40歳でEVOに行くという事(4)

こうして何とか目標は達成できたのですが、これらの取り組みを通して考えたのが、きちんと仕事や家庭をもちながら、e-sportsを趣味の一つとして一切の引け目を感じることなく昇華させることです。職場でゴルフを趣味として公言する人は珍しくないと思いますが、e-sportsが趣味です、と公言している人を見たことが無かったので、それならば自分がなってやろう、と思うようになりました。とはいえまだまだゲームに対する偏見は大きく、厳しい目が向けられることも珍しくありません。ハースストーンというゲームの日本チャンピオンが、職場の理解がなかなか得られず、世界大会の出場に大変苦労したという話を知り、この問題の根深さを改めて知らされました。

自分がe-sportsにアマチュアとして真剣に取り組んでいる事に自発的にアピールする事も、小さなことですが今後日本のe-sportsの発展に意義があることだとも感じるようになりました。そこで、あえて職場では「e-sportsの世界大会に出ます。その為に今業務に支障のない範囲で、必死に練習しています」と要所要所で説明することにしました。それが許容されるには、当たり前の事ですが、職場で信頼されている事が本当に重要だと思います。ゴルフが趣味という人も、職場でいい加減なようではただのゴルフおじさんとしてしか認識されません。

e-sportsに真剣に取り組んでいることを認めてもらうにも、仕事面はきっちりやろう、という思いがより強くなりました。自分にスキルがあれば、万が一e-sportsに対して偏見の強い人が現れて、会社の中での立場が危うくなるような事があったとしても、おのずと転職の道も拓けますし、何より引き止めたり擁護してくれる味方も多くなると思うのです。

また、良くプロ野球の選手は入団直後に「野球馬鹿になるな」と教育されると言われますが、我々e-sportsに取り組む人々にとっても当てはまる事だと思います。一見華やかなプロ野球の世界の選手ですら、セカンドキャリアは大変で、そのまま野球に従事できる幸せな人はごく一部の限られた方だけです。野球で良い成績を収めて活躍さえしていれば、引退後も幸せかと言うと必ずしもそうではなく、才能や能力の高さゆえに、目標を見失って自殺してしまった人や、道を誤ってしまう人もいます。セカンドキャリアの、例えば解説者や指導者として成功するには、現役時代から「野球を通して自分が世の中にどう関わるか」を考え抜いた人に限られてくるのです。

最近ではプロゲーマー養成の為の専門学校も出てきて話題になったりもしています。この事自体は良い取り組みでもあると思いますが、そこで「単にゲームが強く上手くなればプロになって生きていける」とだけ考えてしまうと、非常に危うい事態を引き起こしかねないでしょう。e-sportsの認知度を上げていく上でも「ゲーム馬鹿」にならない事は本当に重要な事でしょうし、ゲームと言う娯楽ゆえに「ゲーム馬鹿」になりやすい側面がある事も、既に多くの方がご存知の事かと思います。e-sportsを健全なものとして認知される世の中にしていくには、他責として偏見を持つ人を正すより先に、自分達プレイヤー側にも自責としてある一定の努力が求められてくるのではないかと思います。

自分の心境としてはエンジョイ勢の記念参加という気持ちではないですし、ガチ勢が頂点を目指す戦いでもなく、自分との戦いだと考えています。自分のようなスタンスでEVOに向かっているプレイヤーがいることを知っていただけたら、応援いただけたら、これ以上に嬉しいことはありません。

今回はゲーマーのキャリアパスとして、プロゲーマーでなくとも、目立つような実力を持っていなくとも、一つのモデルケースになれる事を願い、今回のEVOに臨みたいと思います。

今後のe-sportsの国内発展を願ってやみません。

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