大腿骨近位部骨折の理学療法 ④ 筋間の滑走障害・インピンジによる鼠径部痛

今回も、前回同様、患側機能の向上の話。


痛みや筋出力低下で、可動域の低下を来して姿勢変換が困難となることについて。

よくある屈曲の可動域制限の改善方法についての話の続きである。

今回は、骨頭周辺の筋肉の癒着や挟み込みの問題について。

これは、股関節疾患で鼠径部痛を有する患者さんも同じことが当てはまるケースも多い。


股関節屈曲時に、鼠径部痛を訴える要因として、腸腰筋、大腿直筋、小殿筋の3つの筋肉が滑りが悪いこと(滑走障害)が臨床上よくある。

腸腰筋と大腿直筋は、大腿骨頭と臼蓋のちょうど前方を走行する。どちらの筋肉も、痛みや悪い姿勢などのせいでガチガチに固まっていると、股関節屈曲運動の際に収縮が遅れて逃げそこない、骨頭と臼蓋の間に挟み込まれて鼠径部痛を引き起こす。鼠蹊部のやや内側の痛みとして訴えやすく、創部から大きく離れた謎の痛みの一つだ。

どちらの筋肉においても、筋肉「全体」が硬いことというよりも、「大腿骨頭と臼蓋の付近を走行する部分」が硬くなっていることがこの問題を引き起こす。

これをどうするかというと、直接そこを揉む、という方法でやわらかくしてもよいが、

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