウハウ)の共有化は不可欠だと言えます。

(3)営業マンのバイアス 


イナーシャ(慣性)と言いますが、人にはめんどくさいことを嫌がり今のままで良しとする傾向があります。
営業にとって一番簡単なことは、慣れた顧客を訪問し御用聞きをすることです。
また、営業の方に顧客攻略のために何を行うのかと聞いて「定期訪問の強化」と回答がある場合は、何も策がないと判断できます。
顧客側から訪問頻度を増やしてほしいという要望があるなら別ですが、何も提案がなく訪問しても売上は増えません。
何も対応策が思い浮かばない時、今までのやり方を強化する事が選択され根性論が叫ばれます。



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