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第2夜【アポジモーターと粒子ビーム】

方南町のスタジオに戻り、あらためて逆襲のシャアの設定書を見開いて…。
「ん~」と考え込んでしまった。
自分は実はZガンダムは最初の5本くらいしか見ていない。
(なんかガンダムと違うように思えて見なかった)
しかしZZガンダムのマッシュマーの死ぬシーンの作画で、ザクⅢやら
ドーベンウルフといったデザインに触れていて、
その目からしてモビルスーツデザインに何の新規性も感じなかったのだ。

まるで、最初のガンダムからの年月と進化を感じない…先祖返りしたようなメカデザイン…。
新規性?どう動かそう…?と考えて、もらってきた分のコンテを見直した。
…すると、「バーニア」と普通呼ぶモビルスーツの噴射炎を「アポジモーター」と表現している箇所を見つけた。
「これだ!」と思った。
今までのMSよりも、このアポジモーターによる高機動性、それを念頭に作画していこうと決めた。
ZZガンダムではオープニングからしてロボットだったので、
描くモビルスーツは自分の思うものとロボット物の中間の様な作画をした。
宇宙空間を意識してドーベンウルフが逆噴射で足から手前に逃れてくるような表現をしてみたが、
もっと進めて今回は完全に自分の思うようなモビルスーツ戦としてシーンを描いてみようと思ったのである。

まずメカの影である。兵器である以上、フェラーリのようなテカテカした陰影はつかない。艶消し塗装されてるはずだから、そういう影にした。光の表現もサブリミナルや白コマは極力使わない。
長編映画では疲れを生んでしまう。
そしてガンダムの主役は、あくまで乗り込んでいるパイロットであって、
その意識を反映するモビルスーツは大道具でもある。
手前からダンシングINして奥で決めポーズをとるような巨大ロボット物では無い。カッコ悪くてもいい。

シャトル前に来るレズン隊長機を部下機が先回りし、盾を立てて援護する…そんな芝居を追加した。

人物では、モビルスーツの動きに、カットインしてくる中のパイロットもシンクロして動くというカット内演出をいれてみたりもした。
(劇場作画レベルを計る為、ビームが来る時に点の様なシャトル上の修理員の人影を動かした)

SDI兵器関係、宇宙航行などの資料を探しまくった。

神田の古書店や図書館巡りをしてSDI関係の本を漁って、ビーム兵器とはどんな物なのだろう?と探した。
ZZガンダムでは、場合によっては光線として描いたが…高熱化してスピン運動する粒子の弾丸だと理解、解釈した。
そしてシャトルをかすめ飛んでくるνガンダムのビームを作画した。

アポジモーター(バーニア)は、MSの挙動を制御する噴射炎である。あまり大きな火だるまを描いてしまうと、視聴者の目には、暗い宇宙空間とモビル―スーツの中で一番目立つ物となってしまい、モビルスーツの演技を殺してしまう。それに真空なのだからと最小限の噴射炎を描いた。
こうして、最初の30カットを描き提出した。

最後のレイアウト戻しには、監督の字で「ありがとう」とあった。


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