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続 結婚は宝くじに当たるようなものと聞いたが実際はどうよ5話

(2024年漫画原作部門応募作品 3話までの続き)
 桜田風子35歳、看護師、婚活中。
結婚相談所に行くが、セクハラ、モラハラ男を紹介され撃沈。
次にいった相談所は、理想に近い人がいたが、急遽転勤で紹介してもらえず。
さて、その後、どうなるのか?

 昔、誰かが言っていた。
「結婚は宝くじに当たるようなもの」と。
それは、みんな宝物をもっているってこと?
私にも宝物があるのだろうか?
見付かるのだろうか?
 チャラリン♪
「そろそろ介護士の国家試験の勉強をするから、婚活休むわ」
※施設などで勤務経験3年以上あれば、介護士国家試験の受験資格が得られる。
ブライダルカンパニーの芝原から紹介された35歳の看護師は風子である子とを知らないすばるは、相変わらず風子にメールを送ってくる。
手術前のホルモン剤の注射の作用で、生理が止まっていた。
副作用で更年期障害の症状が出て、苦しんでいた。
「暑い・・・だるい・・・イライラする。」
寝巻きのまま緩慢な動作で、ベッドから起き上がる。
副作用の出現率は5%という低い確率だったが、風子には出てしまった。
「悪いことはどんなに確率が低くても、あたる。自分の人生が情けない。」
ついに、涙まで出た。
仕事も集中が出来ず、別の患者さんの薬を持っていき、間者が気付き怒鳴られた。
「お前、俺を殺す気か?」
その患者は、自分の体の障害を受け入れられず、イライラしており、病棟の職員みんなが緊張して接していた。
で、逆鱗に触れてしまった。
「すいません、気を付けます。」
謝罪するが、何故か説教が続く。
「師長を呼べ!お前みたいな汗ばっかりかいて汚い看護師は来るな!」
「!?」
患者とはいえ、言ってはいけない暴言だと思ったが、自分がミスしたのは間違いないから何も言えず、師長に対応してもらった。
「本当にすみません、桜田にはきつく注意しますから」
役職者が頭を下げると、急に笑顔になる患者。
「師長さんが頭下げてきたから、仕方ないな。」
間者の病室の外で風子が待っていると、
「私も忙しいんだから、くだらないことで私を呼ばないでよ!」
嫌そうな顔で、師長は風子に言った。
「・・・はい、すみません。」
師長がいそいそと去っていくと、早足でトイレの個室へ入って泣いた。
「もういやだ!辞めたい!!」
数日後、体力的にも精神的にもつらく、師長に退職を申し出た。
看護部長には、
「患者にちょっと言われただけで、辞めるなんてねぇ。みんなそんなこと我慢して働いてるのよ?」
ー私の気持ち、わかってくれないんだ。
「それもありますが、実は子宮筋腫になり、手術するので、ホルモン剤の注射で酷い更年期障害の症状が出て辛いのです。」
「ーそう、それなら、仕方ないわね。」
数週間後、風子は働いていた病院を退職した。
 退職したとしても、治療(ホルモン剤の注射)は続いた。
毎日、お湯をかけられるような感覚、悪い思考に支配される日々を送った。
「私が何をしたって言うの?こんな思いをしてまで生きないといけないの?」
毎日、毎日、大量の汗をかいて、泣きながら過ごしていたのだ。
気分転換にと、SNSに辛い気持ちを、今回の治療について書き込んだ。
「子宮筋腫の治療のホルモン剤で、更年期障害になり、毎日がつらいです。」と。
多くのユーザーは、風子に同情的なコメントをしてくれた。
「きっと、今の頑張りがみのる時がきます。」とか、
「大変ですね、あなたが少しでも楽になるよう祈っています。」
と。
しかし、当然ながら、心ないコメントをする人間もいた。
「私は産婦人科の医師を10年してますが、あなたの注射のミリ数で副作用出た人は知りません、甘えているのでは?」とか、
「同情してもらいたいだけじゃん、いやらしいわ。」
と、風子を傷つけ、苦しめた。
「もう、精神科に受診するレベルよね。」
何とか、この苦しみから解放されたい、何でもよい!とにかく、この苦しみから逃れたい!
