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「星は微かに光り」 第6話

バイオレットグランプリ予選。
突如始まったマラソン大会に何とか勝ち抜き、○○、そして井上和の2人が本戦へと駒を進めた。

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現在、大魔導世界スイーツ店。

和「まったく…酷い目に遭った!…あー…む。」

○○「いやだから…ごめんて…。」

桜「あーあ、落ちた落ちた。予選。アムッ…。」

咲月「仕方ないよ、モグ、1000人のうち12人だもん。モグ。むしろ知り合いが2人本戦にいる時点で奇跡だよ。モグモグ。」

〇〇「……。」

桜「モグモグ…。」

咲月「おいし。」

〇〇「何でお前らまでいるんだっ!!咲月!桜!」

桜「だってここのスイーツ店美味しいって評判だし。」

咲月「そこに〇〇くんの奢りで行くって和から聞いたから…。」

〇〇「待て。俺はお前らの分まで奢る気はないぞ?俺は…」

和「冨里くん?」

〇〇「はい…?」

和「奢ってあげてね?」

〇〇「くっ…。」

桜・咲月「ごちになりまーす!!」

〇〇「くそぉ…。」

和「フフッ♪おーいしっ。」



〇〇「てか、咲月と井上さんって繋がりあったの?こないだ保健室で俺を迎えた時が最初かと…。」

和「うん、幼馴染なんだ。2人でよく魔法の稽古したよね。私がさっちゃんに魔法教えたりさっちゃんが私に魔法教えたり。」

咲月「そーそー!私達は相思相愛のコンビなんだ〜!ね〜!和〜?」

そう言いながら咲月は和に頬擦りをし始める。

和「うわっ!やっかましい!ほおずりをっ…するなっ…!!」

咲月「和、私のこと嫌い?」

和「なっ…別にそういうわけじゃ…。」

咲月「えへへ〜。」

〇〇「なるほど、こりゃ相思相愛だ。」

和「どこが!!」

桜「待って、学年一の実力の和ちゃんと稽古になる程対等に戦えるって、菅原さんってそんなに強いの?」

咲月「咲月でいいよ、桜ちゃん。うーん、そんなに強くないよ?四天王のランキングにも入ってないし今回も予選落ちしてるし。」

和「四天王のランキングは魔力量とか単純なパワーが問われるから。予選落ちはさっきも話したけど1000人中12人だから落ちてもおかしくない。さっちゃんの強みはね、戦術のバリエーションとかそのトリッキーぶりにあるの。一応ランクもクラスAなんだよ?」

桜「へぇ〜。」

〇〇「普段の振る舞いからは想像がつかないな。」

咲月「〇〇くんちょっと傷つく、それ…。」

〇〇「え、あ、ほら!親しみやすいって意味だよ!」

咲月「絶対違うぅ…。」


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桜「2人はさ、ここまで来たら優勝狙うんでしょ?」

〇〇「もちろん。」

和「そりゃね。」

桜「次の本戦はどんな風になってるのか聞いた?」

〇〇「そういやまだ聞いてないな…。」

咲月「でも日程的には本戦開始は明日でしょ?まだ何の発表も…」

咲月がそういった瞬間、突如目の前、テーブルの上にモニターが出現する。

清宮『Hello~!!みなさ~~ん!!』

○○「うわっ!?」

清宮『突然ですが!ここで明日から始まるバイオレットグランプリ本戦の内容を発表します!!』

○○「これも魔法なのか…。ハイテクな科学に見えるけどな…。」

目の前にあるモニターは学内のあらゆるところにいくつも同時展開されており、皆がそのうちいずれかに注目している。

そして、○○がそのモニターに触れようとすると、ブゥンという音とともにすり抜けてしまった。まるでホログラムのようだ。

清宮『それでは白石校長!お願いします!』

すると、カメラが横にずれ清宮がフェードアウトする。そして代わりに麻衣が写る。

麻衣『はい。それでは発表します。』

麻衣『バイオレットグランプリ、次の種目は、単純な「魔法対戦」です!』

麻衣『本戦に進んだ12人を1対1の対戦に振り分け、勝ち残った合計6人が、決勝戦へ出場します。言ってしまうと、決勝戦はその6人でバトルロワイヤル形式で対戦してもらいます。』

