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第8夜【カラーカーボンとエアーブラシ】

日々、届く修正用原画カットが何故か?棚に山積みになっていった。

それらは、シーン担当がバラバラのようで、一カット毎に原画担当者が違ってたりもする。全般に渡っては、スタジオDのKさんの原画が多かった記憶。

1カット袋を開けると、レズンギラドーガのパンツァーファースト発射シーン…。監督の「こんな表現できるのかね?」ってメモに続き、O作画監督の“仙よろしく!”の指示。これ全描きかえ…?…それにパンツァーファーストって、こんな武器だっけ?ミサイルでいいじゃん…。雑念を払い作業に入ったが、「これって演出リテイク物だろう?」と、やりながら悶々としてきて手が止まった。

自分が気付いて原画を追加したり描きかえするのは納得も行くが…。O作画監督に電話を入れた。

「最初に聞いてた話と違うし、もう限界きてます…」と自分。
「そんなこと言わないでがんばってくれよ…」で電話は切れた。
何か酷く困ってる様子だった…。

ここまで動きを求められる、全面描きかえなどをやらされるなら、
後ろ向きのランチの噴射炎の二枚ブレとか、ただ奥へ行きレーザーを出すだけのファンネルは、O作画監督に任せるか…選別をし、提出法を変えた。

アルパアジールがぶらさげているのは設定上プロペラントタンクのはずだが、コンテやラフでは噴射炎がでて、ブースターとして扱われていた。
ちがうだろうと思ったが、前後のカットが届かない以上ブースターとして描くしかなかった。

Uプロデューサーが上がりを回収に来た。
その場でガンダムのフィンファンネルのビーム発射パターン設定を描いてくれと言われ、O作画監督のチェックがもらいたいと渡した。

そのあと、「予告用アルパアジールのビームを仕上げが拾いきれないで悩んでる」と言われた。(自分が経験してきた動画作業と、サンライズ下請けでは勝手がちがうようだ…。)
「実線で動画にトレースしてもらって、カラーカーボンという手段は無いですか?」との案を伝えると検討してみると言う。
「ビーム、バーニアは動画段階の迫力を欠く事ができないので仕上げはエアーブラシとしてもらってもいいです」とはっきり伝えた。

劇場北斗の原画はこんな感じ、結構ザザッと影入れ、一昔前だと鉛筆で黒をトレースする動画家が多かったが、この時期では輪郭をいれBL影としてまとめて仕上げに出す風潮が出来てた。    

続いて「最初の話と仕事内容があまりにも違いますから、1カットあたりの単価を上げましょうか?」と気遣いを見せてくれた。
「自分は固定給なんで別に関係ないんです」と答えた。

後日、自分のフィンファンネルのビーム発射パターンをトレースしただけの設定が届いた…。

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