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インドネシア語 動詞をつくる接頭辞meN(1) 語幹の頭文字そのままの場合



動詞をつくる接頭辞meN のかたち

自動詞と他動詞

 接頭辞meN の説明に入る前に、自動詞と他動詞について、少し触れておきます。
 動詞は動作を表わす単語ですが、目的語(動作の対象)が必要かどうかで、自動詞と他動詞に分けることができます。
 日本語で例をあげます。
 「開く」と「開ける」です。

 開くは「あく」と読む場合と「ひらく」と読む場合がありますが、ここでは「あく」の方を想定しています。また、開けるは「あける」と「ひらける」の読み方がありますが、ここでは「あける」とお読みください。
 さて、「開く」は目的語を必要としません。
 扉が開く。 窓が開く。 蓋が開く。 などです。
 それに対して、「開ける」の方は目的語を必要とします。
 扉を開ける。 窓を開ける。 蓋を開ける。 などです。

 どちらもあまり変わらないように見えますが、「扉が開く」の場合、扉は主語であり目的語ではありません。一方、「扉を開ける」の方の扉は目的語です。なお、主語は省略されています。
 判断方法のひとつに、動詞の前に「ひとりでに」をつけて文が成り立つかどうか。成り立てばその動詞は自動詞である。また、動詞の前に「~を」「~に」という助詞があればその動詞は他動詞となる、というものがあります。

本題 接頭辞meN

 (いつものことですが)少し前置きが長くなりましたので、そろそろ本題に入りたいと思います。
 インドネシア語において、動詞をつくる接頭辞meN についてです。
 基語にmeN をつけると動詞になります。このmeN が付いてできた動詞は自動詞になる場合も他動詞になる場合もあります。
 例えばjual を基語として、接頭辞meN を付けるとmenjual (売る)という動詞になります。
 cari を基語として、接頭辞meN を付けるとmencari (探す)という動詞になります。

接頭辞meN の付け方 (語幹の頭文字そのままの場合)

 まず、接頭辞meN のうち、N だけが大文字になっている理由から説明したいと思います。
 N の部分は基語によってm 、n 、ny 、ng のいずれかになります(このm 、n 、ny 、ng のことを鼻音とよびます)。
 つまり、実際の接頭辞としてはme と鼻音があわさってmem 、men 、meny 、meng のどれかになるということです。

 N がどの鼻音になるかは、接続する基語の頭文字によって決まります。
 では、表の縦の列をみてみましょう。mem- の列にはm 、p 、b があります。これは頭文字がm 、p 、b の単語に接続するときは、meN がmem となるということです。
 次にいちばん右のmeng- の列をみてみましょう。この列にはng 、k 、g 、h 、母音があります。つまり、頭文字がng 、k 、g 、h 、母音の単語に接続するときは、meN がmeng になるということです。

 今度は表の横の行について説明します。
 黄色い背景になっている「N は語幹の頭文字のまま」の行にはm 、n 、ny 、ng があります。これはそれぞれの接頭辞mem 、men 、meny 、meng にそのまま基語を接続するということです。
 例を挙げます。
 masak を基語として接頭辞meN を付けるとします。masak の頭文字はm ですから、表中では黄色い背景の「N は語幹の頭文字のまま」の行で、mem の列になりますから、me にmasak をそのままくっつけてmemasak (料理する)となります。

 nikah を基語として接頭辞meN を付けるとすると、nikah の頭文字はn ですから、表中では黄色い背景の「N は語幹の頭文字のまま」の行で、men の列になります。そのため、me にnikah をそのまま接続させてmenikah (結婚する)となります。

 nyanyi を基語として接頭辞meN を付けるとすると、nyanyi の頭文字(というか頭の二文字)はny なので、表中では黄色い背景の「N は語幹の頭文字のまま」の行で、meny の列にありますので、me にnyanyi をそのまま繋げてmenyanyi (歌う)となります。

 ちなみに、会話の中ではmemasak ではなくmasak のまま、menyanyi ではなくnyanyi のままで「料理する」「歌う」という動詞として使われることが非常に多く、(あくまで会話では)memasak やmenyanyi を使う方がまれな気がします。
 menikah は逆にnikah だけで使われることがありません。会話であろうがほぼ必ずmenikah です。
 また、ジャカルタやジャワ(ジャワ島の東側)では、nikah は少しかしこまった印象を受けるようで、日常会話、特に年配の人や教育をあまり受けてこなかった人たち(婉曲表現)、親しい仲では「結婚」または「結婚する」という動詞としてジャワ語に由来するkawin を使うことが多いです。

 少し長くなりましたので、表の背景が赤い行と青い行の説明は、次回にしたいと思います。

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