目が落ちた_完結
左目が無くなって判った事はシンプルだ。
右目がある。
アンケート用紙の欄にはもちろんいいえに丸をつけた。
果たして死んだことのある人とは何なのだろうか。臨死体験ということだろうか。
この世には面白い体験をした人がたくさんいるが、私はまだ臨死体験した事のある人には会った事がない。
まあ、目を落とした人の事は聞いた事さえないからどっこいどっこいと言うところか。
審査他室に入り事情を話すと先生から100万人に1人位は時々目が落ちる人が居るとの事だ。
その計算はどうやって出したのか聞きたかったが、口下手な私はそうですかとしか言えなかった。
目はすぐに戻るらしいが2週間は包帯を毎日変える必要があるそうだ。
死んだ事があるか無いかの欄についても、聞く事はなかった。
先生の気まぐれなのだろう。治療費は23,000円。自分には全く罪の無い出来事にしてはなかなかの金額である。眼球が私に戻ってくれたので、それを考えると勿論とても安く感じられる。
2週間後左目が完治してやっと日常生活に戻る事ができた。
その時、恐怖の足音が近づいてきた。
右目が落ちたのだ。
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