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『幼年期の終り』

アーサー・C・クラーク 1917〜2008
『幼年期の終わり』1953

・過去にしがみつくのは無益でしかない。〈オーバーロード〉たちが地球にやってくる前から、主権国家という存在は死につつあった。

・時間だけが解決できる物事がある。悪人を倒すことはできるが、誤った考えにとりつかれた善人は、放っておくしかないのだ。

・今や地球は、巨大な一運動場、遊戯場と化しつつあった。とはいうものの、この娯楽、道楽がひしめきあう中で、依然として古来から存在し、いまだに解答のでない問をくり返す人間も一部にはいるのだ。すなわち、
「いったい、この先われわれはどうなるのか?」

・自分たちがいかに幸運だったのか、人間たちはけっして気づくまい。まさに黄金時代だった。しかし黄金とは夕日の色であり、秋の色なのだ。やがてやってくる冬の嵐のかすかな悲しい叫び、いち早くそれが聞こえているのは、カレレンの耳だけだ。

・孤独を感じるのは一人一人が切り離された個人、しかも人間の個人だけではないか。最後の障壁がとりはらわれる日、あの子たちの個々の人格は消え、それとともに孤独も消滅する。無数の雨滴が溶けあって太洋になる。

・時間というものは、実は人類の科学が想像していたより遥かに複雑なものだ。
時間は閉ざされた輪のようなもので、未来から過去へと、歪められた事実がこだまして伝わってしまったということになる。記憶ではなく、予感とでも呼ぶべきだろう。


 人類補完計画

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