麻衣『そして!その対戦の組み分けは!こちらです!』

緊張の組み分け発表。

ここでクラスSである山下美月や久保史緒里とぶつかれば、かなり厳しい戦いが待っている…。

〇〇「…。」

桜「えっと…〇〇と和は…っと…。」

咲月「いた!よかった、2人ぶつかってないよ!戦うとしたら決勝だね!」

和「え、どれどれ?えっと、私の対戦相手は…『切崎舞』?誰?」

〇〇「俺の対戦相手は…『跳山飛吉はねやまとびきち』…。」

咲月「2人とも!頑張ってね!」

〇〇「うん。頑張るよ。」

和「決勝で会おうね。冨里くん。」

〇〇「そのためにはこの戦い、お互い負けないようにしないとね?」

和「愚問。」

2人はクスッと笑い合った。

桜「なんか、またライバルが増えた気がする…。」

咲月「私も…。」

和「…何の?」

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翌日。バイオレット魔法学園内、闘技場。

レイ「さぁ始まりました!バイオレットグランプリ本戦!第一試合!冨里〇〇選手、versus!跳山飛吉選手!」

闘技場の真ん中には、○○と男子生徒の姿。

〇〇「ふぅ…。」

跳山「へへ…。」

観客席には、和、咲月、桜、奈央の姿。

奈央「お兄ちゃ〜ん!頑張れ〜!」

桜「〇〇〜!ファイト〜!」

レイ「ではでは〜!空間魔法展開!」

レイがそう宣言すると、闘技場全体が光りだし、やがて観客からは〇〇たちが、〇〇たちからは観客が見えなくなった。

そして辺りが眩しい光に包まれる。

〇〇「うっ…。」

次に〇〇が目を開けると、そこは…。

〇〇「なんじゃこりゃ…。瞬間移動?」

辺りは一面の岩石地帯になっていた。

レイ「空間魔法によって仮初めのフィールドを形成させてあります!とはいえ質感などは本物さながら!あ、ある程度までいけば透明な壁がありますので、ご心配なく〜!」

〇〇「ほぇ〜…。」


レイ「それでは!」


レイ「Ready〜⁉︎fight‼︎」

ピーッ!!というホイッスルの音と共に戦いの幕が上がった。

〇〇「《武装・紅身》!!」

〇〇は赤い鎧、紅身を纏った。

〇〇「先手必勝!」

〇〇がそのまま跳山の元へと走り出す。

その時だった。

跳山が体勢を低く構えると、足がゴムのように収縮した。

〇〇「なんだあれ…!?」

跳山「《ジェットミサイル》。」

跳山がそう宣言すると、収縮していた跳山の足が今度は膨張した。

その様子は、まるでバネの動きによく似ていた。

そして跳山はとてつもない速さで前方に跳躍し、〇〇の元へ突撃した。

そしてそのまま〇〇の腹に跳山の拳がめり込む。

〇〇「うぐっ…!?」

すると、めり込んだ跳山の拳と腕がまた収縮を始める。

〇〇「なっ…!まさか…!」

跳山「今度はお前が吹っ飛べ。」

そしてまた、拳と腕はビヨン!と勢いよく膨張する。

その膨張の勢いはそのまま〇〇に移る。〇〇はかなりの速度で吹っ飛び、岩石の壁に衝突した。

〇〇「うぐあっ!!!」

跳山「俺の魔法は《バネ》。手や足をバネのように縮め、スピードやパワーをつけたり、色んな技が使えるのさ。」

〇〇「なるほど、予選はその能力で勝ち抜いたわけか…。」

跳山「そ。バネを利用した超スピードで山の中を木から木へ。他の奴らの妨害にも遭うことなくなんなく突破ってわけだ。」

〇〇はガラガラと音を立てる岩石の壁に持たれながら体勢を立て直す。

〇〇(紅身の鎧が無かったらヤバかったな…。)