そう思う一心で、精神科病院の受診を決めた。
 数日後、漸く精神科病院に受診にきた。
診察室に呼ばれると、
穏やかそうなにっこりとした医師が、私服で待っていた。
「問診でみました、ホルモン剤の副作用で辛いのですね。」
「はい、最近思うのです、生まれて来なければ良かったって。」
しくしくと泣き出す風子。
「そうですね、つらかったですね。それは、病気になるのはわかりますよ。」
「はい。」
さすが精神科医だ、聞き上手であった。
しばらく沈黙がながれ、医師は言った。
「あなたはうつ病の可能性が高いです」
ーああ、やっぱりか。
想定内の診断だ。
「はい」
「お薬を出しますから、飲んでゆっくり休んでください」
「はい、わかりました。」
涙を拭きながら、診察室を出る。
同時に暑くもないのに、顔と手、首から汗が噴き出る。
調剤薬局で薬をもらい、多量の汗が出るためエアコンの冷房をかなりきかせて自動車の運転をして、帰宅した。
「疲れた」
かなりのスロー動作で、シャワーん浴びて短パンとTシャツに着替えてベッドに潜り込む。
「疲れた」
もう、その言葉が頭の中でいっぱいであった。
汗が出ないように、アイスノンを使う。
「疲れた」
まるで、呪文のように同じセリフを繰り返す。
 半年後ー
精神科の内服薬が効果を発揮して、発汗も少なくなり夜も眠れるようになった。
産婦人科では、変わらずホルモン剤の注射は続いていた。
「そろそろ、手術日を決めましょう」
産婦人科の主治医に言われ、一カ月後に手術が決まった。
それに伴い、手術中は全身麻酔で意識がないため、手術日は家族の付き添いが必要と言われる。
親は毒親であり、絶対に来てくれない。
連絡とれたとしても、金の無心をされるだけだ。
「友人ではだめですか?」
入院について説明をする看護師に聞いてみた。
「血縁関係でないとだめです。賠償問題になるので、病院として困ります。」
「そうですか・・・」
とぼとぼとしながら、病院を出る。
「あいつ、(弟)に頼むしかないかなぁ。」
風子の弟、みのるは結婚して妻子持ちだった。
昔は、無断で知人のバイクを無免許で乗って寝所で単独事故を起こしたり、みのるの給料に手をつけた親をぶっとばしたりする人間だったが、結婚して家庭を持ったことで、正確は穏やかになり、子煩悩になっていた。
元々、優しくてユニークな人間だった。
早速、みのるにメールを打ってみる。
「久しぶり!元気にやってるかな?突然で申し訳ないけど、お願いがある。」
みのるはタクシーの運転手をしている。
メールを送ったら時にはお客を乗せていなかったので、手が空いていたらしい。
10分くらいたって、返事がくる。
「久しぶりだなー頼みってなんだ?」
楓子は手術するため、手術の日に家族の付き添いが必要で御願いしたいと伝えた。
「ああ、大丈夫だ、その日は休みだからいけるよ。」
嬉しい返事だ来た。
「はぁー良かったー」
少し安心して、床にへたりこむ。
「さて、入院に必要なものを準備しないとね。」
大きめのボストンバッグを押し入れから引っ張り出し、バスタオル、着替え、箸とスプーンとフォーク、スリッパなど病院で渡された入金に必要なものを詰め込んでいく。
 入院後、みのるが見舞いにきた。
「明後日、手術なんだけど、みのる、12時30分にこれるよね?」
確認のために、聞いた。
「あーそれだけど、無理だわ。仕事休めないんだよね。」
「え?」
手術日が近いのに、約束をひるがえすみのる。
「休んだら給料減るじゃん!今、嫁が癌かもしれんくてさ、手術するのに20万くらいかかるらしいんだわ。そのお金出してくれたら、いってやるよ。」
「・・・」
そんな話はおかしい。
高額医療申請を申し込めば、10万円くらいでおさめてくれる筈。
それに、入院前に見かけたけど、顔色もよく元気そうだった。
しかし、背に腹は代えられない。
「わかったわ、ロビーのATMでお金おろしてくる。」
「ああ、わかった。」
下ろしてきた現金をみのるに渡す。
「よろしくね、さゆみちゃんの(嫁)治療もうまくいくことを祈ってる。」
「ああ、わかったよ」
急にニコニコして帰っていくみのる。
「嫁さんも働いてるのに、そんなにお金無いわけ?」
不思議に思いながらも、考えないようにする。
 手術当日ー
「おかしいなぁー今日の10時には来るっていっていたのに。」
手術前の準備や処置が、始まっていた。
みのるの携帯電話に電話する。
しばらく呼び出し音がなった後に、みのるが出た。
「はい。」
何故か、不機嫌そうだ。
「あ、みのる?約束の時間が過ぎてるんだけど、何かあったの?」
ーーもしかして、事故にあった?
