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1000文字日記②羨ましがる人が羨ましかった話

ある日のサンキでの出来事。
回転什器をくるくる回して洋服を見ていると、近くに60-70代ほどのご婦人3人組と、婦人と同年代のご夫婦らしき方がいらっしゃいました。

3人のご婦人は回転什器を回しながら、ワイワイと洋服を選んでいます。
一方ご夫婦は、どうやら奥様のアウターを選んでいる様子で、ご主人が手にとって奥様に当て、「これはどうだい?」「これも似合うよ」といった具合に和やかに物色していらっしゃいました。

そのうち、ワイワイとしていた3人のご婦人に変化が。
それまでは楽し気に話していたのが、急に静かになりました。
どうやら、和やかなご夫婦を気にしているご様子。
3人ともチラチラとご夫婦を見ながら、落ち着きのない様子で洋服を見ています。

一体どうしたのだろう。
知り合いなのだろうか。
だとしたらこの距離感で声をかけないのはおかしい。

では何故??

一体何が、さっきまでめちゃくちゃにはしゃいでいたあなた達をそんなに静かにさせているのですか?

私はその様子が妙に気になり、考えられる要因を想像してみました。

✾推測✾

①奥様が、以前3人で短期間通っていた絵手紙教室の先生かもしれないと気づき、すぐに辞めちゃって気まずいから気配を消していた。

②最近町内会に越してきた人な気がするけれど、ご主人が大学の先生だと聞いていて、仲良くなれるかどうかまだ不安だから気配を消していた。

③ご主人が昭和の名優志村喬に凄く似ていて素敵な雰囲気なので、気になってしまってチラ見していた。

答えはすぐに判明しました。
ご夫婦が商品を手に取りレジに向かった瞬間、ご婦人達は活気を取り戻し、
顔を合わせてこう言いました。

「見た?!優しいねぇ~~!!」
「見た見た!ほんとに優しかった!うちじゃあり得ない!!」
「うちも!!絶対一緒に選んでくれないわ~~!」

「うちも!何着たって一緒だろとか言うに決まってるわ!」

「うらやましい~~!!」


ご婦人達は、自分たちの夫とは違って奥様の洋服を和やかに一緒に選んでいたご主人に、羨望の眼差しを向けていたのでした。
その後、3人はケラケラと笑いながら店を出て行きました。

私は、予想外の正解に思わず笑みがこぼれ、店を出ました。

その後、隣接しているスーパーで助六を買って休憩コーナーへ行くと、
先ほどの3人のご婦人達もいらっしゃって、何か食べながら楽しそうにお話をしていました。

その様子を背中に感じながら1人窓際で助六を食べながら思った事。
ご婦人達はあのご夫婦が羨ましかったのだと思うけれど、
私からしたら、あんな風に回転什器を回しながら一緒に笑い飛ばせる友達がいるあなた達も十分に羨ましい。
できれば仲間に入れてほしい。
一緒に助六を食べて欲しいし、絵手紙教室も一緒に通いたい。
悩みを聞いてもらって、「考えるだけ時間の無駄よ!!」と、
そのパワーで笑い飛ばしてほしい!!

と、

友達っていいなぁと思いながら、
1人いなり寿司をほおばった、
春なのに雪がちらつく肌寒い4月の午後。





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