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読書感想『#塚森裕太がログアウトしたら』を読んで変わることを許した。

気がつけば世間の常識は変わっている。
それがきっと正しいと頭では分かっていても、心がそれを許してくれない。

世間に自分をうまくチューニングしなければいけない。正しい音が出なければ自分は弾かれるから。

「自分はこう見られているからこう振る舞わなきゃな」「この思想については肯定的でいなきゃな」

そうして、偽りの姿を身にまとった自分が作り上げられている。

『#塚森裕太がログアウトしたら』はInstagramで同性愛者であることをカミングアウトした当事者塚森裕太と、彼の周りを取り巻く4人の物語だ。

例えばバスケ部の1年の武井。彼は今までバスケの神様として崇めてきた塚森が同性愛者であることを受け入れられないでいた。

しかし彼と同じ1年やバスケ部のメンバーは認めている。けれど自分は認められない。
認められないことはおかしいのだろうか。

周りが異性愛者である中で、少数派である同性愛者と同じように周りが同性愛者を認めている中の、認められない武井。

彼もまた周囲とは違う自分を受け入れられない、塚森と同じ境遇に立たされるのだ。

これは単にセンシティブな物語ではなく、自分で自分の感情を認められないでいる人間たちの極めて内省的な物語である。

この本を読み終わった今、時代錯誤だと揶揄される人を見て、素直に考えをアップデートしろなどと簡単に口にできない自分がいる。

例えば人を殺すことが正しいとされていた時代、急にそれは正しくないと世間が言い出した時、頭で分かっていても心は受け止められたのだろうか。

例えば、長時間働くことが正しいとされていた時代、急に長時間働くことは無駄だと世間が言い出した時、心は受け止められるだろうか。

常に物事が移り変わっていく時代、変わることを僕の心は簡単に許してくれるだろうか。
偽りの自分を作り上げてはいないだろうか。
そんな事を自分の心に問いかけた。


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