ハラハラしながら、尋ねる。
しかし、みのるから返ってきた変事は耳を疑うことばだった。
「は?俺、仕事だもん、いけるわけないべ!!」
「ええっ!?」
目の前が真っ白になる。
「来てくれないと困るよ。先生もそのつもりで動いてるんだよ?」
おもわず、声が大きくなる。
「それに嫁が体調悪いっていうから、これから早退するんだわ。」
カッン!!
床に携帯電話を落とす風子。
ーーみのる、結婚して優しくなったと信じていたのに、私には優しくないんだ。
お金だって、出したのに。
なげいていても仕方がない、看護師に事情を話さないといけない。
看護師にはそのまま、みのるがいったこと話した。
主治医と話し合った結果、緊急時は産婦人科の医師の判断にゆだねるとこになった。
 6時間後、何の問題もなく、手術室から上質へ帰ってきた。
意識がもうろうとしている中、同室者の人が声をかけてきた。
「手術から帰ってくるのが遅いから、心配したよ、これ、温泉まんじゅう、食べてね」
「ありがとうございます」
風子が使っている冷蔵庫の上に、同室者が万町をおいていく。
ーー血の繋がった人間より、他人の方が優しくてひにくで涙が出た。
 翌日ー
朝食が出てきて、食べることができた。
汁物しかないが、凄くおいしく感じた。
チャラリン♪ 
メールの受信音がなる。
みのるの嫁のさゆみからだ。
「お姉さん、うちのダンナをあてにするのはやめてちょうだい!20万ぽっちで、ダンナをよばないで!」
ーー似た者夫婦なのかしらね?
みのるはよいこだったけど、所詮は、私もだけど毒親の血が流れているからねぇ。
冷静に考えられるようになった風子。
「結婚ってなんなのだろうか?」
ベッドのテーブルに頬杖をつき、考え込む。
 退院後、数ヶ月は体力作りを考え、毎日、陽を浴びるように1〜2時間の散歩をする。
うつ病には、散歩がいいそうだ。
精神科の受診はまだ行っていた。
主治医と診察で話すうち、
「こんな先生と働けたら、気が楽で良いだろうなぁ。」
と思うようなり、相談してみた。
「もう働いても大丈夫だと思います、募集しているかは僕にはわからないけど、まずは面接してからですね。」
「はい、わかりました。」
「今まで辛い思いをしてきたから、患者さんの気持ちがわかるひとが来てくれると僕は嬉しい」
主治医にお墨付きをもらい、自信をつけていく風子。
 後日ー
ハローワークにいくと、通院している精神科病院が募集していた。
応募したい旨を職員につげ、すぐに面接日がきまる。
病院の情報をもらい、車に乗りこむ。
「残業ほとんどなしって良いわー、やめた病院は残業ばかりで、残業代も1円ももらえないし、これで婚活がやりやすくなるわ~」
筋腫の手術が終わり、人生が順調に動いていると感じた。
今まで苦労した甲斐があったと思っていた。


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