「目が覚めたら乃木坂4期生の○○でした」 第0話
「目が覚めたら乃木坂4期生の◯◯でした」 第0話
主人公:×× ××
男
2001年生まれの20歳
大学3年生
※主人公の名前はあえて××にしてあります。皆さん思い思いのお名前を補ってお楽しみください。読者の皆さんの妄想力に委ねます。
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××は絶望していた。
大学は学業とバイトに明け暮れサークルにも入らずにすごした。
結果、友達も一人も出来ぬまま、1、2年生を、通称青春できる2年間とやらを終え3年生になってしまった。
その3年になって始まった就活も思ったように行かず行き詰まっていた。
そして、学費や様々な経費の為にバイトをしていたが、今日もバイト先で怒られてきた帰りだった。
そんな彼にも唯一の趣味があった。
乃木坂46。
日本一と謳われるアイドルグループ。
彼女らの番組を見たり曲を聴いたりすることが一日を終えた彼の唯一の楽しみだった。
しかし、ここ最近はそれも楽しめない日々が続いていた。
初めはネットで見たあるコメントがきっかけだった。
「乃木坂ってどれだけ稼いでるんだろ」
そう、彼女らは雑用バイトをして月数万を稼ぐことはない。
やる仕事は違えどどのメンバーも最低月数十万以上は稼いでいるはずだ。
そして彼女らは就活をする事もない。
大学で新卒募集のサイトや広告、進路向けの本を見て頭を抱える事もないのだ。
特に今の乃木坂は××と同じ2001年生まれのメンバーがエース級として取り上げられていた。
先日乃木坂46には新メンバー5期生が入った。
最年少は小川彩。中学3年生15歳。
だが××の目には
「義務教育も終えていない5つも歳の離れた子が自分の何倍ものお金を稼いでいる」
と思うようになってしまった。
一度考え出したら止まらなかった。
乃木坂に留まらず、
最近話題だと特集されていた子役も。
ずっと大人のお姉さんがやると思っていた少年誌のグラビアアイドルも。
何かのコンテストで優勝し100万円を手にしたという少年も。
いつの間にか全員年下だった。
みんな自分の何倍も稼いでいた。
本屋に入ったりテレビを見たりスマホを見たり。
何か情報を吸収する度にそのことが頭をよぎり、彼の憂鬱を加速させていた。
自分は何で毎日お金にならない大学で頭を抱えているんだ。
彼女らは、彼らは、カメラの前で笑っている。
その瞬間にも報酬金銭が発生している。
一方で自分は夕方からバイトをして週数回、一日に数千円稼いでいる程度。
圧倒的な格差。劣等感。絶望感。
気がつけば情けなく涙を流していることもあった。
先ほど取り上げた中でも乃木坂はトップレベルに稼げるだろう。
もしかしたら自分の就職後の給料より多いかもしれない。
もしかしたら自分が出世して部長や課長になった時の給料より多いかもしれない。
そんな思考に思い至ったその日から、もう彼は乃木坂を以前のようには楽しめなくなっていた。
そして今日も…。
「こんな風になりたい」
何度目になるかわからないその独り言を画面に呟き、彼は眠りについた。
明日もまた、憂鬱な一日が始まる…。
第0話 終
続く
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