長下肢装具療法 ② 実際の介助歩行のポイント

長下肢装具を用いた歩行介助。


麻痺が重く、ご自分では足を上げることも、膝で体重を支えることも、足首で地面を蹴ったり、引っかからないよう足首を上げたりすることも難しい患者さんを、介助し歩行練習していく方法について。


実際に行う場合の私なりの注意点の前に、第3版脳卒中理学療法理論と技術においてどのように書いてあるかを軽く紹介したい。


"歩行練習は2動作前型そしてある程度のスピードをもって行うことが重要である。(p314)


病期を問わず、長下肢装具を用いた歩行練習では、一定の速さをもつリズミカルな下肢の振り出しを妨害しないこと、視野を遮らないことなどを目的に、原則的に後方介助で行う。(p336)


脳卒中患者では股関節周囲筋の低緊張により振り出しが股関節外旋や内転に、しかもバラバラになることが多い。

〜略〜

特に、麻痺側下肢が立脚期に入る踵接地が不安定であると、COPは滑らかに前方に移動せずに、ロッカー機能の連鎖は破綻してしまう。

大腿カフ部分にループを取り付け、麻痺側振り出しを制御するように理学療法士が操作することで、これらの問題を解決する。

〜略〜

踵接地する場所が適当であるかを確認するために麻痺側足を理学療法士が覗きこもうとすると、理学療法士自身の同側骨盤を後方に引いてしまうことが多い。その動きは患者の骨盤に同様の回旋を引き起こし、その結果、外旋歩行を呈することになる。

この外旋歩行を防ぐために、理学療法士は正面に置いた鏡を見て振り出し状況をみながら介助による歩行練習を行う。前額面ではその他に、

・麻痺側を外転して振り出そうとしていないか

・非麻痺側を外転して振り出そうとしていないか

・理学療法士が体重を麻痺側にかけたいがために、過剰に麻痺側にshiftしていないか

・左右同じような前型の振り出しになっているか

・麻痺側体幹が十分伸展しているか

・患者の表情はどうか

などを観察し、適宜修正を加える。矢状面のアライメントも過度に後方にもたれていたり、前のめりになっていないかなど、鏡や他者を通してチェックする機会をつくる。(p337)"

となっている。


これらをまとめると、

・後方介助でリズミカルに行う

・振り出しが外転、外旋、内転に偏らず、踵接地が一定とするよう介助する

・麻痺側に過剰に荷重させないように気をつける

・体幹を伸展させ、過度にもたれたり、前のめりとしないよう介助する

・セラピストは覗き込まず、確認は他者や鏡を使用する。


これをクリアするためにどうするか。これがやってみると結構難しい。

後方介助で覗き込まないことはまず徹底したほうがいいだろう。

まず、良くあるのが、前進するため前方に突っかかって倒れるのが怖いがために過剰に後ろに引っ張ってしまっている、という状況。

麻痺側は長下肢装具を持って振り出しを介助しているため、必然的に胸に回した非麻痺側体幹を支える手が強すぎる、という問題だ。

怖いのはわかるが、臨床的体感として、患者さんが後ろから引っ張られている、という様に感じるほど引っ張っている時はやりすぎだ。

少し緩めて、私の場合は気持ち前屈み気味にすると丁度いいことが多い。

また、誰かに前方から非麻痺側上肢や肩口を持ってもらって前に倒れない様な環境を作ってしまうと後ろに引き込みすぎない感じが掴みやすい。必然的に2人介助となってしまうが、教科書的にも他者の確認は推奨されているし、点滴がある場合などの介助が困難な場合は2人介助は推奨されている。
慣れないうちはそれでも良いのではないか。それで行ううちに自分の場合のちょうど良い加減が掴めて来るのではないかと思う。


また、振り出しがバラバラとなってしまう、という問題に関してだが、教科書的にはループを通すことが推奨されているが、ループの弾力や、若干のたるみで、不器用な私にはわずかな内外旋や、外転をコントロールするのは難しかった。また、ループを大腿カフという装具前面につけ、そこから介助するのだと、振り出しの強さの加減を手で持ち上げてコントロールする形となりこれまた力加減がむずかしい。

結局、私がどうしているかというと、

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