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小手指への小さな旅

3月28日(木)朝7時過ぎに家を出て、埼玉県所沢市の「小手指駅」へ。小手指と書いて「こてさし」と読みます。

西武池袋線 右奥が「小手指駅」です。

小手指駅に降りたのは生まれて初めてです。なぜ小手指に来たのか、ちょっと事情がありまして。事情? 字は違いますが、困った事情が起こりまして…。4日前の日曜日、体の一部に違和感があり、3日目の朝、これは自然治癒はないと感じ、その夜、ネットで近所の病院やクリニックを探して、徒歩10分ほどのクリニックへ木曜日に行こうと思ったのです。ところが妻が「専門医に診てもらったほうがいい」と強く言ってきたので、私も同意し、自宅から40分ほどかけて小手指の病院にやってきました。

小手指駅北口から歩いて5分ほどの閑静の住宅地の中、その病院の看板が見えてきました。でかでかと、あの文字が!

住宅地の中にそびえる「肛門」の文字!

「所沢肛門病院」

そうなのです、実は痔を患い、我慢できずに肛門科へ診てもらうことにしたのです。確か川越駅のホームで「所沢肛門病院」の看板を見た記憶が残っていて、「痔になったら所沢肛門病院だな」と脳裏にありました。

和光市駅で見つけた「所沢肛門病院」の看板

看板に「肛門」を掲げるのだから、絶対に名医がいるはず! それに患者はみんな痔を患っているのだから、ここは〝痔ン類皆兄弟〟ということになる。

「いざ、出陣!」

朝8時20分。静まり返った「所沢肛門病院」の入口

病院の玄関で靴を脱ぎ、スリッパに履き替え、ロビーに入ると待合室に15人ほどの患者が深刻そうな顔で座っていた。男性9割、女性1割。私以上の高齢者が多い。中には小さな子供を連れた主婦や30代らしき男性もいた。

「みんな、痔の患者か」と思いつつ、受付に「あの、初めてきたんですけど…」と言うと「お尻ですか、大腸ですか」と聞かれた。ああ、ここは大腸検査もする病院なんだと知った。出血するから痔だと思ったら大腸がんだった。またはその反対という話をよく聞くが、ここにいる患者はみんな〝痔主〟ということではなさそうだ。

保険証を出し、問診票に症状を記入し、長椅子に座って待っていると、診察時間の9時になった。3人が呼ばれ、私は2番目だった。奥の5番のドアの前で待つことに…

まずは、おばさんが先に入り、5分ほどですぐに出てきた。

「早いな。患部をチラッと見て、薬をペロっと塗って、いぼ痔ですね。しばらく様子を見ましょう。薬を出しときますから来週また来てください」

勝手に想像を膨らませた。小手指まで40分かけてきて5分で診察が終わったら、バカみたいだなと思っていると、自分の名前を呼ばれた。

緊張しながら診察室に入る。年配の女性の看護師が「ズボンを膝まで下ろして診察台に上がってください」と言う。

診察台。いわゆる白いベッドなのだが、それを見て驚いた。

「こ、これは…」

肛門科の診察台は胸ほどの高さがあるのだ。踏み台を使って、そのベッドの上に登るよにして横たわる。ベッドの向こうに、なんと白衣を着た高齢の医師が座っているではないか。雰囲気からすると院長ではないだろうか。その医師の目線の高さに、私のお尻がくるように、ベッドが高くなっているわけだ。

「右肩を下にして、パンツを下ろしてください。両膝を抱えるように」

看護師の指示に従い、膝を抱えていると、高齢の医師がおもむろに私のお尻を開いた。

「ああ、血豆ができているね。痛かったでしょう、いつから」
「4日前の日曜日からです」
「切って血を抜きますよ」

(切る! おい、マジかよ)

意外な展開に私の心は動揺した。

「麻酔を打ちますね。ちょっと痛いですよ。チクっとします、チクっと」

歯医者で歯ぐきに打たれる麻酔のチク! あれに似た我慢できる痛みだった。

「すぐに麻酔が効くから、もう痛くないでしょう?」
「はい、楽になりました」
「ほら、こんなに血が溜まっていましたよ」
振り向くと、医師が手にした真っ白なガーゼに、ドス黒い血の塊があった。

「2週間後に来てください。今日は終わりです」

ベッドから起き上がると、あのズキンズキンしていた鈍い痛みがきれいさっぱり消えていた。深々と頭を下げ、「ありがとうございます」と言って診察室を出ると、気分はルンルン! スキップをしたいほど。

診察料は意外に高く5,690円。手術をしたのだと思えば安い。病院の受付の人から、カーゼのナプキンをたくさん渡されたので、「これ、何に使うんですか」と聞いた。完全に治った気分だった。受付の人は「患部に当ててください」と言う。(なんで、こんなにいっぱい?)と首を傾げたが、まあいいかと一万円札を渡した。

待合室の無表情な患者さんに「どうもお先に! お大事に!」と心でつぶやき、病院を後にして、斜め前の「あすか薬局」に向かう。

所沢肛門病院の斜め向かいにある「あすか薬局・小手指店」

ここでも問診票みたいなものを、住所・氏名・生年月日・連絡先など、細かく書かされ、椅子に座って待っていると、奥のカウンターから女性の薬剤師さんに呼ばれた。

説明によると、外痔核という「血豆」ができたという。薬局の女性はほとんどが痔の患者を相手にしているので説明がうまく、愛想もいい。わざわざ絵入りの説明書を見せてくれて、どんな痔だったかを教えてくれた。

「外痔核は、突然血の塊ができ、腫れて痛みがあります。薬により治りますが、大きく痛みが強いものは切除するか、血の塊を取り除く必要があります」とある。まさにこれだった。血の塊、血栓ができたのだ。頭じゃなくて、お尻に血栓ができたわけか。4日前、確かトイレで、かなり力んで排便をした、あのときに、血栓ができて血の塊が飛び出したんだな、と思った。

真ん中の「血豆」が今回の症状ですね、と薬剤師さん
「ヘモレックス軟膏」炎症を抑える薬

キャップの付いたチューブ入りの軟膏を朝晩注入するように言われ、2週間分を受け取った。薬代は890円。

すっかり痛みが消えたので「新所沢駅」まで歩くことにした。ところが麻酔が切れたのか、途中からお尻がズキンズキンしてきたではないか。30分ほどで新所沢駅に着いて、駅前のドトールに寄った。仕事でもして帰ろうと思ったが、お尻の痛みがズキンズキンと増してくるので、さっさとコーヒーを飲んで家路を急いだ。

家に帰り、気になるパンツの下を見ると、ガーゼが真っ赤に!
そうか、病院の受付の人から、カーゼのナプキンをたくさん渡されて、「これ、何に使うんですか」と聞いたが、真っ赤なガーゼを見て、こりゃ、ガーゼが何枚あっても必要だと、と妙に納得してしまった。

このカーゼのナプキンを20枚も渡された

夕方までお尻を上にして寝た。目が覚めるといくらか痛みが和らいでいた。お尻だけに〝結論〟をいうと、「痔は早めにお医者さんに診てもらおう。それも専門医に!」です。

気がつけば、今年、前期高齢者! 体のあちこちにガタが出てくる年なので、1つ1つ、メンテナンスをしないといけないんだろうな。そういえば、正月に人生初の「腰痛」でひどい目にあった。3月は「痔」で初の肛門科。今年はどんな年になるのか、ちょっと本気で体を鍛えないと、と思った1日でした。

 





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