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隣の鳥は青い34話

ーー小遣いもくれない、親として役に立たないならせめてここで役に立って欲しい。
「まっ、仮名でバレなきゃあ、良いよね。」
広告の裏に、自分の父親の章にそっくりな主人公を作り上げていく。
「山田太郎(仮名)、45歳、会社員、恐妻家。」
「育児放棄あり、子どもが大きくなったら、反撃される。」
ニヤニヤ笑いながら、キャラクターを作り上げていく。
この漫画のストーリーは理子自身も出てくる。
理子のキャラクターの名前は、莉里。
中学生になり、反抗期でコッソリと父親に復讐をする物語とした。
「実話にしよう。」
悪魔のような笑いをして、章に対してイタズラをすることを決めた理子。
「今まで私を散々苦しめてきたんだ!当然のむくいだ!因果応報だ!」
理子は章の歯磨き粉にねりわさびを練り込んでおく。
「明日の朝が楽しみだ」
 翌朝ー
「ぎゃー!!」
章の叫びが聞こえる。
「やったあ!」
パチン!と指をならし、大喜びの理子。
布団から出て、壁越しからこっそり章をみる。
章はむせながら、顔を真っ赤にして苦しんでいる。
ーークソオヤジ、ざまぁ、みろ!
手に握っていたルリビタキのキーホルダーを見る理子。
「お母さんもそう、おもうでしょ?」
実母の加津の形見のルリビタキのキーホルダーは、今も大事に身につけている。
「漫画のネタになるし、最高!今、神様は私の味方になったわ!」
面白すぎて、次の日イタズラを考えることにする。
 数日後
「なんか歯痛が良くなった気がする、母さん、歯磨き粉変えた?なんか、凄い辛かったんだよねー」
章がリビングの長い椅子に座り、沙知美に尋ねている。
「私は何にもしてないよ?」
「ふーん、そうか?まあ、いいわ。」
そんなやりとりを聞いて、ガッカリする理子。
「なんだよー結局、オヤジの役に立っちまったってこと?」
次なるイタズラを考えることにした。
その晩に、理子は胃薬をとかして章のご飯にまぜた。
「ふっ、これで吐いて苦しむが良い!にがい胃薬を入れてやったらからな!」
理子の考えはあさはかだった。
胃薬で吐く訳がないのだ。
しかし、焦っていた理子は気が付かなかった。
夕飯の際に、章の隣の席の理子は、チラチラと章をみていた。
ーーこれで、マンガのネタが出来る!
期待に胸を膨らませる理子。
すると章が冷蔵庫から、ニンニクの醤油はちみつ漬けと本場のキムチを出してきて、自分のご飯に大量にぶっかけた。
「え!?」
章の方から、強烈なニンニクの臭いか流れてくる。
理子の方が具合が悪くなった。
「う・・・」
たまらず、トイレに駆け込み嘔吐する理子。
いつも章と口どうしくっつけている瀬利名も、
鼻をつまんで逃げていく。
沙知美や奈々子はリビングで食べていて、被害なし。
剛は部活で帰宅が遅かった。
便器を抱え、泣き出す理子。
「漫画のネタにならないし、逆にこっちが酷い目にあっている。」
ーん?
あれ?
私、ギャグ漫画家をめざしてるんだよね?
父さんへの復讐じゃないよね?
あ、どっちもだっけ?
本来の目的がわからなくなる理子。
「とにかく、復讐はやめて、漫画のネタを考えよう。」
ーあ、この出来事をネタにすれば良い良いのか?
さっそく、食器洗いと、風呂掃除して、風呂に入り、こっそり卓に向かい漫画の下書きをした。
「これで、大賞間違いないわ!」
理子の頭の中は、札束を扇子のように使い、ハワイの海の画像と波の音が聞こえる。
子供の頃から、幸せになっている妄想を頭に思い浮かべるのは得意だった。
 それから一ヶ月間、毎日のように親の目を盗んでは漫画制作に打ち込んだ。
沙知美にみつかると、現行を破り捨てられるのは目に見えていたので、屋根裏部屋に隠した。
そうして、章へ度々イタズラをしつつ、それをネタにして漫画が完成し、編集部へ送る。
「発表は来月かぁー、デビューしたら、お金持ちだ!今まで苦労した分、取り返すぞ!!」
妄想だけは、ムクムクと大きくなる。
 そしてついに、マンガの評価の結果がきた。
理子にはもう漫画を買うお金すらなかったので、美久子から漫画を借りて結果をみる。
「はぁードキドキするうー」
美久子も身を乗り出して、結果をみる。
「有名になったら、サインちょうだいよ!」
なんて、ニヤニヤしている。
果たして、結果は!?










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