跳山「今度はこっちから行くぞ!」

跳山がそう宣言すると、彼の脚がビヨーンという音と共に伸び、10メートルほど離れてるにもかかわらず、〇〇に蹴りを繰り出してきた。

〇〇「うわっ!?」

続いて拳がまたビヨーンと伸びてくる。

〇〇「おっと…!」

〇〇が跳山の方を見ると、彼の手足がバネそのものに変化している。

〇〇「何でもありかよ…!」

跳山「ほらほらどんどん行くぞ!」

〇〇「くっそ!跳躍だったら俺だって負けてないぞ!」

〇〇「《武装!蒼杖!》

〇〇の鎧が青く変化し、手には棒状の武器が握られる。

〇〇「はっ!」

○○は高く跳びあがる。

しかし。

跳山「ふっ、低いな。はっ!」

跳山は足のばねをギチギチと鳴らすと、勢いよく飛びあがり、あっと言う間に○○より高く跳躍した。

○○「何!?」

跳山「ハハハっ!空中という逃げ場のない場所に来たのが間違いだったな!あーらよっとぉっ!!」

跳山は空中で足を高く振り上げると、その足を○○に振り下ろした。

かかと落としである。

○○「ぐっはっ!?」

○○は高い空中から降っていくように落下し、地面にたたきつけられた。

○○「はぁ…はぁ…。厄介だな、たかだかバネなのに…。」

○○が棒状の武器を構えると、着地した跳山が走って向かってくる。

○○は武器を横なぎに振るうと、跳山は下に頭を下げてそれを避ける。

そして、またギチギチというバネの音。

○○が見ると、跳山の首がバネに変わっていた。

跳山「《びっくり箱》。」

跳山は○○の下からバネを利用した頭突きを○○に繰り出した。

○○は顎からもろにそれを食らい、勢いそのままに後ろにのけ反り後ずさる。

○○「ぐっ…。」

〇〇が顔を上げて正面を向き直した時、もう跳山はそこにはいなかった。

跳山は目で追えない速さで岩や壁を跳躍で飛び回っていた。

跳山「そろそろトドメと行こうか!このまま加速しまくった勢いでお前に突っ込んでやる!」

〇〇「ハァ…ハァ…。」

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観客席では、和達が心配そうにモニターを見つめ、奈央は手を合わせて祈っていた。

和「冨里くん、負けちゃうの…?」

咲月「〇〇くん…!」

奈央「お兄ちゃん…!」

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跳山「これで終わりだ!《ロケットミサイル》!!」

ビュンビュンと飛び回る跳山が技名を宣言する。

〇〇「《武装》!!」

跳山「!?」

突っ込もうとした跳山は方向転換し、一度〇〇への攻撃を中止する。

〇〇の青い鎧は光の粒子となって離散し、またその光が〇〇の体に集合する。

そして光が晴れると、〇〇は緑色に光る鎧を纏い、手には弓矢を装備していた。

〇〇「《緑弓》!!」


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咲月「また新しい鎧…!」

桜「そうだよ、〇〇が持っている四つの鎧、紅身、蒼杖、紫剣と並ぶ、最後の一つ。それがあの緑弓…!」

和「でも何でこの状況で弓矢なんか…。あんな高速で飛び回るのが相手じゃ相性が…。」

桜「それは…見てればわかるよ。」

奈央「桜ちゃん…。」

桜「私は、〇〇が必ず勝つと信じてる!」

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跳山「ハッハッハッ!全く、何をしてくるかとビビってみれば!そんなものか!それが奥の手だっていうのかぁ?冨里〇〇!」

〇〇「…。」

〇〇は弓矢を強く引き、構える。

矢の先には緑色の魔力が溜まっていく。

跳山「よく狙って当てるんだな!当てられたらの話だがなぁ!」

〇〇「…!」

〇〇は深呼吸をし、感覚を研ぎ澄ます。

目に見える全ての光景。

耳に聞こえる全ての音。

肌を伝う空気の流れ。

それらが〇〇の中に情報として入ってくる。

全て、感じる。

〇〇「…!!…そこだぁっ!!《碧天の!破魔矢》!!」

〇〇は矢を放った。

放たれた矢が直進して向かった先には、ちょうどそのタイミングで跳山がその位置に飛んできていた。

跳山「何っ!?嘘だろ!?」

魔力を帯びた矢は跳山に命中した。

跳山「ぐあぁぁぁあっ!!」

跳山は撃ち落とされ、着地した時には気絶をしていた。

レイ「決着!!勝ったのは冨里〇〇選手っ!!」

ワアアアアア!!!

学園中から歓声が上がった。

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咲月「か、勝った!〇〇くんが勝った!」

奈央「やったぁ!!お兄ちゃーん!」

和「ふぅ…。ヒヤヒヤさせるなぁ、もう…。」

桜「〇〇…!」

モニターには、満身創痍になりながら満足そうに微笑んで立つ、〇〇の姿が映っていた。


桜「次は和の番だね!」

和「うん!頑張ってくる!」

和(切崎舞…。一体どんな魔法を…?)



「星は微かに光り」 

第6話 終

続く



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