顔と夢

 今が悪夢だ。俺たちは眠れない夢を見ているんだ。
 横を見てみろ。死体が寝ているだろう。
 組み合わされた手は腹の上にある。顎も胸も微動だにしていない筈だ。
 水鏡に映った自分の顔を見たことはある?うんと静かな朝焼けの入口で、
 波1つない水面を覗き込んだ時に君の目の前に現れるヤツだよ。
 どんな顔をしてた?
 黙ってた。そうだったかもね。俺もそうだった。
 もう一度、君の横の死体を見て。
 そいつは誰だ。
 俺は俺だった。

 今が悪夢なんだ。俺たちは眠れない夢を見てるんだ。
 そいつは、今この悪夢を見ているお前自身なんだ。
 どうにかしてそいつを起こさなきゃいけない。
 どうすりゃいい?
 実は、俺は分からなかったんだ。だから、ここにいる。
 そいつは死んでるんだ。どうすりゃいいって言うんだ。
 何でもいいから、教えてくれないか。

 君はどうやってここに来たんだ。
 ここは、俺の夢だった筈だけれど、君の夢になっちまったみたいだ。
 いや、まだ俺の夢かもしれない。でなきゃ、俺は俺の思った通りに話せてる。

 君もまた眠っているのか。

 君はこのまま眠り続けたいのかい?それとも。

 教えてくれないか。

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