どうして、国立大学で’共創コーチング’の授業が生まれたのか
2008年11月26日に日経新聞に掲載されました。
大学の正式な授業としては全国初になったコーチング授業を、2008年11月から受け持つことになりました。
ことの経緯は、
当時、大学では、FD(ファカルティ・ディベロップメント Faculty Development)と言って、大学教員の教育的な資質向上を求められており、各大学それぞれ授業評価システムを導入して、学生に授業の評価をしてもらうなど、それぞれ独自の取り組みを行っていたと聞いています。
特に宇都宮大学では、大学院工学研究科のワーキンググループの皆さんの発案で私を呼んでいただくことになりました。
そのワーキンググループの話し合いでは、
「結局、私たちは学生にどうなってもらいたいのか?」
という問いから議論されたそうです。
その結果
・学習意欲や学習目的の希薄な学生「指示待ち」の学生が少なくない。
・学生のモティベーションを向上させ、自ら学び続ける学生を育てたい
・コーチングという人材育成の手法が「成長への意欲をもつ社員」を育てるという目的で、現在多くの企業のマネジメントに取り入れられていると聞く。
と言った話し合いから、まずは講演でコーチングというものが教育現場でどのように役立つのかを知りたいという要望から、教育現場を知っていてコーチングについて話せる人ということで、私に依頼が来ました。
2008年5月に全教職員向けの講演を『「コーチング」=モティベーションを引き出す指導法』という演題で行いました。
当時は、大学の先生方に講演するのは初めてでしたので、うまく掴みきれずに終わった感じがしていました。講演が終わると人だかりができて、質問攻めに会いました。またコーチングについてすでに知っている方からもいろいろなことを教わったりして、皆さんに圧倒されて終わった感じでした。
そして、まさに講演が終わったその後に、学部長室に呼ばれ、ぜひ学生に授業をしてもらいたいというお話をいただき、学生向けのコーチングの授業について宇都宮大学大学院工学研究科のワーキンググループと共同で授業を作っていくことになりました。
日本のものづくりキーワード「共創」
ニーズに合わせて私が提案し、修正なども行いながらトントン拍子に事は進んでいきました。
私は三重県にいて、皆さんは宇都宮にいるのでメールでのやりとりでしたが、皆さん、理解が早くスピーディで、人間的にオープンで、共感マインドをお持ちな方々でした。
本当に人格的にも素晴らしい方々とご一緒できて、あっという間に出来上がった授業が、
「共創コーチング特論」
と名付けられました。
「共創」とは、モノづくりの分野から1990年代に生まれた言葉だそうです。
「共創」とは、共に創るということ。
自分の力だけでも、相手の力だけでもなく、自分と他人の力を最大限に合わせて新たなものや価値、視点を創り出すという比較的新しい概念です。
(宇都宮大学大学院工学研究科 共創コーチング特論 テキストより)
主な内容は
・自分自身をうまくマネジメントする「セルフコーチング」
・相手の力をうまく引き出す対話的コミュニケーション「コーチングコミュニケーション」
・日常生活でコーチングを活用していく「コーチングの活用」(主に自己理解)
という3本の柱を中心に授業を行うことになりました。
目指すビジョンは、大学生達が大学を卒業してから働く現場で、自分自身で考えて、仲間と共に新しいものを生み出していく共創的な関わりができるようにと思いを込めて作られました。
2020年まで毎年続いているということで、まさに現場の方々との「共創」で、未来に続く大きな価値を生み出した瞬間でした。
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