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チーム藤井 トウカイテイオー


 藤井八冠は孤高の人だと思っていました。

 チームトウカイテイオーを観るまでは。

 華やかな場所が似合うというか、もはや華やかな場所に居なくてはならない宿命の藤井八冠。それだけのことをこなせる能力があるのは分かっているけれど、若いのに大変だよね。と、誰もが目を細めて語る、もはや大谷選手と双璧をなすお方です。

 自分の役割を完璧に果たしてオーラさえ重厚になっていく若き絶対王者、にドラフトで1位指名された澤田七段、のファンの私は、指名の瞬間に嬉しいというより「ま?」、血の気がひく思いでした。指名があるとしたら同門下の千田七段だと思っていましたから。

 澤田七段に高見七段のような分かりやすいお兄ちゃん感はないですし、気づくと華やかな場所をしれっと避けている隠花植物タイプ(あくまで私のイメージです)。なにかあったら藤井八冠を守れるのでしょうか? 大丈夫でしょうか?(何が?)フィッシャー適正とかではなくもはや全然違う心配をしはじめてしまいます。

 齋藤四段については、フレッシュな新人さんで東海くせっ毛同盟勢(藤井八冠、澤田七段、柵木四段、宮嶋四段)ではなく、麗しいストレートな髪質の持ち主、というくらいしか分かっていなかったですが、チーム内対決で澤田七段に2連勝して、フィッシャールールに強いことが徐々に分かりました。

 陶器作りのころは、怖いものみたさ。藤井八冠の水玉はかわいいし、澤田七段のレモンの輪切りは爽やかだし、齋藤四段の華美な三段ラインも若者らしい。それなのに、繊細そうな白い指先からどうして真逆のボコボコ感あふれる作品ができるのか。棋士は見た目や指先は繊細でもメンタルが図太いから、意外と骨太な作品になるのでしょうか?(ただ単に不慣れで不器用なだけ?)

 予選の『思ったより勝っちゃったね感』の時は見ているのがとても楽しかったです。兄弟子の藤井八冠への対応が新鮮でしたし、『僥倖』発言とそれをクスクスと笑ってしまう3人を観た時は、私の中のほんの微かで小さく尖った緊張がすうっと溶けた気がしました。そういう発言ができる3人の絶妙な空気感がとても好きになりました。

 好きになると余裕ができました。何度も見返して、藤井八冠と澤田七段の悲鳴のシンクロは将棋をアカペラにするとこうなるのかな? と思わずニコニコ(?)。余裕ができすぎて、藤井八冠がいつも手に持ってぱちぱちしている扇子をもしすっと隠してしまったら、心細そうにしたり、探したりするのかな? とか、控え室での齋藤四段が「駒並べ意味ないです」と言ったら澤田七段は駒動かすのやめるのかな? などと思いながら見ていました。
 藤井八冠の圧巻の強さも心から拍手。相手チームだったら堪らないですね。個人的に1番印象に残っているのは、斎藤藤井戦です。

 4連勝からの5連敗は、鮮やかすぎました。

 4連勝後、あと1勝できなきゃウソでしょと本気で思っていました。今でも一度も見返すことができていません。エンタメだけれど、本当に勝負師達なんだと痛いほど分かる、とても大切で濃厚な場面ですよね。一局目から九局目にかけて、盤上も、控室の空気も表情も言葉も言い方も姿勢も、色が塗り重ねられ、伝わってきすぎて、大河ドラマの最終回の様に感じました。(これは私がチーム藤井応援だったからで、チーム稲葉応援だったならば、歓喜爆発で決勝にむけてこれからクライマックス突入! でしょうか)

 今回noteにチーム藤井について書いたのは、
tomo様の絵を使わせていただきたかったのが1番の理由で、2番目は、もうすぐ次のアベトナが始まるので、その前に『記憶にも記録にも残るトウカイテイオー、楽しかったです。ありがとうございました』と明記したかったからです。

 地元の仲間に囲まれ、素っぽい藤井八冠を沢山観ることができました。切ない表情、切羽詰まった物言い、本音爆発加減、諦めの混じった仕草。それでも諦めきれない想い。零れ落ちる後悔。吐露。とても魅力的で引き込まれました。澤田七段もそっと寄り添っていましたね。と、ここまで単語を羅列してふと、齋藤四段のリラックスと緊張の度合いや最後の数十手の盤上も含めて誰か匂い立つように書き起こして、ノンフィクションとしてトウカイテイオーの本を発売してくれないかなと思いついてしまいました。もちろんnote(有料)でレポートでも大歓迎です。

 もう遅いでしょうか? 遅いですよね。
 でも、プレミアムで観て書けますよね(諦めが悪いです)。

 もし執筆していただける際は、受け身で一見わかりにくい控えめな澤田七段ですが、チームトウカイテイオーの中で、煌めく藤井八冠とフレッシュな齋藤四段の隣でイキイキしている描写があると、より嬉しいです。

 どうぞよろしくお願いします。

 もちろん、次のアベトナで藤井八冠が誰を指名するのか楽しみで、次期チーム藤井が仲間で織りなす物語もワクワクしながら待っています!(次期も澤田七段を指名しないかなぁと淡い期待もしつつ...)
 



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