長下肢装具療法 ③ カットダウンの実際

前回のnoteで、膝をロックして、膝折れ防止をしたまま介助で患者さんに歩いていただく際のコツを書いた。

今回は、そこから如何にご自身で歩いていただけるようになってもらうか、ということにつなげる記事を書いていきたい。


平たく言うと、自分で足が降り出せて、膝のコントロールができて、転ばない、というところにつなげていくという話だ。


そのためには、杖につかまって倒れずに歩けるようになることが目標となる。

膝をロックした歩行では、膝のコントロール自体も学習できず、さらに、膝のコントロールに伴うバランス戦略が欠如しやすい。

また、足首が引っ掛かったり、蹴り出しが不足していたり、という問題が出てくることも多い。

今回は特に、膝のコントロールについての対処を書いていきたい。


やはり最初に書いていくのはいつ、膝のロックを外して歩き出すのか、ということだろう。

このイメージがないと、延々と膝をロックしたままの歩行練習を続けてしまったり、逆に、ある時いきなり膝ロックを外して歩かせ始めてしまって、膝の代償がバリバリに出た歩行を獲得させてしまい、何のためにこれまで装具歩行をやっていたかわからないような結末に終わるパターンをしばしば目にする。


文献的にも「いつから」ロックを外す、ということは明確に書いていないが、脳卒中理学療法理論と技術には膝ロックの解除とカットダウンについて書かれたページが1ページだけ存在する。


”適宜、膝継ぎ手のロックをはずしたり、短下肢装具にカットダウンする必要がある。麻痺側膝で多少でも筋活動を得ることができれば、ロックを外した立位で支持性を確認する。膝をロックした歩行で筋活動を賦活した後、できれば数歩でもロックを外して歩いて、麻痺側の支持状況を確認する。最初の数歩は膝を伸展保持することができなくても、繰り返すことでかろうじてできるようになることがある。”(p338)


つまり、ロックをしたままの歩行しかしない、ということは自身の膝での体重支持を経験する機会を与えないことを意味する。

このため、練習レベルでは、患者さんがロックした歩行に多少なりとも参加できる様になったら、早期から行うべきだと言えるのではないか。

早期とは言っても、体幹の支持も、下肢の両側ともの振り出しも全介助の状態から膝ロックを外す、というのは課題でクリアすべきものが多すぎるため、難易度が高すぎると言えるだろう。

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