大腿骨近位部骨折の理学療法 ② 健側機能の向上から図る早期ADL改善

前回の大腿骨近位部骨折のテーマで、手術自体と手術後の注意点を述べた。ここからは術後のリハビリについて書いていく。


術後のリハビリは活動性の確保と、患側機能の向上の2つに分けられる。今回は活動性の確保について述べていく。


術後の廃用を防ぐための第一には、術後早期からの活動性の確保が挙げられる。


術後早期から活動性を確保するためには何をするとよいか。真っ先に思い浮かぶのは歩きたいところだが、ここはやはり痛みの問題や転倒リスクの問題があるため簡単にはいかない。


寝起きを自立させる?これも、股関節の問題と言う事を考えると、上体の寝起きに股関節の屈曲・伸展、足の上げ下ろしに内外転と痛みを生じやすい動きを多く含むため、少し時間をかけて行う必要があると私は思う。


では何から行っていくか。私は車椅子駆動と起立練習から始めるべきではないかと考えている。


やはり痛みを出さずに活動性を高められるものから始めるのが患者さんの受け入れもよく続くのではないだろうか。


手術後早期から、痛いと言っているのに我慢だ、とか言われながら運動をやらせてくる人を信頼してくれるだろうか。リハビリが進んできたらより細かな運動を行うが、その上で、セラピストと患者さんの信頼関係がないと頭打ちになるのが早くなると思う。


と、言う事で、術後早期は、起居や移乗は介助で行い、起立練習や車椅子でトイレなどへ移動する練習から行うことを推奨する。


起立練習といっても、手術した側(患側)に体重を乗せてしまっては痛いし、痛みを避けるための腰が引けて、体が側屈するなどの不良姿勢につながりやすい。


また、低い座面から立ったり、何にもつかまらせずに立たせたり、難しい課題を行うと、勢いをつけて立ってしまい危なかったり、結局患側を使用して痛くしてしまったりするリスクが高い。


最初は高い座面から、ピックアップ歩行器などしっかりしたもの(支持物)につかまってもらって、いい方の足(健側)を中心とした起立練習を10回でも20回でも30回でも行なって行った方がいい。いきなり20回30回は難しいので、病室で10回、リハビリ室に着いて10回、プラットフォームの上の練習の後に10回、終了前に10回など小分けにしていくとよりよい。PT、OTと2職種入っている場合、午前、午後とそれぞれでやっていき、一日100回を目指すのもよい。


大腿骨近位部骨折の予後予想には、術後の健側起立の可否が影響するとのデータもあるため、早期から起立練習を100回でも行えると予後も良くなっていくと言えるのではないか。




ただ、ここで気をつけたいのが、支持物につかまる際のつかまり方だ。


平行棒など、支持物につかまる際、引き込む様に使用してはいけない。


何故なら、

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